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税理士と公認会計士の違いとは?業務内容や試験などで徹底比較!

HUPRO 編集部
税理士と公認会計士の違いは?資格試験、仕事内容、年収事情などを総ざらい

税理士と公認会計士は異なる職業です。重複する業務内容を扱う場合もありますが、資格の取得方法や主たる業務は本来違うものです。そこで、本記事では税理士と公認会計士の違いについて、資格の取得方法や業務内容、年収などのいろいろな観点に注目して比較・解説していきます。

税理士と公認会計士のどちらに仕事を依頼すれば良いか分からないという人や今後のキャリアアップを見据えて税理士や公認会計士の資格取得を検討している人は、ぜひ最後まで参考にしてください!

試験内容と難易度の違い

まずは、税理士と公認会計士のなり方の違いについて解説します。税理士も公認会計士もそれぞれ国家試験に合格しなければ資格を取得できないので、試験内容の違いが問題となります。

税理士試験の試験内容と特徴とは?

税理士試験に合格するには、以下の11科目の中から5科目を選択して受験し、それぞれの科目について合格水準に達する必要があります。

必修科目:簿記論、財務諸表論
選択必修科目:所得税法、法人税法(どちらか一つを必ず選択)
選択科目:消費税法、酒税法、住民法、事業税、相続税法、国税徴収法、固定資産税(実質選択科目からは二科目選択)

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税理士試験の受験科目の選び方

税理士試験は11科目の中から5科目を受験しなければいけませんが、受験生が好きに5科目を選択して良いというわけではありません。

まず、簿記論と財務諸表論は必修科目なので、必ずこの2科目を受験する必要があります。次に、所得税法と法人税法は選択必修科目なので、最低でもどちらか1科目は受験しなければいけません。さらに、残りの1科目ないし2科目は選択科目に位置付けられる7科目の中から選ばなければいけませんが、消費税法と酒税法、住民税と事業税は、それぞれどちらか1科目だけ受験可能です。例えば、消費税法と酒税法を選択科目として同時に受験することはできないのでご注意ください。

税理士試験の受験資格

税理士試験は誰でも受験できるわけではありません。以下の受験資格を充たす必要があります。

・大学、短大、高等専門学校を卒業し、法律学又は経済学に属する科目を1科目以上取得した者
・大学3年次以上で、法律学又は経済学に属する科目を含めて62単位以上を取得した者
・司法試験合格者
・公認会計士試験短答式試験合格者
・日商簿記1級合格者
・全国経理教育協会主催簿記上級試験合格者

税理士試験では科目合格制が採用

税理士試験では科目合格制が採用されています。全5科目の合計点で税理士資格取得の合否が問われるのではなく、それぞれの科目ごとに合格判定がなされます。

そして、科目合格が認められたものについては、一生涯合格履歴が有効です。したがって、そもそも一回の受験で5科目すべてを受験する必要はありません。数年の期間をかけて毎年少しずつ合格科目を増やしながら最終的な5科目合格を目指すのが、一般的な税理士試験スケジュールです。

公認会計士試験の試験内容と特徴とは?

次に、公認会計士試験の内容について説明します。

公認会計士試験の受験資格について

税理士試験と違い、公認会計士試験の受験資格には制限はありません。年齢、性別、学歴を問わず、幅広く受験できる点に特徴があります。

公認会計士試験の内容について

公認会計士試験は、マークシート方式の短答式試験と記述方式の論文式試験の2つに分かれています。短答式試験は年2回、論文式試験は年1回行われます。そして短答式試験に合格すれば、論文式試験を受けることができます。

公認会計士試験の受験科目について

短答式試験の科目は4科目で財務会計論、管理会計論、監査論、企業法です。論文式試験の科目は、財務会計論、管理会計論、監査論、企業法、租税法という5科目に経営学、経済学、民法、統計学の選択科目の内から1科目を加えた計6科目となります。公認会計士試験は税理士試験とは異なり、全科目一括合格が原則です。

公認会計士試験の特徴について

短答式試験に合格すると、合格後2年間は短答式試験が免除されます。つまり一回短答式試験に合格すると3回まで論文式試験を受けることができます。残念ながら3回とも論文式試験に合格できなかった場合は、もう1度短答式試験に合格しなければなりませんが、受験回数に制限はありません。また短答式試験に科目合格制はありません。

また、公認会計士試験の論文式試験には科目合格制がありますが、税理士試験とは違い、2年間の有効期限があります。残念ながらその期間に残りの科目に合格できなかった場合は、その科目も含めて試験を受ける必要があります。ただしやはり受験回数に制限はありません。

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試験の難易度の違い

一般的に公認会計士試験の方が難易度が高いとされています。公認会計士は医師・弁護士と並ぶ三大国家資格の一つであるため、その点からも難易度の高さが予想されますが、以下では公認会計士試験が税理士試験より難しいとされる理由について具体的に解説していきます。

合格方法の違い

税理士試験は科目合格制で一度ある科目に合格すればその科目の合格資格はずっと残りますが、公認会計士試験は全科目一発合格しなければならず、論文式試験もあることが理由として挙げられます。

必要な勉強時間の違い

公認会計士試験合格に必要な勉強時間は約4000〜5000時間と言われています。一方で税理士試験に必要な勉強時間は約3000〜4000時間と言われています。

この数字はもちろん人によって異なるので一概に言うことはできないのですが、公認会計士試験は短期間の間にこの量の勉強時間を確保しなければならないのが難易度が高い所以です。

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税理士と公認会計士の資格登録条件の違い

税理士も公認会計士も、国家試験に合格しただけで資格登録をすることはできません。試験合格後にも一定の要件を充たさなければいけないので、以下では税理士と公認会計士の登録要件の違いについて紹介します。

税理士に登録するための条件

税理士登録の要件は、税理士試験の合格以外に2年間の実務経験が必要です。

ただし、実務経験を積む期間は試験の合格前後を問いません。税理士試験には科目合格制が採用されているため、最終合格をする前に税理士事務所などで働きながら試験合格を目指している社会人の人も少なくはないでしょう。このような場合であっても、2年間の実務経験としてカウントされるのでご安心ください。

また、公認会計士または弁護士資格を所持している人は、税理士登録をするだけで税理士としての業務を行うことができます。税理士よりも公認会計士。弁護士の方が上位資格に位置付けられるのはこれが理由です。

公認会計士に登録するための条件

公認会計士登録の要件は、公認会計士試験の合格以外に、下記の3要件を充たす必要があります。

業務補助等2年:これは一定の条件を充たした実務経験のことです。監査法人で働きながら業務補助要件を充たすのが基本的な方法ですが、一般企業や官公庁などでも業務補助経験を積むことができる場合があります。

実務補習3年:実務を座学中心に学ぶ実務補習所と呼ばれる機関に3年間通い、一定の単位を取得する必要があります。

修了考査に合格する:修了考査は言わば実務補習所の卒業試験です。合格率は60~70%のため、難易度はそう高くありません。再受験回数に制限はなく、一度合格すれば生涯合格資格は維持されます。

公認会計士は税理士資格も登録できる

税理士と公認会計士のもう一つ大きな違いとして、公認会計士の資格を取得している人は税理士資格も登録することができるという点を挙げられます。

公認会計士と税理士の二つの資格を持っている人は、税理士の独占業務である税務業務、公認会計士の独占業務である監査業務の二つの独占業務を提供できるようになります。

ちなみに、公認会計士と同様、弁護士資格保持者も税理士に登録することが可能です。数は少ないですが、最終的に税理士として開業を目指す人が、公認会計士や弁護士を一時的に経由しているというパターンも見られます。

登録の重複という観点だけで考えると、公認会計士資格を取得した方が、将来的な業務選択肢、キャリアプランの形成方法が増えるという違いがあると言えるでしょう。

税理士と公認会計士の独占業務の違い

税理士と公認会計士の業務内容の違い

税理士と公認会計士には、それぞれ独占業務があります。以下では、両者の業務内容の違いについて説明します。

税理士の主な業務と独占業務について

税理士の独占業務は税務業務です。税理士法によると、税務業務とは、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つと規定されています。

税務代理

税務代理とは、納税者に代わって税務申告を行う業務のことです。

企業または確定申告が必要な個人は、税務署に対して申告書の提出が求められます。そして、税理士は本人の代理として申告書の提出を行うことができます。直接税務署に出向いての提出や電子的な方法による申告も認められています。

公認会計士も税務代理業務を取扱う場合がありますが、このときの公認会計士は税理士登録を必ず済ませています。どれだけ税金について詳しい公認会計士でも、税理士資格に基づいた業務でない限り、税務代理はできないことに注意が必要です。
これが税務業務が税理士の独占業務であると言うことです。

税務書類の作成

税務署類の作成とは、確定申告を行うために必要な書類の作成業務のことです。

確定申告を行うためには申告書の作成が必要です。確定申告の作成は税理士の独占業務となり、納税者本人が行う以外では、公認会計士や弁護士など他の資格保有者が行うことはできません。

税務申告書の作成は極めて高い専門性が要求されており、税理士の独占業務として定められているのです。

税務相談

税務相談とは、税務・税金に関するあらゆる相談対応をする業務のことです。

税理士は税金・税務に関するプロフェッショナルです。したがって、個人や法人の税金に関する相談に幅広く対応することが期待されているのです。

普段生活をしていると、税務に詳しい人に税金に関する質問をする、ということがよくあるでしょう。しかし、これは税務相談に該当するために、あまりおすすめできる行動ではありません。特に、このような日常的な相談に応じることで料金を取ることは絶対にしてはいけません。税理士の独占業務規程に反するからです。

税務代理と同様、公認会計士が税務相談を業務としている場合には、必ず税理士登録を済ませています。それほどまでに、税理士の税務相談の専門性は高く維持されることが期待されているのです。

公認会計士の主な業務と独占業務について

公認会計士の独占業務は監査業務です。監査業務とは、一般企業や特殊法人などの幅広い組織について、これらとは独立した第三者的な立ち位置から当該組織の財務情報をチェックし、監査意見を付与するというものです。公認会計士によって監査を受けることによって、当該組織の財務状況を示す情報について、信頼度が高まることになります。

監査業務とは?

監査業務をもう少し詳しく区分すると、会計監査と内部統制監査に分けることができます。

会計監査とは、財務書類が適正であるかを第三者の立場から検査する業務です。監査業務の中心的な役割です。これに対して、内部統制監査とは、通常会計監査と同じ監査人によって会計監査と同時に行われるもので、経営者が作成した内部統制報告書が適正であるかについて第三者の立場から検査する業務です。場合によっては報告書に対するチェックだけではなく、内部統制システムの構築状況に対して直接的に評価を与える場合もあります。

上場企業は公認会計士による監査必須

上場企業は必ず公認会計士による監査を受けなければいけません。これは、一般投資家や株主の利益を保護するためです。

投資家は財務諸表に基づいて投資意思決定を行いますが、財務諸表が正しいかどうかは判断がつきません。公表されている財務諸表が信頼に値するものでなければ、投資に関する適切な判断ができないでしょう。

また、経営状況に苦しむ企業の中には、株価を上げて企業価値を高めたいという指向が存在するはずです。ここで公認会計士による監査が適正に行われなければ、粉飾決算などをする可能性もあります。これでは、一般投資家だけでなく、粉飾決算が露見した場合の株価低下等のリスクを株主が背負うことになりかねません。

このように、公認会計士が企業から独立した立場から監査業務を適切に遂行することによって、一般投資家や株主の利益が守られるという仕組みが出来上がっています。

税理士と公認会計士の顧客クライアントの違い

税理士と公認会計士では、扱う業務が異なります。したがって、顧客クライアントにも自然と違いが生まれます。以下では、税理士と公認会計士の顧客クライアントの違いについて説明します。

税理士の主な顧客クライアントとは?

先程から説明しているように、税理士の業務は税務に関するものが中心となります。したがって、個人や法人問わず、税金を納める立場にある存在すべてが顧客クライアントとなります。

ただし、大企業の場合には、顧問契約を締結している大規模な税理士法人や、監査法人と提携している税理士法人などに税務を依頼するのが一般的です。したがって、多くの税理士にとっての顧客クライアントは、中小企業や個人事業主が中心となります。

公認会計士の主な顧客クライアントとは?

公認会計士の顧客クライアントは、法律上監査を受ける義務を課されている大企業や上場企業が中心となります。もちろん、世の中の企業の中には、法律上監査を受ける義務を課されていないとしても、公認会計士による監査を受けて企業の社会的評価を高める場合もあります。。

いずれにしても、公認会計士の顧客クライアントの方が、税理士の顧客クラインとよりも大規模になるという違い・傾向があります。

税理士と公認会計士の人数の違い

では、税理士と公認会計士とでは、資格を保有して活躍している人数にどのような違いがあるのでしょうか?

税理士と公認会計士の登録人数

まずは、税理士の人数についてです。令和2年9月時点で、税理士登録をしているのは、79,225人です。
日本税理士会連合会 税理士登録者数

次に、公認会計士の登録人数についてです。令和2年9月時点で、外国公認会計士や準会員を含めて、39,238人です。
日本公認会計士協会 会員数調

単純に比較すると、税理士の方が公認会計士の約2倍の登録数があることになります。

税理士と公認会計士の登録数の違いに関する理由

税理士と公認会計士の登録数に違いがあるのは、次の3つの理由です。

1つ目は、試験制度の違いによるものです。税理士試験は公認会計士試験と違い、完全な科目合格制が採用されています。1回の試験で5科目すべての完成度を高める必要はなく、数年以上の中長期的なスパンで資格取得にチャレンジできる点に特殊性が見込まれます。したがって、税理士試験の方が公認会計士試験よりも最終合格に到達しやすいという違いが生まれるのです。

2つ目は、試験の難易度、受験層の違いによるものです。公認会計士の試験内容は、税理士試験よりも高難度な内容が出題されます。そして、公認会計士資格取得を目指す受験者層も、高学歴の現役大学生や卒業生が中心です
また先ほど述べたように公認会計士登録した人は税理士登録もすることができます。その逆のパターンはできません。したがって、公認会計士の登録者数の方が少ないのはむしろ当然の帰結とも言えるでしょう。

3つ目は、需要の違いによるものです。税理士の中心業務はすべての個人・法人を対象とするものです。大企業を顧客クライアントにすることは少ないですが、他方で中小規模の顧客を相手にする必要があるため、抱える案件数が多くなる傾向があります。したがって、税理士の方が需要が大きいため、仕事量も豊富なため税理士の数も多くなっています。

税理士と公認会計士の年会費の違いについて

税理士も公認会計士も、当該資格に基づいて開業したり就職したりするためには、協会に対して年会費を支払わなければいけません。登録する都道府県によって年会費は違いますが、税理士も公認会計士も、おおよそ年会費として10万円程度の費用を支払う必要があります。額としてはあまり違いはありません。

なお、公認会計士が税理士業務を兼任するために税理士登録をする場合には、いずれの資格についても登録をしなければいけません。したがって、年会費の支払い額は年間20万円程度はかかるのです。

税理士と公認会計士の働き方と就職先の違い

では、税理士と公認会計士の働き方と就職先にはどのような違いがあるのでしょうか?

働き方の違い

税理士と公認会計士の働き方は、雇われて働くケースと独立開業するケースの2つに分かれます。
法人や企業などに雇われて働く税理士は約22%、公認会計士は約80%となっています。

一方、独立開業する税理士は全体の約78%ですが、独立開業する公認会計士は約20%です。税理士の方が独立志向が高いと言えるでしょう。

就職先の違い

税理士の主な就職先は、税理士法人や税理士事務所が中心です。最近では、一般事業企業の経理財務部門などで組織内税理士として活躍する人も増えてきています。

公認会計士は、監査法人に就職するのが一般的です。監査法人こそが独占業務である監査業務を提供している法人のため、公認会計士のキャリアの第一歩を監査法人で始めるという人は少なくはありません。

もちろん、税理士が監査法人に就職することもできます。実際、大手監査法人では組織内に税務担当部署を設けている場合が少なくないために、税理士であったとしても監査法人で活躍する道が残されているのです。ただし、当然ながら監査業務を提供することはできません。

また、税理士と同様、公認会計士資格を持ちながら、一般事業会社に入るというパターンも増えています。一般事業会社の中で、公認会計士としての専門知識を発揮しつつ、経理部門や財務部門などで、組織コンサルタントのような立ち回りをすることもあるでしょう。

さらに、ベンチャー企業などを含めた幅広い選択肢を視野に入れて活躍する公認会計士も増えています。中には、ベンチャー企業のCFOとして企業経営に関わるようなケースも少なくはありません。

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税理士と公認会計士の年収面の違い

税理士も公認会計士の年収は、雇われて働くのか独立開業するのかによって大きな差があります。また、勤め先の勤務地や事務所の規模などによって収入は大きく変わります。

ですが平均としてはやはり公認会計士の方が年収は高い傾向にあります。
税理士の平均年収は約850万円、公認会計士の平均年収は約950万円ほどです。

税理士法人に就職した場合の収入は、監査法人とほぼ同じですが、安定的に高収入を得るなら税理士法人に長く勤務した方がいいかもしれません。また監査法人に就職した場合、初年度から月給30~35万円になることも珍しくありません。20代にして年収1千万を超えるケースもあるため、若くして高収入を期待できる職業でもあります。

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まとめ

以上が、税理士と公認会計士の違いです。なり方の違いはもちろんのこと、実際にキャリアを形成するうえでも大きな違いがあることをご理解いただけたでしょう。

これから何か資格の取得を考えられている方が、税理士と公認会計士のどちらの資格を取得するかを選択する際には、ご自身のキャリアプランをしっかりと描くことが重要です。それでも迷ってしまうという方は、試験勉強の一部を実際に体験してみると良いでしょう。自分にはクリアできそうだと思う方の資格にチャレンジするというのも有効な選択方法です。決定打がないのなら、例えば上記のように、公認会計士は税理士登録をすれば税理士資格も得られるというポイントを重視して、勉強時間に余裕があれば公認会計士試験にチャレンジしてみると良いかもしれません。

良い選択をしてご自身のキャリアを一層輝かせてください。
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この記事を書いたライター

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