国際会計基準で計算が求められている包括利益。国際会計基準に関わりのない会社にお勤めの場合、経理担当者でも計算方法がわからないという方は多いのではないでしょうか。包括利益は、お馴染みの当期純利益にその他包括利益を足したもの。では、その他包括利益とは何でしょうか?今回は、包括利益に詳しくない方に向け、簡単に解説していきます。
包括利益とは、純資産の変動額のうち、持ち分所有者との直接的な取引で得た利益ではない利益を含んだ利益のことです。為替の影響や所有している有価証券の動きの影響を受けるため、算出している時点では未確定の利益(含み益)・損失(含み損)を計算に入れた利益、将来的な数値も見込んだ、まだ現実として発生していない利益であると言えます。
日商簿記の場合、1級の試験範囲に含まれる包括利益です。組換や調整が必要となるため計算が複雑になりがちで、受験の際に苦しめられた方も多い部分でしょう。そのくらい、会計の中でも複雑な計算が必要となってきます。
包括利益は、国際会計基準にて算出が求められています。日本では、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」に記載されている考え方です。しかし、日本の単体決算の会社の場合算出が必須ではないため、今まで関わってこなかったという会計関係者の方も多いのではないでしょうか。知識として知ってはいても、実際に会社で使用したことはないという方もいるはずです。
包括利益は、連結財務諸表を作成する際に必要となってきます。国際的な会計基準に合わせることを目的に、平成23年3月31日以降の事業開始年度から日本にも導入されました。
包括利益は、前述の通り未確定の含み益・含み損を見込んだ利益。この未確定の部分は、市場の動向により金額が左右されます。一方、当期純利益は、一会計期間の間に企業が得た利益・実際に発生した利益を表しています。そのため、包括利益は当期純利益だけの場合に比べ、長期的な視点から市場の動きも含んだ利益を把握する際に役立てられています。
包括利益は、簡単に言ってしまうと「当期純利益+その他包括利益」で求められます。当期純利益とは、一会計年度の利益から法人税を含んだすべての費用を差し引いた額です。つまり、企業が最終的に一会計年度で事業活動によって稼いだ利益のことです。実際に発生した利益額とも言えます。その当期純利益に、まだ未確定の含み益・含み損を足したものが包括利益となります。
包括利益を理解する上で重要となってくるのが「その他包括利益」です。包括利益のうち、当期純利益に該当しない利益がその他包括利益となり、中にはこれらのものが含まれています。
・その他有価証券評価差額金
・繰延ヘッジ損益
・為替換算調整勘定
・退職給付に係る調整額
・土地再評価差額金
上記の中から、包括利益を今まで計算したことのない方にとってもわかりやすいその他有価証券評価差額を例に、その他包括利益について詳しく説明していきます。
その他有価証券評価差額とは、簡単に言ってしまえば会社が保有している有価証券を評価する際、取得価格ではなく時価で行うことです。期末の時点で時価がプラスであれば含み益が、マイナスであれば含み損が発生します。その額をその他包括利益の一部として、当期純利益に足していきます。
ここで注意が必要となってくる点は、過去もその他有価証券評価差額を含んで包括利益を算出している場合です。このときは、過去の含み益・含み損を考慮の上金額を組み替える必要が出てきますので注意してください。実際に包括利益を算出する際、詳しく勉強が必要となってくる箇所です。
その他包括利益も、その他有価証券評価差額と同じくまだ発生していない・これから発生すると考えられる含み益・含み損を考慮したものとなります。また、初心者向けのため上記からは省きましたが、持分法適用会社がある場合はそちらの金額も算出に加える必要が出てくるため留意が必要です。
包括利益を表す際、選ぶことのできる計算書の方式は2つ。「1計算書方式」と「2計算書方式」です。企業はこのどちらかを選ぶことになります。
それぞれの計算書方式には違いがあります。1計算書方式は当期純利益と包括利益を一つの計算書で表します。一方、2計算書方式は、それぞれ別の計算書で表すことになります。
包括利益は今の日本では国際会計基準を適用している会社をメインとして取り入れられている考え方ですが、今後日本でさらに広まっていく可能性もあります。日本の会計基準も年々改正が重ねられていきますので、日常的な情報収集を怠らないようにしましょう。