よく「贈与は口約束でも成立する」といいます。しかし、あげる側ともらう側が双方同意していても、客観的な証拠がないと、後になって税務調査での指摘などでトラブルが生じることも。そこで有効なのが「贈与契約書」です。今回は、株式の贈与、上場株式・非上場株式それぞれの「贈与契約書」について解説します。
「契約書」というと、とても堅苦しく感じますが、実は「贈与契約書」には特に決まった書式があるわけではありません。
手書き、 Word 文書のプリントアウトなどいずれも可能です。ただし、パソコンなどで作成する場合は、署名と日付だけは自筆で記入するようにしてください。
また、手書きの場合は鉛筆やフリクションペンなど消えるものは不可。ボールペンなど消えないものでの記載が必要です。
必要事項は以下の5つです。
・誰に贈与するのか
・いつ贈与するのか
・何を贈与するのか
・どんな条件で贈与するのか
・どうやって贈与するのか
押印はなくても可能ですが、信頼性が高まる実印を使用することをおすすめします。
これは株式に限らず、全ての贈与について共通事項です。それでは、次項より株式の贈与について見ていきましょう。
上場株式の贈与の場合は、評価額の算出が比較的容易です。
以下の4つの基準より、最も低い金額で評価します。
・贈与日の最終価格
・贈与月の毎日の最終価格の平均額
・贈与月の前月の毎日の最終価格の平均額
・贈与月の前々月の毎日の最終価格の平均額
各証券会社では、相続税よりも税率の低い生前贈与による財産の移転を推奨しています。贈与税の基礎控除の範囲内で、定期的に贈与を行う方も多いです。
株式贈与契約書のひな形や、贈与タイミング、税務申告の手続きに使える参考資料などを取り揃えたサービスを行っている証券会社も多いので、生前贈与を考えている場合は相談してみましょう。
相続はいつ生じるかわかりません。もし、相続開始前3年以内に被相続人より贈与を受けた場合、その贈与は相続財産に加算されます。生前贈与済みで基礎控除額(年間110万円 )の範囲内であってもです。
また、贈与については相続人でない人でも対象にできるというメリットもあります。株式の贈与、いずれは相続を考えている人は早目の財産移転が吉です。
上場株式の贈与は、評価額がわかりやすく証券会社のサービスも充実しているので、贈与は比較的容易です。しかし、一般的な非上場会社の場合、株式譲渡には制限が設けられており、自由に株式を売買することができません。
登記事項に以下のように「株式の譲渡制限に関する規定」について記載しています。
出典:会社法の施行に伴う商業登記記録例について|法務省
この「譲渡」には贈与も含まれます。
非公開会社(株式譲渡制限会社)の株主が、株式譲渡によって保有する株式を第三者に贈与する際には、事前に規定された承認を得てから行うという手続きが必要なのです。株式時贈与契約書の締結はその後になります。
上場して値が付いている株式と違い、非上場の株式についてはその価値を確認しづらいです。しかし、贈与や相続が絡む場合には、ちゃんとその株式にも金額を付けて評価する必要があります。
国税庁のWEBサイトには以下のように記されています。
「取引相場のない株式(「上場株式」及び「気配相場等のある株式」以外の株式をいいます。)は、相続や贈与などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。」
贈与対象が経営権のある人かそうでないかによって評価方法が変わります。これは個人では算出できるものではありませんので、税理士に確認してください。
また、贈与・相続時に実質税負担ゼロで後継者へ自社株式を承継できる特例の時限立法である「事業承継税制」が注目されています。10年間の期間限定ということもあり、この間に事業承継を済ませてしまおうという方も多いのではないでしょうか。
上場株・非上場株、いずれについても、株式の贈与によって事業承継を行う場合は、きちんと「株式贈与契約書」を作成し、書面でその事実を残しておきましょう。
当コラム内では、事業承継についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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