士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

不動産鑑定士試験の制度概要に関して!実際の合格者が解説します!

税理士 井上幹康
不動産鑑定士試験の制度概要に関して!実際の合格者が解説します!

不動産鑑定士試験の受験生には受験専念の方もいれば、働きながら勉強されている社会人の方も多くいます。

私自身は開業税理士として働きながら勉強して合格しました。今回は、そんな私自身の実体験も踏まえて、不動産鑑定士試験の制度概要、向いている方、勉強法等について解説していきます。

短答・論文の2段階式試験

不動産鑑定士試験は、➀短答式試験及び②論文式試験からなる2段階式試験で行われます。

➀短答式試験は年1回5月にマークシート方式で実施されます。試験範囲は、「不動産に関する行政法規」と「不動産の鑑定評価に関する理論」の2科目です。

②論文式試験は年1回8月に3日間連続で実施されます。試験範囲は、「民法」、「経済学」、「会計学」の教養3科目及び「不動産の鑑定評価に関する理論」、「不動産の鑑定評価に関する理論(演習)」の専門2科目と非常に広範囲に及びます。

短答式試験に合格するとその後2年間は短答式試験が免除されます。

具体的には、短答式試験合格年を含めると論文式試験には計3回チャレンジできます。惜しくも3回で論文式試験に合格できない場合、再度短答式試験からやり直しとなってしまいます。

このような試験制度から、2、3年程度腰を据えて勉強に専念できる大学生等が社会人受験生に比べてどうしても有利であるというのは否めないですが、直近の合格者の属性を見ると社会人受験生でも合格されている方は意外と多いです。

不動産鑑定士試験の制度が異様な合格者の属性等の詳細は、国土交通省HP不動産鑑定士試験のページリンクでご確認ください。
参考:国土交通省 不動産鑑定士試験

不動産鑑定士試験に向いている方

不動産鑑定事務所をはじめとした不動産業界にお勤めの方や宅建試験に合格されている方であれば不動産に関連する基礎知識を持っているため、不動産鑑定士試験の勉強に入りやすいと思われます。

しかし不動産に関連する基礎知識のない異業種で働いている方でも不動産鑑定士試験にチャレンジして合格することは十分可能だと思います。

というのも、不動産業界での実務経験のない方でも不動産鑑定士試験に積極的にチャレンジすることを促す目的で試験問題の見直しを行うことが以下の通り国土交通省から公表されており、短答式試験や論文式試験で実務経験がないと回答困難な問題が減少されたりしているためです。

不動産鑑定士試験実施の改善について

具体的には、短答式試験及び論文式試験について、学生等の若年層の方や不動産分での> 職務経験のない方にも積極的にチャレンジしてもらうため、そうした受験者でも基本的な知識・理論及びその 応用能力を十分に身に付けていれば短期合格が可能となるよう、試験問題の見直しを行います。

また、試験関連情報の公開について、受験者が必要な情報を容易に入手できるよう、これまで以上に充実を 図っていきます。この方針に基づき、試験関連情報の公開については、平成 27 年度から速やかに実施し、試験問題の見直しについても、
平成 28 年度(平成 28 年試験)より順次実施していく予定です。

出典:国土交通省HP「不動産鑑定士試験実施の改善について(平成27年6月26日・国土交通省土地鑑定委員会)より一部抜粋

私が過去問を解き、実際に本試験を受験した感覚からしても、試験問題の見直し前と比べて明らかに見直し後の方が難易度は易化していると感じられ、努力した分がしっかりと結果につながる試験になってきていると思います。

短答式試験の勉強法

独学か専門学校を活用するか

私自身は、短答式試験は完全に独学で合格しましたが、勉強の時間効率を重視する観点では、多少コストをかけてでも専門学校を活用する方がよいでしょう。

行政法規の勉強法

短答式試験は、「不動産に関する行政法規(以下、行政法規)」と「不動産の鑑定評価に関する理論(以下、鑑定理論)」の2科目ですが、行政法規で出題範囲とされている法規の数が多いため、行政法規を苦手とされている方が多いと思います。

私自身が過去問を解いき、実際に本試験を受験した結果からしても、行政法規の方が鑑定理論よりも難しい印象で、点数も低かったです。

宅建試験の合格者であれば宅建試験で学習した行政法規と出題範囲が一部かぶっているため比較的スムーズに勉強できると思いますが、そうでない方は、行政法規で足切りに合わないように注意が必要です。

具体的には、マークシート方式なので過去問で出題された問題と同様の選択肢が出題される傾向が高いため、過去問を繰り返し解くことで選択肢を絞ることができるようになると思います。

鑑定評価の勉強法

短答式試験の鑑定理論は、不動産鑑定評価基準・留意事項(以下、基準・留意事項)を読んで内容を理解できるレベルであれば高得点をとりやすいです。

しかし、論文式試験では基準・留意事項を読んで理解しているレベルを超えて、暗記して書けるレベルにもっていく必要がありますので、短答式試験の勉強の段階から論文式試験を見据えて基準・留意事項の暗記作業も進めていくと良いと思います。
出典:短縮URL

論文式試験の勉強法

独学か専門学校を活用するか

論文式試験はとにかく科目数が多く、出題範囲が非常に広いため、独学でやるには勉強時間が十分に確保できる受験専念の方以外はあまりお勧めしません。

私自身も専門学校を活用しましたが、勉強の時間効率を重視する観点では、多少コストをかけてでも専門学校を活用する方がよいでしょう。

ただし、独学でも論文式試験に合格されている方はおられるため、専門学校を活用しないと100%受からないとは言い切れません。

論文式試験の全体的な勉強方針

論文式試験の全体的な勉強方針としては、どの科目も基本論点はバランスよくしっかり勉強して足切りを防ぎ、得意科目を1つでも増やすといった具合に勉強していくのがいいと思います。

ご参考までに、私の各科目別の大まかな勉強方針を以下にご紹介します。

科目
勉強方針

■民法(満点100点)
これまで民法の勉強を試験勉強としてはしたことがなかったため、論点の把握と論症例の暗記に苦労した科目。

基本論点の論症例は最低限暗記して、あとは答練や過去問演習で論点抽出漏れを減らすトレーディングを繰り返して最低限6割は得点できるように心がけて勉強した。

■経済学(満点100点)
理系出身で数学が得意だったので、経済学の計算やグラフ作成には苦手意識はなかったが、経済学の理論的な部分がどうしても理解が乏しく記述問題に苦労した科目。

経済学は過去問を見ても年によって難易度に大きな波があるため、あまり勉強時間をかけすぎず、最低限基本論点や用語の定義を理解・暗記して足切りに合わないように心がけて勉強した。

■会計学(満点100点)
日商簿記1級や税理士試験の財務諸表論で学習経験のある科目。
過去問や答練でも安定して高得点が取れていたので本試験でも得点源にすべく、毎日会計基準の論点暗記を進めて8割以上得点することを心がけて勉強した。

■鑑定理論(満点200点)
満点200点と他の科目の倍であることもあり、論文式試験における重要性が極めて高い科目。

基準・留意事項の十分な暗記と記述量が求められるため、毎日暗記と記述の勉強をして最低6割は取れるように心がけて勉強した。

■鑑定理論(演習)(満点100点)
電卓を使う計算科目。
日商簿記検定や税理士試験で電卓操作は慣れていたこともあり、本試験で得点源にすべく、過去問演習、答練を繰り返し解き、本試験では9割以上を得点することを心がけて勉強した。

私自身は、現役税理士としてのアドバンテージを生かして、会計学と鑑定理論(演習)を得点源(得意科目)として戦いました。

ほかにも例えば、行政書士試験合格者であれば民法は得点源になると思いますし、経済学部出身の方であれば経済学は得点源になりうると思います。

このように、論文式試験の出題範囲が非常に広い分、各受験生が過去に学習してきたものが論文式試験の対策上アドバンテージとなることが意外と多いと思います。

おわりに

不動産鑑定士試験というと、上記試験問題の見直し前は不動産鑑定実務を積んでいる方でないと解けない問題も多く、論文式試験の範囲が非常に広いこともあり、なかなかチャレンジしにくい超難関資格試験でした。

しかし、上記試験問題の見直しにより、今は不動産業界以外の異業種の方などにもその門戸は開けてきていると思います。

不動産鑑定士試験に興味がある方は、まずは短答式試験にチャレンジしてみてその勉強内容に興味が持て、勉強を継続できるかなどを試してみるのもいいと思います。この記事を読まれた方にとって何か1つでも得るものがあれば幸いです。

この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:用語解説

おすすめの記事