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簿価純資産方式とは?他の方式との違いは?

公認会計士 大国光大
簿価純資産方式とは?他の方式との違いは?

企業を評価する手法は沢山あります。また、評価する局面というのも様々で、その局面ごとに使用が適している評価方法は違います。そんな企業を評価する手法の一つである簿価純資産方式について解説するとともに、他の方式との違いを現役公認会計士が解説します。

企業の評価方法にはどのようなものがある?

主要な企業の評価方法には次のようなものがあります。

<インカム・アプローチ>
・CF(ディスカウントキャッシュフロー)法
・配当還元方式
<マーケット・アプローチ>
・類似企業比較方式
・類似業種比較方式
<コスト・アプローチ>
・時価純資産方式
・簿価純資産方式

インカム・アプローチは企業に流入する収益に着目した方法で、マーケット・アプローチは株式の市場に着目した方法、コスト・アプローチは企業に帰属する純資産に着目した方法となります。

企業の評価を行うのはどんな時?

では、企業を評価するのはどのような時でしょうか。
まず、企業を買収する際に買収価格を決定する時に企業価値を評価します。
売り手は企業をできるだけ高く売りたいと考え、買い手はできるだけ安く企業を買いたいと考えます。よって、両社から独立した公認会計士等が企業を評価し、その評価結果を基に両社で協議の上買収価格が決定されます。

一般的にこのような相対取引では両者が合意した価格が市場価格とみなされるため、買手や売手の状況によって株式の価値は大幅に変動します。

また、株式を相続する場合にも相続税算定の為に企業価値を評価します。上場株式であれば市場価格が決まっている為、過去の株価を用いて企業価値は算定されますが、非上場株式の場合は株価が決まっていないため、税理士等による株価の算定が行われます。

相続税はできるだけ低く抑えたいと考えられる為、相続税法に準拠した評価方法のうち、最も低い価格の株価を使用することとなります。相対取引と違って評価の枠組みがある程度制限されている為、同じような能力の税理士が評価すれば相対取引程は株価に変動はありません。

企業の評価を行うのはどんな時?

簿価純資産方式の評価方法は?

では代表的な評価方法のうち、簿価純資産方式の評価方法はどのように行われるのでしょうか。

簿価純資産方式では、企業の決算書に計上されている資産から負債を差し引くことで企業価値が算定されます。企業価値を発行済株式総数で割ることで、1株当たりの価値が算定されます。

簿価純資産方式は確定している決算書で評価を行うほか、直近の試算表でも評価を行うことがあります。ただし、試算表ベースでは各種引当金が計上されていなかったり、税額計算がされていなかったりすることがあるため、必要な修正仕訳を行ったうえでの企業価値算定が行われます。

簿価純資産方式のメリットは?

簿価純資産方式は先ほどお話した通りとても簡単な方法です。誰が評価しても原則同じ評価となります。このように、簿価純資産方式のメリットは誰が評価しても原則同じ結果となることとなります。

このことから「簿価純資産方式は客観性に優れている」と言われます。
また、簿価純資産方式は企業の過去にどれだけ利益を積み上げてきたかを示す指標であり、今企業が事業を辞めて解体したとしても基本的には簿価純資産方式で評価された価値を下回りません。よって、企業価値の最低価格としての指標を有すると言えます。

簿価純資産方式のデメリットは?

それでは、簿価純資産方式のデメリットには何が挙げられるでしょうか。
よく簿価純資産方式と対比される評価方法としては、時価純資産方式が挙げられます。

時価純資産方式は、企業の保有する資産や負債を時価評価して、時価評価後の資産から負債を差し引いた金額を企業価値とし、それを発行済株式総数で割ることで1株当たりの価値を算定します。

簿価純資産方式では土地や有価証券などが取得原価で評価されるため、現在の価値を表しません。また、電話加入権など現在はほとんど価値がないものについても取得時の価格で評価されてしまいます。時価純資産方式ではそれらのものが時価評価されるため、より現在の価値を表すのに適していると言えます。

このように簿価純資産方式では過去の価値はわかるものの、現在の価値を表さない点でデメリットがあると言えます。

また、DCF法のように、企業の将来のキャッシュフローを加味しない点で簿価純資産方式にはデメリットがあると言えます。企業を買収する際は今後その企業がどれだけ利益を獲得するかがポイントとなるのですが、簿価純資産方式では過去の利益の積み上げから算定するため将来のことを加味していない点で劣っています。

まとめ

簿価純資産方式は誰が算定してもほぼ同一の結果となるため客観性に優れています。しかし、企業の将来性を加味していない点で他の評価方法に劣ると言えます。
とはいえ、企業評価の実務では様々な評価方法の中間値を採ったりするため、簿価純資産方式の評価額は決して無視できるものではありません。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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