税理士は税務・会計の専門家なので、英語力との関係はあまりないと感じる方も多いでしょう。しかし、大企業をクライアントに持つBig4だけではなく中小会計事務所においても、英語力がある税理士のニーズは高まっています。なぜ税理士に英語力が求められているのか、どんな業務に活かせるのかなど、解説していきます。
日本において正しい税金を納めるのは義務付けられていますので、その専門家である税理士のニーズは高い状態にあります。その一方で、税理士は2024年4月現在で81,073名もいらっしゃいますので、よりクライアントに選ばれる専門家になるべく、スキルや強みを持とうとする方も多いです。
スキルアップの手段として、今までは公認会計士や社労士といった関連するような資格を目指す人も多かったのですが、現在、ニーズが高まってきているのが英語ができる税理士です。
具体的には、海外に進出する日本の企業や、日本に進出する外資系企業、日本で起業する外国人経営者、さらには会計基準の国際化をする企業からの需要が高まっています。
日本における中小企業数は減っているものの、企業の規模を問わず、海外に進出してグローバル化を果たす企業も増えてきました。税金のルールは国によって異なるため、進出先の国のルールを理解をする必要があります。もちろん、海外進出するほとんどの企業に英語が使える社員はいますが、専門知識が無いとルールを理解し、正しい納税や節税対策をすることはできません。そのような企業をサポートする役割を英語力のある税理士が担えるのです。
コロナ禍が終わり、日本市場に参入する外資系企業や外国人経営者も増加傾向にあります。そのような企業や経営者は、日本の税金のルールに沿って税金を納めなくてはならないので、正しい税務申告に対応できるだけでなく、英語の資料を理解できたり、経営陣と英語でやり取りできる税理士が必要とされています。
また、会計基準についても、IFRS(国際財務報告基準)を導入する動きが広がっています。クライアント企業がIFRS(国際財務報告基準)を導入するとなれば、税理士にも英語力が求められるようになるでしょう。
特に大都市圏では、税理士が供給過多と言われているくらいですので、今までと同じやり方では、仕事自体が減っていき、必然的に英語ができる税理士に案件が集まることになります。
「英語力がある」、「英語ができる」という表現をここまで使用してきましたが、税理士に求められる「英語力」とはどのくらいのスキルにあたるのでしょうか?
英語力を測る指標として、英語に関わる資格があります。英検(実用英語技能検定)やTOEIC、TOEFLといった資格の知名度が高いですが、この中でもTOEICの点数を重視する会計事務所が多いです。
当社ヒュープロは士業・管理部門に特化しており、多くの会計事務所とやり取りさせて頂いていますが、その中で多いのがTOEIC800点以上という基準を設けている事務所です。
ですので、少なくとも800点以上の点数を取った経験があれば、「英語力がある」税理士として仕事をしたり、就職や転職の際にアピールすることができるでしょう。
TOEIC800点以上の英語スキルとはどの程度なのでしょうか?TOEICを主催する一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会が定めている「「TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表」には、730点~859点のスキルおよび860点以上のスキルが示されています。
レベルBにおいても、「話題が特定分野にわたっても、対応できる力を持っている。業務上に大きな支障はない。」とされていますので、税理士として日本のクライアントに提供している業務を、そのまま英語で行えるレベルが求められるといえます。TOEICを受けたことが無かったり、730点未満の点数だったとしても、そのレベルの英語を使った経験をアピールできれば、「英語力がある」税理士とみなされる場合があります。
出典:一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
「TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表」
過去、日本企業の多くは国内取引がメインで、そのため税理士についても国内の書類対応で税務申告ができれば、特に業務の上でビジネスレベルの英語力を求められることは少なかったです。
しかし、グローバル化の時代となり、上述の通り日本企業も海外に進出したり、国境を越えた取引が当たり前になってきました。そして、日本企業が海外進出をする場合は、当然に進出先諸外国の税務や租税条約などの税制度を英語で理解して、なおかつ申請手続きに対応する必要があります。
税理士としてクライアントや顧問先が海外進出していく中で、英語での書類作成ができたりコミュニケーションが取れると、一気に税理士としての需要が上がるため、転職の際にも大幅な年収アップも狙えるでしょう。
税理士の年齢層が高く、税理士業界では英語ができる人材が大幅に足りていないという現状も、英語ができる税理士の市場価値を上げる要因の一つになっています。
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具体的に英語が必要な税理士の業務にはどのようなものがあるのか見てみましょう。
企業が国際的に取引を行う際に発生する税務が国際税務です。二国間以上で取引を行うのであれば、日本だけでなく相手国の税制を理解したうえでの税務管理が必要です。それぞれの国の税務や規定について理解することはもちろん、相手企業にも会計士や税理士に相当するポジションの人がいるので、互いのやり取りも生じることになります。具体的には、現地の法人税申告書作成やレビュー、税務調査の立ち合いなどといった業務が含まれます。
IFRS(国際財務報告基準)については、かつては海外展開する上場企業のみの任意適用でしたが、今はその要件が緩和され、IFRSを採用する企業が増えてきています。IFRSを導入するクライアント企業が増えれば当然、その企業を担当する税理士は英語のスキルが求められるようになります。
海外進出する企業の場合、海外赴任する社員もいます。そうなると法人だけでなく、そこで働く役員・従業員についても、日本だけでなく現地における税務関連の様々なサポートが必要です。具体的には以下のような内容になります。
「移転価格」とは、多国籍企業のグループ企業間での取引価格のことです。自グループ内であっても、現地の税法制や税率をしっかりと把握しておかないと、税金を余分に払ったり二重に課税してしまう問題が生じる場合があります。グループ企業間の国際取引に際しては、移転価格についてコンサルティングを行う専門職が必要です。移転価格リスクの評価 ・移転価格調査への対応 ・租税条約に基づく相互協議の支援 ・事前確認の申請などを行います。
国際資産業務は、「国外転出時課税制度」や「財産債務調書制度」といった新制度により、国外に資産を保有したり、移転させたりするのに対して生じる所得税、相続・贈税などの課税に伴う諸問題を解決する業務です。
実際に海外に駐在し、現地法人を立ち上げる仕事です。また、既にある現地法人のサポートや撤退の支援なども含まれます。企業買収・企業再編・合併に関するコンサルティング業務 や、 国際事業戦略・投資形態に関するコンサルティング業務など、業務の幅が広いのが特徴です。
日本に進出してくる外国法人に向けて、日本の税制についての質問や申告業務を英語で対応する業務です。
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それでは、英語スキルが高い税理士は一体どんな法人や企業で活躍できるのでしょうか?順番に見ていきましょう。
税理士事務所や税理士法人の中では、やはり「Big4」と呼ばれる、PwC税理士法人、デロイトトーマツ税理士法人、KPMG税理士法人、EY税理士法人の大手税理士法人の4社が、グローバル展開する大手企業の多くをクライアントに持っているため、英語を使う業務が頻繁に求められます。税理士として、国際税務を中心に高度な英語力が必要とされます。また、英語でのコミュニケーションも普通に行われるため、スピーキング能力も求められます。
ただし、中堅の税理士法人や個人の会計事務所でも国際税務を強みとしているところも増えているため、英語に関わることは十分に考えられます。
一般事業会社の場合は先ほど述べたようなグローバル展開する大手企業だけでなく、中小企業やIPOを目指すベンチャー企業でもIFRSを導入する企業が増えてきました。そのため、社内の経理・税務部門においてもIFRSに関連した業務が発生し、英語ができる税理士の需要は今後ますます高まってきます。また、以前は大手企業だけの話でしたが、最近は小さな会社でも海外との取引が当たり前に行われるようになってきており、英語ができる企業内税理士が必要とされています。
コンサルティングファームは税理士のニーズが高いとともに、税理士からの注目も高まっている職場となっています。
FAS系のコンサルティングファームはクライアント企業のM&A業務のコンサルティングを行いますが、海外の企業や海外拠点を持つ企業のM&Aにおいて特に英語が使える税理士のニーズが高いです。士業や一般企業の管理部門では実現しづらいような高年収がもらえる場合もあるため、人気が集まっています。
このように年々、英語ができる税理士の需要が増えており、この勢いは今後加速していくでしょう。
英語に自信が無い税理士にとって負担に感じるかもしれませんが、現状英語ができる税理士が大幅に足りていないことを考えると、英語を勉強しただけで他の税理士と大きく差を広げられる可能性もあります。
今までのように、単なる記帳代行や出納管理、申請代行だけでは、他の税理士と差別化するのは難しく、また会計ソフトも充実してきていることから、税理士の供給過多という状態が起こりやすいです。
それでも、英語ができるだけで一気に業務の幅が広がるので、ぜひ英語に苦手意識がある方でも勉強されることをおすすめします。学生時代に英語で挫折した人も、今はオンライン上で先生と話せたり、英語の配信動画や海外ドラマなど、英語学習の環境がとても充実しているので、コツコツと日々勉強時間を確保することで、一気に英語が得意になるかもしれません。
また、業務上でどうしても英語を使わないといけない環境に身を置くことが、一番のレベルアップ方法と語るビジネスマンも多いです。
税理士の方で英語を活かせる業務や、英語のスキルアップに繋がる環境を探している場合は、ぜひ税理士の転職に特化した転職エージェントであるヒュープロで情報収集することをオススメします。
会計事務所への転職事情については下記のコラムでも詳しく紹介していますので、是非チェックしてみてください。
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本記事は「ジパングアウトソーシングサービス株式会社」に監修いただきました。ジパングアウトソーシングサービス株式会社は、東京都中央区にある、会計・経理・財務・税務、人事労務アウトソーシング業務を行う企業で、Big4会計事務所の一つである「アーンストアンドヤング(EY)」出身者を中心とするメンバーによって2013年に設立されました。
今回の記事で取り上げたような、英語力のある税理士の就業先としてもオススメな企業です。なぜなら、クライアントのほとんどが外資系企業であり、必然的に英語に触れる機会が多くなるからです。
さらに、国際会計基準やExpats課税、国際税務論点などといった専門性が高く、一般的な会計事務所では経験できないような業務を担当することも可能です。働きやすい環境の整備、研修や資格手当などプロフェッショナルを育てる制度の充実にも力を入れているため、幅広い方にマッチする職場であるといえます。
ジパングアウトソーシングサービス株式会社について、詳しい情報を確認されたい方は、以下より事務所様のサイトをご覧ください。
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