財務諸表の作成ルールや作成義務は会社法でどのように定められているのか、疑問に思う方も多いでしょう。財務諸表とは何かを理解するには、会社法など会計にまつわる法律への理解が必要です。今回は「税法」「会社法」「金融商品取引法」など、法律ごとに決算において作成する書類が異なることについて解説していきます。
「財務諸表」とは決算時に作成される「有価証券報告書」に含まれ、金融商品取引法が上場企業に対して金融庁への提出を義務づけている書類です。
財務諸表について説明する前に、日本には会計にまつわる法律が3種類あり、企業の規模や種類に応じて、決算において作成する書類の名前や種類がちがうことを押さえる必要があります。
日本において会計のベースになる法律と、決算において作成する書類の名前は次の通りです。
・(法人税法などの)税法:決算書
・会社法:計算書類等
・金融商品取引法:財務諸表
法人税法などの税法は法人に対して、税務申告書の提出時に「決算書」(次の4種類)の添付を義務づけています。
・貸借対照表
・損益計算書
・勘定科目内訳明細書
・株主資本等変動計算書
大会社でない法人や非上場企業は会計監査を行う義務がないため、税務申告が目的で会計を行うことが多く、上記3つの法律のなかでも税法のみが意識されるケースが大半です。
※大会社:資本金が5億円以上あるいは負債の総額が200億円以上の株式会社
会社法は株式会社・合同会社に対して「計算書類等」(上の4種類から成る「計算書類」+その他2種類の計6種類)の作成・株主総会への提出・作成日から10年間の保存を義務づけています。
計算書類
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
その他
・事業報告
・附属明細書
さらに、会社法は大会社に対しては、会計監査人による計算書類等の会計監査を義務づけています。会計監査を受ける場合は、会計基準にもとづいた計算書類等の作成が必要です。
上場企業は、金融商品取引法を遵守する必要があります。金融商品取引法は、上場企業などに対して「財務諸表」を含む「有価証券報告書」の作成・金融庁への提出と、会計監査人による財務諸表の会計監査を義務づけています。
財務諸表とは決算において作成する書類であり、次の5種類から成ります。このうち、企業の経営状態などを把握するのに特に重要な「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」を「財務三表」と呼びます。
決算日における資産・負債・資本を表す「貸借対照表」からは企業における資金調達と運用を、1年の利益・損失を表す「損益計算書」からは利益を生み出す仕組みを、「キャッシュフロー計算書」からはリアルな現金の流れを各々読み取り、企業の経営状況判断などに用います。
・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュフロー計算書
・株主資本等変動計算書
・附属明細票
金融商品取引法は、上場企業に対して「有価証券報告書」の作成・金融庁への提出を義務づけています。有価証券報告書は次のような内容で構成され、財務諸表はそのうち「経理の状況」に含まれています。
このように、決算において作成する書類には決算書・計算書類等・財務諸表の3種類があり、名前だけ聞いたことがある状態では区別がつきにくいかもしれません。
決算という同じタイミングで作成する書類ですが、準拠する法律・対象・提出先が次のように異なります。
財務諸表とは何かを考える際に、財務諸表と会社法のどちらもポピュラーであるため関連があるように思えるでしょう。厳密にいうと、会社法が作成などを定めているのは計算書類等で、財務諸表の作成を定めているのは金融商品取引法です。
計算書類等と財務諸表において、貸借対照表・損益計算書(・株主資本等変動計算書)は共通していますが、有価証券報告書(財務諸表を含む)はほかにも作る書類があり内容も膨大なため、計算書類等の作成よりも負荷が大きい傾向があります。
財務諸表とは、上場企業の場合、金融商品取引法が金融庁への提出を義務づけている「有価証券報告書」に含まれる書類であり、決算時に作成します。
財務諸表と決算書・計算書類等との違い、金融商品取引法と税法・会社法との違いを押さえ、法律にもとづいて必要な書類を準備できるようになりましょう。