損益計算書に計上される収益科目は、大きく売上高・営業外収益・特別利益の3つに分けることができます。決算書の損益計算書を見ていると、営業利益では赤字でも、経常利益が黒字の場合がありますね。こんな時は「営業外収益」と「特別利益」の計上をチェックしてみましょう。いずれも本業以外から得られる収益ですが、どう違うのでしょうか?本記事では、営業外収益と特別利益の違いについて解説します。
企業の本業以外の活動によって得られる収益のことを「営業外収益」といいます。例えば、新聞社や保険会社の保有ビルが駅前などにたくさんありますよね。本業が不動産業でない場合、ビルのテナント賃貸料などは営業外収益に該当します。
また、本業以外にサブ的な事業収入がある場合も、雑収入として、営業外収益として計上することがあります。例えば、製造業や建設業に置けるスクラップ売却などです。
営業外収益は、損益計算書上において、経常利益の区分に表示されます。そのため、営業利益がマイナスでも、営業外収益によって経常利益がプラスになっている場合も良くあることです。
営業外収益については、以下の記事でも取り上げていますので、併せてご一読ください。
営業外収益に当たる主なものは、以下のような勘定科目に該当します。
・受取利息:預貯金や貸付金の利息
・受取手数料:本業以外の事業で得られた手数料
・受取配当金:保有する株式の配当金など
・有価証券評価益:国債や社債の評価益
・有価証券売却益:国債や社債の売却によって得られた利益。特別利益として計上することも
・雑収入:本業以外の事業で得られた収入
営業外収益について調べていると、営業外利益という言葉で解説してある場合もあります。これらは実は同じものです。
経常利益は、営業利益に営業外収益を加えて、営業外費用を差し引いて算出します。
利益=収益-費用
という会計上の概念からすると、営業外収益は営業外収益から営業外費用を引いたもの?と思ってしまうかもしれません。
しかし、以下の通り営業外費用に該当する勘定科目は、営業外収益を得るために必ずしも必要なものではないのです。
営業外費用に当たる主なものは、以下のような勘定科目に該当します。
・支払利息:借入金に支払う利息
・社債利息:社債保有社に支払う利息
・手形売却損:手形の割引を行う際に、額面から差し引かれる金額
・雑損失:本業以外で被った損失。内容によっては特別損失に計上することもある
など
そのため、営業外収益と営業外利益はほぼ同じ意味で使われています。
営業外収益から営業外費用を差し引いたものは「営業外損益」と呼ばれる別の概念です。
詳しくはこちらで解説していますので、ぜひご一読ください。
特別利益も営業外収益と同じく、企業の本業とはかかわりのない利益です。
しかし、営業外利益が利息や手数料といった継続的に得られる利益であるのと違い、特別利益は不動産などの固定資産売却などによって得られる当期だけの利益です。
企業にとって、通常では発生しないような利益が多額に得られた場合に使われる項目が特別利益となります。
例えば以下のようなものです。
・不動産などの固定資産売却益
・長期間保有している株式や証券売却による売却益
・引当金による戻入益
・債務免除による債務免除益
・前期の損益を修正することで発生した前期損益修正益
「経常利益」に特別利益を足して特別損失を引くと、税引前当期純利益を計算できます。
営業外収益と特別利益については、いずれも同じく企業の本業とはかかわりのない利益であるという共通点があります。大きく分けると、営業外収益の中に特別利益も含まれるという考え方もできなくはありません。
しかし、特別利益については、あくまで一時的に臨時に発生する利益という概念があります。実は、個別に検討して特別利益に該当するかどうかを検証しているのです。
決算書を見ていると、本業である営業利益が赤字ににもかかわらず、経常利益が黒字になっている場合があります。
これは営業外収益もしくは特別利益が関与しているためです。
そのため、決算書を確認する場合は、1期だけでなくある程度まとまった期間をチェックする必要があります。
本業の営業利益が赤字でも経常利益が黒字の状態が続いているようであれば、本業自体が危ないという意味です。
例えば、2015年にはシャープが、2019年には千趣会やセガサミーが土地建物売却で特別利益を計上しています。これらの固定資産は「内部留保」と呼ばれるものに該当し、何かとやり玉にあげられがちな費目です。しかし、こうして会社が傾きかけた時に持ちこたえる役割を果たします。
本業で収益を出す事は何より大事です。しかし世情の変化などによって難しい場合もあります。そこで、企業は現金よりもむしろこうした資産を確保することによって、いざという時に備えています。