経営戦略は企業経営に欠かせません。しかし、知識なしに経営戦略を立案し、策定することは不可能です。経営戦略の知識を得るためにはさまざまな方法がありますが、そのひとつに資格の取得があります。では、どのような資格であれば、経営戦略に役立つのでしょうか。今回は、経営戦略に役立つ資格について解説していきます。
経営戦略とは企業が、中長期的にどのような成長をさせるかといった方針を定めるものです。企業が競争環境の中で、自らの経営目的・経営目標を達成するための方針や計画全般を意味します。
まず、自社事業の基本的な構成・枠組みの理解を深めます。それを踏まえて、企業の長期的ビジョンと短期的なミッションを明確化させます。ビジョンが決まったら、自身の企業がどのような市場に参入し、どのように競争優位性を確立するかを決めます。それに沿って「市場」「顧客」「商品・サービス」といった要素を自社の提供する価値や競合他社との差別化するための戦略を立てます。ここまでが、経営戦略の一連の流れです。
経営戦略は企業にとって非常に重要な役割となります。経営戦略の目的は、現状を分析して将来の予測をもとに行動を明確化し、社員に共有することです。経営戦略を行わないと、会社がどのようになっていけばいいのか社員が理解できず、市場の変化に適応できません。そうなると会社の存続危機にすらなりえます。資金調達、人材の確保、企業の成長に応じた組織体制の見直しなど、企業の成長にも不可欠です。ビジョンを示しながらも、実現可能なレベルまで落とし込めるように念入りに経営戦略を立てる必要性があります。
経営戦略と似た言葉で、経営企画があります。経営戦略は上記で説明した通り、中長期的に成長させることを考え方針を定めます。経営企画は、経営戦略で立てた方針を実務に落とし込む仕事です。具体的な予算や目標値、実現可能な方策やプロセスを設定して、各担当部署に実行させる役割を担います。どちらも会社にとって必要不可欠な業務です。
MBAは、正式には「Master of Business Administration」といいます。日本語に訳すと「経営管理修士」「経営学修士」です。専門職大学院で専門職学位課程を修めれば「経営管理修士」の学位を得ることができ、大学院で修士課程を修めれば「経営学修士」の学位を得られます。
MBAを取得するカリキュラムにおいては、ビジネスリーダーに必要となる企業経営の実践的な知識を習得することができます。経済学、法律学、情報・マーケティング、統計学、財務会計、人的資源管理といった幅広い分野を学べるので、「スペシャリスト」ではなく「ゼネラリスト」として企業経営全体を見渡すことができるようになるのです。また、これらの科目は座学として学ぶだけではなく、クラスメイトの前でプレゼンテーションを行ない、現在活躍している経営者との意見交換もする場が設けられるので、実践力が身につきます。
公認会計士は国家資格であり、監査業務とはじめ税務業務、コンサルティング業務に関する知識を得ている証明になります。
監査業務とは、公認会計士の独占業務です。企業の決算書を第三者の目で確認し、専門家の立場として意見する業務のことをいいます。また、公認会計士は企業の経営戦略を立てる際に支援をするかたちでコンサルティング業務も行うスキルも兼ね備えています。
自分自身が在籍していない会社の経営戦略の策定に関わることができるほどのスキルをもっているのですから、自社の経営戦略の策定に活かせないわけがありません。
公認会計士には受験資格がなく、大学院での単位取得や論文によって一部科目免除の場合がありますが、誰でも受験することが可能となっています。必要な勉強時間が2500~5000時間となっていて受験資格はありませんが、数年かけて勉強しなければなりません。
中小企業診断士は、中小企業を中心に経営戦略についての診断やアドバイスを行う知識を証明できる国家資格です。
中小企業診断士の試験に合格するためには、1次試験に筆記試験を、2次試験に筆記と口述試験をクリアしたうえで、実務補習を受けるか診断業務に従事するなどの段階を踏まなければなりません。
ただ、中小企業診断士の資格を取得できれば、自然と経営に関する知識を身につけることが可能です。また、経営について横断的視野による考え方もできるようになり、これはビジネスにおいて非常に大きな強みとなるでしょう。
中小企業診断士は受験資格はなく、年齢、学歴等に関係なく誰でも受験できます。ただし、1次試験も2次試験も年に1回しか実施していません。合格のためには勉強の時期を合わせなくてはならなかったり、勉強時間も800~1000時間は必要となってくるため、1回逃すと諦める人が多かったりします。
ビジネス統計スペシャリストは、データ分析をするスキルと、その分析結果を正しく理解して応用する能力が身につく資格です。
経営戦略を策定する際は「正しい情報を集める」ということがとても重要になってきます。このビジネス統計スペシャリストの資格があれば、売上などのデータをもとに経営戦略を考えるといったような実際のビジネスに応用しやすい勉強ができるので、とても役立つでしょう。似ている資格に「ビジネス数学検定」というものもあります。
ビジネス統計スペシャリストには、基礎レベルと上級レベルの2つがあります。基礎レベルでは、Excelのグラフ機能などを用いてデータの分析を行う基本的な科目が試験内容となっています。
一方、上級レベルは、Excelの分析ツールを用いて確率分布や回帰分析・相関分析といった統計分析理論を活用しながらビジネスデータを分析する実践に近い科目が試験内容となります。
ビジネス統計スペシャリストは情報を集めることに重点を置いた資格となっているため、経営戦略における方針を決める点では少し不足する点もあります。資格の中では取りやすいほうなので、同時並行で経営戦略の勉強をする必要があります。
「会計」という用語がはいっていますが、ビジネス会計検定は簿記とは異なる資格です。簿記は税務申告に必要な財務諸表を作成する能力が問われる資格です。
一方、ビジネス会計検定は、財務諸表を正しく読み解いて、経営に関するデータを分析する能力が問われる資格といえます。
財務諸表が分析できるようになれば、企業分析に必要となる情報を得ることができ、経営戦略の策定に応用することが可能です。3級から1級までの3段階の難易度がありますので、ますは3級に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ビジネス会計検定3級の合格のための勉強時間は50〜80時間くらい必要とされていて合格率は60%前後と比較的受かりやすくなっています。それに対して1級は150時間以上必要とされていて、合格率は20%前後です。3級に比べて1級は合格難易度は上がりますが、他の資格と比べたら1級も比較的取りやすい検定となっています。
ビジネス会計検定は財務諸表を読み解く力が身に付きます。そのため会社の今の現状を読み解く能力がつきます。経営戦略は先を見通すことも必要になるため、すぐに即戦力になれるわけではないことには注意しましょう。
企業経営アドバイザーは地域企業の発展のために、経営・事業の観点から診断し、必要に応じて様々な専門家との連携を図りながら、持続的な成長のための適切な処方箋を出すことのできる専門家です。
試験に関しては、企業経営に関する専門知識を問う「知識科目」と企業の事業内容や成長性を適切に評価する手法を問う「実践科目」で構成されています。「知識科目」は企業財務、企業法務、生産管理の3科目でそれぞれ基礎知識が問われるので難易度はそこまで高くないです。「実践科目」は事業性評価という科目1つで事業計画や経営デザインシート、SWOT分析などが試験で問われます。必要な勉強時間は200時間と言われていて、比較的合格しやすいです。
企業経営アドバイザーの資格は、科目合格制で一気に合格する必要はありません。ただし注意しなければならないのは、合格した日から1年で科目免除がなくなってしまうため、1科目合格した後1年以内でもう1科目取る必要があります。
公認会計士の資格を持ってると「会計事務所」「税理士事務所」などの職場にも需要があります。その他の紹介した資格等も経営戦略だけでなく、様々な職場・業務に活かせることができます。
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経営戦略に役立つ資格を6つご紹介しました。経営戦略を策定するためには、まずは企業データを収集できることが重要になります。そしてそのデータを正しく読み解き、分析できる能力も必須です。このような情報がなければ、経営戦略を考えることができません。あるいは、正しい情報を参考にせず立てた経営戦略は、あまり意味のないものとなってしまいます。
こちらでご紹介した資格を取得するために勉強をした内容は、すべて経営戦略の策定に活かすことができるものばかりです。資格に合格できれば、経営戦略の策定に関するスキルをもっている証明にもなり、転職にも有利に働くでしょう。