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配当還元方式とは?他の方式との違いは?

公認会計士 大国光大
配当還元方式とは?他の方式との違いは?

企業を評価する手法は沢山あります。以前に簿価純資産方式、時価純資産方式、DCF法について解説しました。
そんな企業を評価する手法の一つである配当還元方式について解説するとともに、他の方式との違いを解説します。

企業の評価方法にはどのようなものがある?

主要な企業の評価方法については、前回の記事を参考にしてください。
・簿価純資産方式とは?他の方式との違いは?

大きく分けると、収益性を重視したDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法や配当還元方式と、株式の価値に着目した類似企業比較方式や類似業種比較方式、企業の財産に着目した時価純資産方式や簿価純資産方式が存在します。
今回紹介する配当還元方式は、企業の収益性に着目した評価方法であると言えます。

配当還元方式とは?

配当還元方式は、企業が株主に行う配当に着目して株式を評価する方式となります。これは、相続税の評価方法の一種であり、計算式が決まっています。
配当還元価額は、(株式に係る年間配当額÷10%)×(株式の1株当たり資本金額÷50円)で計算されます。なお、年間配当額は直前期末を含む2年間の配当金額の平均金額を1株当たりの資本金の額を50円とした場合の発行済み株式数で割って求められます。文字ではわかりづらいので具体的な数字で見てみましょう。
・資本金額500万円
・発行済株式数5,000株
・直前期の配当金総額100万円
・2期前の配当金総額50万円
このような例の時、配当還元価額は、まず(年配当額100万円+50万円)÷2の75万円を(500万円の資本金に対して1株当たりの資本金の額を50円とした場合の発行済み株式数である500万円÷50円=100,000円)で割った7.5円を計算します。
次に、(株式の1株当たり資本金額500万円÷5,000=1,000円を50円で割った20円を算出します。
ここから、7.5円÷10%×20円=1,500円として配当還元方式の株価が算出されます。

配当還元方式が適している場面とは

配当還元方式は、配当に着目して株価を算定する方法となります。通常は、配当の有無に株価は大きく左右されないため、原則的に使われる方式ではありません。
しかし、例えば企業の株式を他人が大部分を保有していて、自身が少数派の株主であった場合は企業を統治する権利も転売して利益を得られる機会も限られています。このような少数株主にとってその株式から利益を得るためには配当を得ることが唯一の方法であると言っても過言ではありません。
よって、少数株主が保有している株式を評価する際に利用される評価方法であると考えられます。また、先ほどお話した計算式は誰が計算しても基本的に同じ結果となるため、計算式さえ覚えておけば素人でも算出できるという手軽さもあります。

配当還元方式のメリットは?

配当還元方式は数ある株式の評価方法の一つです。配当還元方式には次のようなメリットがあります。
まず、配当還元方式は他の評価方法と比べて企業価値が低く算出される傾向にあります。特にほぼ無配の会社であればかなり低い評価となります。よって、相続税の評価をするときに配当還元方式を利用すると、相続税が抑えられる可能性があると言えます。ただし、先ほどお話した通り少数株主であることが原則であるため、株式の大部分を保有している場合は適用ができないため注意が必要です。
また、配当還元方式は過去の配当に着目して計算が行われるため、客観性に優れていると言えます。例えばDCF法であれば将来の利益計画に株価が左右されるため、作り方によって株価は大きく上下します。配当還元方式は先ほどお話した通り誰が計算しても基本的に同じ結果となるため、客観性に優れていると言えます。

配当還元方式のデメリットは?

配当還元方式のデメリットとしては、配当のみに着目している点が挙げられます。
企業は配当をすればするほど純資産が減少するため、通常は配当をするとその分逆に株価が下がる場合があります。しかし、配当還元方式の計算では配当をすればするほど株価が上がる計算となるため、あまり理論的ではないというデメリットがあります。
また、配当還元方式は企業の将来の収益力を加味していないため、今まで配当を控えており今後莫大な収益を得られる見込みがある企業は株式価値が低く計算される傾向にあります。また、企業が売却予定の含み益のある土地があったり、古くに取得した利益を含む株式があったりする場合などにもその影響が加味されないため、誤った評価が行われる可能性があります。
配当還元方式はあくまでも税法上簡便的に株式を評価する技法であり、元々それほど理論的な評価方法ではないためこのようなデメリットが露呈することとなります。

まとめ

配当還元方式は、少数株主に適用される相続税の例外的な計算方法であることを解説しました。相続税の計算方法以外では、不当に企業の株式価値を下げることになる可能性があるため、他の指標なども見比べてより企業の株式価値を適切に表す計算方法を選ぶ必要があります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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