税理士になるためには様々な方法がありますが、どれも時間と労力がかかるものになります。税理士を目指すためには、きちんと資格制度を理解し、計画を立てる必要があるでしょう。独立開業ができ、生涯仕事ができるため人気の資格の一つである税理士について、資格取得までに必要な試験やその道のりについてご紹介します。
税理士は税務・会計のプロフェッショナルであり、税務申告書の作成から申告の実務、経理代行や企業経営のコンサルティングなどの業務を担当する国家資格者です。税理士法上で定義されている業務としては、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の三つがあります。これらの税務業務については税理士有資格者の独占業務で、日本の税制が存在する限り全ての個人事業主や法人に必要なものであるため、資格の価値が高いとされています。
税理士資格の取得方法として、最も有名なのは税理士試験ですが、実は次のように税理士資格を取得する道のりは税理士試験受験だけではありません。
・税理士試験に合格した人
・税理士試験を免除された人:特定の学位取得者や国税従事者に免除が認められています
・弁護士資格や公認会計士資格を取得した人
また、試験や試験免除制度で税理士資格を取得するには、租税や会計に関する事務の実務経験が2年以上必要となります。
税理士試験には、特定の学位取得者や国税従事者に免除制度が設けられています。
学位による免除
いわゆる「大学院免除制度」として税理士受験生には有名かと思います。大学院を卒業し税法や会計学に関する修士号を取得することで対応する科目の2科目が免除される他に、博士号でも免除制度がございます。
国税従事者への免除
税務署勤務等の国税従事者にも免除制度が適応されます。10~15年の勤務で税法の科目免除が、23年以上の勤務で会計学の科目免除の権利を得ることができます。
意外と知られていませんが、税理士試験にはそもそもの受験資格が存在します。
資格・学歴・職歴の3つの要件のうちひとつを満たす必要があり、それをクリアした人のみに税理士試験の受験資格が与えられます。
各要件は次の通りです。
資格による受験資格
・日商簿記検定1級合格
・全経簿記検定上級合格
学歴による受験資格
・大学もしくは短大を卒業しており、法律学もしくは経済学を1科目以上履修した方
・大学3年以上で、法律学もしくは経済学を1科目以上含み62単位以上を取得した方等
職歴による受験資格
・法人または事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した方
・銀行、信託会社、保険会社などにおいて、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事した方
・税理士、弁護士、公認会計士などの業務の補助事務に2年以上従事した方など
試験科目は会計学に関する簿記論・財務諸表論の2科目と税法に関する科目(所得税法又は法人税法のいずれか1科目)は必修になります。他に、選択肢なかった税法科目を含め、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税のうち2科目の計5科目に合格することが必要です。
税理士試験は科目合格生のため、受験者は1科目ずつ受験することが可能で、合格科目については一生涯有効のため、働きながら受験しやすく、就職以後に取得される資格の代表例になっています。
合格は各科目60点以上となっています。例年受験者の5~20%程度が合格しています。税法科目は特に合格率が低くなる傾向にあり実務での使用シーンも限られるため、近年は大学院による試験免除制度を利用し資格取得をする方も増えてきています。
合格・資格取得までの道のりとして、特に就職以後に受験される方は働きながら1~2科目ずつ受験される方が多く、パートや派遣・正社員でも勉強と両立しやすい環境で働き夜は専門予備校に通う方が多いです。試験や免除制度で資格取得をする場合、実務経験も必要なため、勉強と両立しやすい税理士事務所・会計事務所で働きながら資格取得をする方が最も多く、近年は人材獲得の激化から勉強と両立しやすい環境を整備している税理士事務所が増えてきています。
関連記事:税理士試験の概要について詳しく解説!受験資格や科目合格制など受験生必見
税理士試験に合格した後は、税理士登録をします。これで晴れて税理士資格を取得することになるのですが、税理士登録には税理士試験に合格するだけでは不十分なのです。税理士登録をするためには、租税または会計に関する事務の「2年以上の実務経験」が必要になります。「実務経験」の具体的な内容は、以下のようになります。
①簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務
②仕訳帳等から各勘定への転記事務
③元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
④決算手続に関する事務
⑤財務諸表の作成に関する事務
⑥帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検する事務
これらのような実務を2年以上行うことが必要となります。これらの実務を行っていた期間が税理士試験を受験をする前であっても、実務経験にカウントすることができます。
また、自分の実務経験を証明するためには「在職証明書」が必要になります。在職証明書は、税理士登録申請書を提出する際に一緒に提出します。在職証明書の信頼性については、税理士登録の申請の際に、税理士会が調査(面接等)を行い、個別に判断します。
引用:法令解釈通達|国税庁
なお、たとえ会計事務所での勤務経験があったとしても、簿記会計に関する知識がなくてもできる単純な事務や、電子計算機を使用して行う単純な入出力事務などの業務のみを担当されていた場合は上記の「実務経験」期間には算入されません。また、実務経験を積む先は必ずしも会計事務所である必要はなく、事業会社でも上記の実務を行なっていれば何ら問題はありません。
ここで注意しておきたいのが、雇用形態によって実務経験に算入されない場合があるということです。パートやアルバイトといった雇用形態で実務経験を積んだ場合には、在籍証明書と併せて、勤務時間数の積み上げ計算書類の提出が必要になります。また、無報酬で従事した時間がある場合には、基本的に実務としてカウントされません。実務経験を積むために働く場合は、そこでの働きがしっかりと実務経験に算入されるか否かをチェックして働く必要があります。
資格取得後のキャリアとしては、「社員税理士として働く」「コンサルティング会社や事業会社で専門知識を活かして働く」「独立開業する」の大きく三つの選択肢があります。
「社員税理士として働く」場合は、税理士資格や専門性を活かしながら社員として安定した環境のもと働くことができます。相続税や国際税務など税理士の中でも専門的な分野の経験も積みやすい選択肢です。
「コンサルティング会社や事業会社で専門知識を活かして働く」選択肢の場合、税務の専門性を活かしながら、自社やクライアントの経営・管理部門を成功に導くためにそれ以外の知識も身につけていく必要があります。このキャリアでは、税理士資格登録要件を満たしていながら、税理士登録しないという選択肢をとる方も多くいらっしゃいます。
「独立開業する」場合は、はじめからこのキャリアを目指して税理士資格を取得する方もおり、人気の選択肢です。近年の働き方改革の影響から、自由な時間に自分でお客様を獲得して働けるという点にメリットを感じる方がいるのはもちろん、 AI やクラウドソフトの台頭からこれまでにない税理士・税理士事務所像を探したいと独立開業をする税理士も増えています。
また税理士は、パートや時短勤務でも、時給が良く効率的にお金を稼ぎやすいため、女性の方・ママさんに人気の資格でもあります。
将来のキャリアを考える上で、年収というのは自分の選択に影響を与える大きな要素となります。そこで、税理士のお給料については、
開業税理士の平均年収:約3,000万円
勤務税理士の平均年収:約700万円
だと言われています。年収がすべてではないですが、資格さえ取得してしまえば、自身のなりたい姿やライフスタイルに合わせて柔軟に働き方を変えられるという点で、税理士の資格を取得することは、賢い選択肢のうちの一つだと言えます。
当記事でご紹介した通り、税理士として活躍するためには、自身の目指す税理士像にあった適切な資格取得方法を目指す必要があります。
少ない方でも、数千時間の勉強時間は確保する必要がある中で、どの方法で資格取得を目指すのが最も効率が良さそうかきちんと考えて税理士試験に臨みましょう。
本記事のまとめとして、大学院免除と税理士試験受験はそれぞれどんな方にオススメかを記載しますので参考にしてみてください。
大学院免除制度がオススメ
・数年かかってでも確実に税理士資格を取得したい方
・簿記論・財務諸表論等の計算科目は得意だが、税法の勉強に抵抗がある方
・時間に制約がある、ママさん税理士受験生
税理士試験での5科目取得がオススメ
・勉強に専念できる学生や専念受験生
・試験取得後のキャリア像が明確で、取得したい税法の科目が複数存在する方