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移転価格コンサルタントの仕事は将来性があってやりがいもある!

HUPRO 編集部
移転価格コンサルタントの仕事は将来性があってやりがいもある!

企業のグローバル化が進み、海外に現地法人を設立する会社も多くなり、その際によく問題になるのが移転価格税制の税務です。移転価格コンサルタントは、その様な移転価格税制を企業に対してコンサルティングするのが仕事です。そこで、そもそも移転価格税制とは何か、移転価格コンサルタントの仕事内容などを解説します。

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移転価格税制の税務

日本においては、1986年に租税特別措置法第66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)で移転価格税制が導入されました。そもそも移転価格とは、企業グループ内の取引価格を言います。

例えば、日本国内で鞄の製造工場を持っているA社があるとします。A社はメイドインジャパンの鞄という事を全面にアピールをし、中国にその鞄を販売する現地法人B社を設立しました。すなわちB社はA社の子会社という事になります。取引の流れとしては、日本のA社が製造した鞄をB社に販売を行い、B社はA社から仕入れた鞄を中国国内で販売をします。その際のA社のB社への販売価格を移転価格と言います。この際に問題になるのがその販売価格の妥当性です。例えば、鞄の中国の販売価格を200円と仮定し、A社はB社に80円で販売した場合に、A社は80円の儲けでB社の儲けは200円-80円の120円の利益なり、グループ全体で200円の儲けになります。(便宜上原価0の計算です)
その一方で資本関係のない中国の他の販売会社には一律でその鞄を100円で販売していたとすると、日本のA社はB社に販売するときだけ通常より20円損をしている事になり、中国のB社は逆に20円得をしている事になります。

利益と損失をプラスマイナスすれば一緒ですが、最大の問題点は利益に対してA社には日本の税金がかかるのに対し、B社には中国の税金がかかるという事です。すなわち今回の場合では、A社がB社に販売する分だけ、日本は20円分の利益に対する税収が少なっている事になります。そこで、課税の公平の見地から海外へ販売する際には、適正な移転価格を設定しましょうというのが移転価格税制です。

関連記事:移転価格税制とは?国税庁の取組みもあわせて解説!

移転価格コンサルタントの仕事内容

移転価格コンサルタントの仕事内容は、各国の移転価格税制に則り、現在だけではなく将来にわたっても、クライアントのリスクの軽減とコスト削減を図れるように適正な移転価格の金額の設定をアドバイスするのが仕事です。

そして、適正な金額の設定をする上で欠かせないのがクライアントの業務についての理解です。クライアントの業務の理解無しでは適正な価格の設定は行えません。その為にクライアントの経理部門だけでなく製造部門などの事業部門にもヒアリングを行う必要があります。
そのヒアリングの内容に基づいて、分析対象とする企業を数社選定します(上記の例で言うと日本国内の鞄メーカー)。この数社と同じ様な利益率であれば、今回のグループ内取引は適正であると判断します。

しかしながら、答えのない話なので、その妥当性については当局と企業の見解が別れるため、税務調査は1年~2年と長期に実施される事も多々あります。そのため、1件の仕事が数年にわたって関わる事も珍しくありません。また、2016年(平成28年度)の税制改正で移転価格制度に係る文書化制度が整備されました。これによりグループ企業内の合計の収入が1,000億円を超える企業には、①国別報告事項②マスターファイル③ローカルファイルの3つの移転価格文書の提出が義務化されました。

そのうち③ローカルファイルだけは、海外子会社等との取引金額が50億円以上の場合には確定申告書の提出期限までに作成する義務があり、税務調査の際に求めがあった場合には提出する必要があります。しかしながら、取引金額が50億円未満の会社の場合でも税務調査の際に税務調査官が必要と認められれば提出する義務があります。このローカルファイルの内容は大きく分けると「海外子会社との取引の内容を記載した書類」と「海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」に分類され、移転価格コンサルタントはこの様な書類の作成のお手伝いをします。
更には、移転価格コンサルティングは、相手国の移転価格税制を知る必要があり、英語で電話する事も多々あるので英語力は欠かせません。

移転価格コンサルタントの将来性

AI(人口知能)の進歩に伴い記帳代行や税務申告代行がメインとなっている税理士事務所の仕事は少なっていくと言われています。今後の税務関係のクライアントからのニーズは企業の会計・税務の代行業務から企業の相談相手となり一緒になって問題を解決していく事にシフトすることは間違いないでしょう。

その様な中で企業のグローバル化が進み、更には人口減少で市場縮小が懸念される日本においては、大企業だけではなく中小企業も海外に現地法人の設立が盛んになっています。すなわち日本国内の企業でも海外取引が増え、移転価格税制の税務の問題に直面する企業が増加していく事が予想され、今後は更に移転価格コンサルタントの活躍の場は広がる事は間違いないと言えます。

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