自宅から会社までかかる交通費について支給される「通勤手当」。電車やバスなどの公共交通機関のほか、マイカー通勤などでもガソリン代が支給される場合があります。しかし、実は通勤手当の支給についてはあくまで会社の就業規則によるもので、義務ではありません。本記事では、通勤手当を定める場合の相場と、マイカー通勤などを行う場合の計算方法について解説します。
一般的に「通勤手当」とは、家から会社までの通勤にかかる費用を補てんする手当のことです。全体の9割以上の企業が支給している(平成26年11月調査)ため、当たり前のように思っている方もいるかもしれませんが、通勤手当の支給は義務ではないため、通勤手段や経路については会社の規定で定めることができ、全額支給する会社もあれば、一定の上限を設けている会社や支給されないこともあります。
なお、「手当」と名のつくものには「住宅手当」「残業手当」「資格手当」など様々ありますが、基本的には所得税の課税対象となるのに対し、「通勤手当」は会社への通勤の実費を補填するという性質から、一定金額までは非課税となっています。(雇用保険料や社会保険料については通勤手当を含んだ額が標準月額報酬となります)その相場は、平成27年調査によると全業種平均で11,462円となっています。
これに対して「交通費」は営業社員が顧客の元に出向く際の交通費や、出張にかかる旅費など、業務上の異動にかかる費用が該当します。こちらもかかった実費を経費精算することになるのでもちろん非課税です。
通勤手当については、その支給要件や内容を就業規則で定めることが必要です。基本的には時間と金額に照らし合わせて、自宅の最寄り駅から会社の最寄り駅までの間で「合理的」で「経済的」なルートを選択することになります。
例えば、埼玉県の大宮から東京の上野まで通勤するような場合、最も早い手段は新幹線で20分弱ですが、3000円弱かかります。しかし在来線でも30~40分で500円以下で通うことができるので、この場合は新幹線通勤が許されることはまずないでしょう。
また、公共交通機関が不便な地域であれば、マイカー通勤などの手段を認めている場合もあります。支給金額についても1ヶ月ごとではなく、3ヶ月、6ヶ月分をまとめて支給したり、定期券や回数券を現物支給していたりするところもあり、会社によって様々です。
通勤手当は非課税範囲内の金額であれば、多く支給されても所得税が高くなることはありません。そのため、住所の登録を実際は居住していない遠方の実家などにして、実際は会社の近くに居住し、その差額を受け取るといった不正の温床になりやすい手当でもあります。
こうした不正が起こらないよう、通勤手当についてはその基準と共に、懲戒処分の規定についても就業規則や雇用契約にしっかり設けておきましょう。
この場合の非課税となる限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、「最も経済的かつ合理的な経路及び方法」で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。
新幹線を利用した場合の運賃等の額も「経済的かつ合理的な方法による金額」に含まれますが、グリーン料金は含まれません。
最も経済的かつ合理的な経路及び方法による通勤定期券などの金額が、1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となります。
もし、最寄り駅やバス停まで自動車や自転車を使って通勤している場合は、以下の合計金額が15万円まで限度として非課税になります。
出典:国税庁WEBサイト タックスアンサー No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
電車やバス通勤の場合は、1ヶ月ごとではなく、3ヶ月や6ヶ月の定期券の代金をまとめて支給という方式が一般的です。
マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さです。)に応じて、次のように定められています。
出典:国税庁WEBサイト タックスアンサー No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
一般的なマイカー通勤者の通勤手当は
「実際の往復通勤距離×所定勤務日数×ガソリン単価÷燃費基準値」 という算式を用いて計算した概算、あるいは燃費については車種によって大幅な差があることから、計算の煩雑さを防ぐために、一律でいくらまでと決めた定額を支給していることが多いです。
マイカー自体が個人の所有物なので、維持費や近年のガソリン代の高騰を考えると、もっと支給してほしいところですが、そうした事情は勘案されないため、限度額を越えた部分に関しては課税されることになります。
通勤手当はあくまで企業の裁量で支給されるものなので、額は自由に決められます。もし、実際の通勤費用にくらべてかなり低い額であれば、一度交渉してみても良いかもしれません。
通勤手当は企業の義務ではなく、あくまで付加的に支給されてる手当です。そのため、内容や金額についても企業が自由に決めることができるようになっています。
通勤交通費の毎日の積み重ねを自費で賄うのはかなり痛手です。就職や転職の際も事前に確認しておくことをおすすめします。