難関として知られる社会保険労務士。その資格の取得を検討するにあたって、どのくらいの年収が期待できるかは気になるところですよね。特に、働きながら資格を取得する場合は、今の仕事と比べてどうなのかも気になるところ。今回は、社会保険労務士の平均年収の目安と年収を上げるコツについて解説していきます。
まずは、社労士の年収の実態がどうなのか確認していきましょう。
厚生労働省では、賃金構造の実態を詳細に把握するため、昭和23年から毎年「賃金構造基本統計調査」を行っています。
この調査は、統計法に基づく「賃金構造基本統計」の作成を目的とする統計調査であり、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにするものである。引用:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 調査の目的
これは、国勢調査のように国民一斉に行うわけではなく、サンプル調査です。
その年6か月分の賃金等(賞与、期末手当等特別給与額については調査前年1年間)について同年7月に調査を行います。
賃金構造基本統計調査は「雇用されている方」を対象にした調査です。
個人事業主として営業している社会保険労務士の方のデータは含まれていません。
また、年度によって調査対象となった社会保険労務士の人数も異なり、フルタイムかパートタイムかの区別もありません。
あくまで社会保険労務士の平均年収の目安を図るものですが、こうやって属性別に細かく見ていくことで、いろいろな分析が可能です。
出典:令和元年賃金構造基本統計調査 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
まずは全体の統計を見てみましょう。社会保険労務士で今回の調査対象だったのは全国で600名です。
・平均年齢:44.7歳
・勤続年数:13.4年
・月収(残業代込):33.5万円
・年間賞与や特別賞与:84.1万円
つまり、33.5万円×12か月=402万円
ここに賞与の84.1万円を足して 約486万円が平均年収となります。
出典:令和元年賃金構造基本統計調査 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
ではもう少し分解して男女・年齢別での分布を見てみましょう。
今回の調査では20代の方はいませんでした。男女ともに一番多いのは40代前半です。
・平均年齢:43.8歳
・勤続年数:12.0年
・月収(残業代込):36.2万円
・年間賞与や特別賞与:81万円
つまり、36.2万円×12か月=434万円
ここに賞与の81万円を足して 約515万円が平均年収となります。
男性の平均月収(決まって支給する現金給与額)の欄を見ると年功序列で上がるわけではないということが見て取れます。特に30代の調査対象の男性は、他の年代に比べて時間外勤務が多いようです。
これは勤務先によって給与が大きく異なることを示しているのではないでしょうか。
男性は勤務していたら一番年収の高そうなゾーンである50代が統計に入っていませんでした。60代の年収の高さを見ると、50代が統計に入ることで平均が一気に引き上がりそうです。
・平均年齢:46.3歳
・勤続年数:15.9年
・月収(残業代込):28.6.万円
・年間賞与や特別賞与:91万円
つまり、28.6万円×12か月=342万円
ここに賞与の91万円を足して 約433万円が平均年収となります。
女性の場合も「年齢によって右肩上がり」というわけではなさそうです。
これは勤務先の違いということに加え、女性の場合はパート勤務なども入っているせいかと思われます。
ここでは士業・管理部門に特化した転職サイト『最速転職HUPRO(ヒュープロ)』掲載の実際の求人内容を参考に、社会保険労務士の年収や待遇の例をご紹介します。
社会保険労務士法人のスタッフとして、社労士業務全般をこなす仕事です。
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社会保険労務士の働き方は、大きく分けて下記の2つです。
・雇用される方法
・独立開業する方法
雇用される方法とは、一般企業や社会保険労務士事務所などに従業員として雇用されて働く形態です。
社会保険労務士の資格を活用して、主に人事や労務管理などを行います。
人事や労務管理には必ずしも資格は必須ではないため、社会保険労務士の資格がなくても人事や労務管理の仕事を担当することは可能です。
しかし、企業によっては社会保険労務士の資格があれば月に1〜3万円程度の資格手当が上乗せされる場合もあります。
雇用されながら年収を上げるには、
・勤続年数を長くして昇給する
・より待遇のいい企業に転職する
の2つの方法があります。
社会保険労務士は国家資格です。企業に勤めるだけでなく、独立開業して事務所を経営することもできます。個人事業主として経営するほか、規模が大きくなれば社労士法人として法人化する方法もあります。
独立開業が成功すれば、勤務していたときよりも年収を上げることも可能です。
一方、開業が必ずしもうまくいくとは限らないリスクもあります。経験やコネクションなどを蓄積し、タイミングを図って独立するのが一般的です。
最後に「特定社会保険労務士」についてご紹介します。
特定社会保険労務士と聞くと、社会保険労務士の上級資格のように聞こえますが、そうではありません。
特定社会保険労務士はに労働にかかわるトラブルが発生したときに「ADR(紛争解決手続代理業務)」を行うことができる社労士のことです。
例えば、一般企業における解雇やパワハラ・セクハラといった問題について、裁判まで行うと、企業側はともかくとして訴える方も消耗してしまいます。
ADRとは、このような紛争について、当事者双方の話し合いに基づき、あっせんや調停、あるいは仲裁などの手続きによって、なるべく裁判をせずに紛争の解決を図るものです。
特定社労士になるためには、社労士試験に加えて、さらに研修と試験が必要となります。
特定社労士は、平成27年ですでに11,381名おり、労務関係のADRの件数は年間200件程度です。そのため、特定社労士になったとしてもすぐさま年収アップには直結しません。
しかし、紛争解決に当たる法律家的な業務というのは、年収以上にやりがいがある業務として、多くの社労士の方がこの資格を受験しています。
社会保険労務士の年収は平均で400~500万円程度。
社会保険労務士として働くには、企業などに勤める方法と独立開業する方法があります。雇用されながら年収を上げるには、勤続年数を増やすか待遇の良い職場に転職するのが良いでしょう。
独立開業に成功すると大きく年収が上がる可能性がありますが、経験や顧客との信頼関係を十分に蓄積してから独立にチャレンジするのがおすすめです。
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