上場企業と非上場企業は明確に違うことは分かりやすいと思いますが、上場企業の中にも上場区分と呼ばれる分類があります。今回は上場区分ごとの基準や違いを解説していきたいと思います。
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上場会社は、下記の通り区分されています。
1.東京証券取引所(TSE)
東証一部
東証二部
東証マザーズ
JASDAQスタンダード
JASDAQグロース
Tokyo Pro Market
2.名古屋証券取引所(NSE)
名証一部
名証二部
3.札幌証券取引所(SSE)
4.福岡証券取引所(FSE)
日本では東京証券取引所を略して東証のマーケットが、名古屋証券取引や札幌証券取引所と規模が大きく異なっており、通常上場といえば東証への上場を意味することが多いです。
上場会社は上述のとおり、たくさんの上場区分に分かれていますが、どんな会社も東証一部に上場できるわけではありません。東証一部に上場できれば注目を浴びることができ、資本市場からより大きな資金を調達できる可能性が高まりますが、上場区分ごとに明確な基準が存在しています。
複数の基準がありますが、主に株主数2,200名以上、時価総額250億円以上、事業継続年数3年以上、連結純資産の額が10億円以上、2年間の利益総額が5億円以上または時価総額500億円以上、といった基準が存在します。なかなかハードルが高い基準とも言え、ベンチャー企業などはまずはより基準の低い東証マザーズで上場し、成長していった過程で東証一部への鞍替えを目指すケースが多いです。
また、数字の基準を満たせればすぐに東証一部へ上場できるわけではもちろんなく、東証による厳密な審査にパスする必要があります。審査内容は「継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること」「事業を公正かつ忠実に遂行していること」「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること」「企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること」など内容が定められており、より詳細な内容は新規上場ガイドブックに内容が記載されています。
東証一部よりも上場しやすいのがJASDAQです。JASDAQの主な上場基準は、見込時価総額5億円以上、純資産の額2億円以上、直近1年間の利益が1億円以上または時価総額が50億円以上となっています。JASDAQへの上場も東証一部と同様に審査がありますが、東証一部よりも緩やかなものとなっています。
例えば企業の存続性に関する審査では、「事業活動の存続に支障を来す状況にないこと」が必要であり、東証一部のように安定的な収益基盤といった文言は出てきません。東証一部よりは規模は小さいが、ITベンチャーのように成長性が高くない、一方で堅実に利益を出しているといった老舗企業がJASDAQの上場区分を選択するケースが見られます。
多くのITベンチャー企業はまずは東証マザーズへ上場するケースが多いです。もちろん、LINEのように規模が大きい会社は東証マザーズではなくダイレクトに東証一部に上場する場合もあります。東証マザーズの主な上場基準は時価総額10億円以上、取締役会を設置してから1年以上の事業継続、と基準としては東証一部、JASDAQと比較して基準が少なめです。
東証マザーズを目指すような成長企業は赤字であるケースも多く、成長性を評価されれば、赤字でも東証マザーズであれば上場可能です。もちろん、直近の成長だけでなく、将来の成長可能性を厳しく見られるため、一過性のブームで成長しているような会社は審査に受かることは難しいでしょう。
上場会社となるためには上場区分ごとに基準をクリアし、厳しい審査にも通らなくてはなりません。その先に待っているものは資金調達の容易さと知名度向上という効果です。一方、上場にはメリットだけではなく、コスト増加や会社運営を厳しく見られるといった一面もあります。上場会社は、東証には決算短信、金融証券取引法により有価証券報告書の提出が義務付けられています。特に有価証券報告書には、公認会計士の監査報告書が必要であり、監査コストもかかってきます。
また、大きな赤字を計上してしまった場合など、取締役などの責任者は株主から代表訴訟といった訴訟をされるリスクもあります。非上場企業であれば財務情報は官報など限定的な範囲での開示に留まりますが、上場企業は結果としての財務諸表が全世界から見ることができてしまいます。
ライバル企業もその情報を元に分析し戦略を立てることもできるため、自由に競争していきたいと考える経営者は非上場の区分を選択するケースもあります。あくまでも東証一部を目指すのか、東証マザーズから上場するのか、もしくは非上場を選ぶのか、上場区分の選択は経営者や株主の重要な意思決定となります。