シングルマザーの公認会計士として、多岐にわたり活躍されている松岡由起子先生。父親がいない状況で息子を育てることになった当時の心境や、公認会計士試験に挑んだ際の葛藤、現在の活動から今後のビジョンまで、HUPRO編集部が幅広くお話を聞いてきました。
ー学生時代はどんな学生でしたか?
一言で言うと勉強嫌いなギャルでした。中学生、高校生のときは特に夢もなく、オシャレとメイクをバッチリしてとにかく女子力を上げるために頑張っていました。(笑)
学校は好きだったので、朝6時半に起きて1時間半メイクして、学校に行って授業中はずっと寝て、授業後はサッカー部のマネージャーをやって、19時が門限で、家に帰ったらひたすらメールという感じでしたね。高校2年生の終わりぐらいには大学進学も考えていましたが、なんと高校3年生の始めに妊娠をしまして、そのまま絶対に産むと決めて、大学進学は諦めました。
ーすごい!急展開な学生生活ですね。そのままご出産されたのですか?
はい、高校3年生で無事出産し、その後はなんとか高校を卒業しました。妊娠中、ずっと家にいるので家事以外のこともしないとと思い、父親が税理士というのもあって、そのときに簿記という資格を初めて知りました。そこで試験勉強を始めて、高校3年生で日商簿記3級に合格しました。
その後、21歳のときに夫とは離婚をしまして、2年半の結婚生活は終わり、シングルマザーとなりました。実家に戻り、子育てをしながら父親の仕事を手伝い、父親と今後について話をする機会がありました。そのときに、シングルマザーで子どもを育てるということは時間の制限もあるし、単価の高い仕事をしないといけないと思い、そこで、息子が3歳になるタイミングで簿記の勉強を再開し、結果としては離婚してから2年半が経った24歳のときに、試験4回目にして日商簿記1級に合格しました。
ーシングルマザーとして働くために簿記1級を取得されたのですね。そのあとは普通に就職されたのですか?
最初は簿記1級を取ったので、それを活かして一般企業に勤めようと思いました。でも、子どもとの時間を最優先に考えたとき、自分である程度働く時間を決められるようにしたいと思いました。そして、すごく悩みましたが、公認会計士になって独立しようと考え、公認会計士を目指すことにしました。
父親は税理士なのに、なぜ会計士を目指したのかとよく聞かれるのですが、公認会計士を選んだのは、日本三大国家資格というのを知って純粋にかっこいいと思ったからです。(笑)
ちなみに公認会計士という資格を知ったのは簿記1級を勉強していたときで、それまでは公認会計士という仕事自体知りませんでした。(笑)
ー試験勉強で一番大変だったことは何ですか?
そもそもの『勉強方法』と『時間の効率的な使い方』が最初全くわからなかったことですね。
勉強を始めたときに自分が本当にできないことにびっくりして、とにかく暗記が苦手だったので、色々な方法を試しました。結果的に私の場合はとにかく紙に書くという方法に行き着きました。
あとは、時間の効率的な使い方について言うと、スキマ時間とスケジュール管理と時間貯金を意識していました。
『スキマ時間』については、電車での移動時間やトイレの待ち時間、お風呂の時間などを使って、その場に合わせて勉強に充てていました。
『スケジュール管理』は、毎週月曜の朝に1週間の予定を立てて、スケジュール帳に書いていました。効率良く全ての科目を勉強するためには、必要不可欠な作業なので、面倒くさくても、絶対にやったほうが良いです。ちなみに、私は1科目が終わるごとに手帳に書いた科目と時間を表す数字に丸印をつけて達成感を味わっていました。
『時間貯金』というのは私が勝手に言っていただけなのですが、子どもが風邪を引いたり、急な学校行事などで突然時間が必要になることもあるので、とにかく勉強は前倒しを意識してやっていて、前倒しの分を私は “時間貯金” と呼んでいました。子どもと遊ぶ時間も絶対に確保したいので、時間管理については、ストップウォッチを使って1時間単位で目標を設定するなど、本当に徹底してやっていました。
ー勉強しているときも子どものことが気になってしまって集中できないことはありませんでしたか?
子どもはもちろん気になりますが、夜の授業のときは自分の親に預けていたので、そこは信頼して、もし何かあれば電話の着信だけはわかるようにしていました。それよりも、子どもに寂しいをさせてしまい、親には負担をかけて見てもらっているからには、1秒たりとも無駄にできないという気持ちが強かったです。
ー仕事は選ばなくても子供を育てることはできると思いますが、そこまで頑張って会計士を目指すことができた原動力はどこから生まれているのですか?
とにかくカッコイイ母親になりたかったんですよね。シングルマザーなので、父親であり母親であるという両方の役割を果たしたくて、そのためには、子育ての時間も作りながら、かつ経済力もやっぱり必要だと思いました。17歳で産むと決めたのは私で、21歳で離婚すると決めたのも私で、その当時若かったからという言い訳は絶対に許されません。シングルマザーだからといって、子どもに肩身が狭い思いをさせたくない、子どもに不自由な思いをさせたくない、という強い思いがあったのが頑張ることができた一番の理由ですね。
私は子どものためなら頑張れますが、自分のためにはここまで頑張れないので、シングルマザーになったからこそ、公認会計士になれたと思っています。今は本当に努力してよかったなと思いますね。
ーでもやっぱり苦労は多かったのではないですか?
私自身は苦労というふうに思ったことは一度もないですね。試験勉強しているときなど、シングルマザーで子どもの面倒を見ながらで大変だね、と言われることが多かったのですが、でもそこで苦労したと言うと子どものせいで苦労したみたいじゃないですか。私はいつも喜んで大好きな子どものために幸せを感じながら子育てをしているので、もちろん勉強は大変でしたが、それを苦労と思ったことは一切ないです。
ー人生のターニングポイントはどこですか?
ターニングポイントは一つではなく、いくつもあると思っています。出産や離婚、会計士試験の合格はもちろんですが、まず友人にたまたま教えてもらわなかったら公認会計士という仕事すら知りませんでした。試験合格後について言うと、関西の監査法人の面接で全て落ちたから、東京の監査法人で働くことになって、東京で働いたことによって本の出版の話をいただけて、それがきっかけでメディアへの露出も増えてという形で、私自身本当に運が良くて恵まれていると思います。
ー公認会計士試験に合格して一番変わったことはどんなことですか?
出会う人も含めて、見える景色が全然違うなと感じています。今やっていることは公認会計士にならなかったら一切できていないことですし、監査法人時代の同期とは今も繋がりがあってたまにご飯に行ったりもします。みんないろいろな道に行かれていて、話を聞くとすごく面白いですね。
ー士業の強みは何だと思いますか?
専門的な知識があることと、信用力が高いことだと思います。士業の資格があることで、転職時や産休明けでも給与が下がるケースが少ないですし、信用力に関しては、もちろんビジネスが成立するかしないかはお互いの考えや相性もあると思いますが、会計士という資格があることで、初対面でも不信感を抱かれることは少ないと思います。同じ話をしても、士業の資格を持っている人が話をした方が、資格を持っていない人と比べてやはり信用度が違うのかなと思います。
ー今後のビジョンを教えてください。
女性の手助けができる会計士になりたいと思っています。今現在も含め、今まで本当にたくさんの人に支えられてきたので、これからは私も人のことを支えられる存在になりたいです。
私自身シングルマザーとして今まで生きていて、同じような境遇の人の力になれるような存在になりたいと思っています。そのためには、まずは自分のことを隠さずにさらけ出さないといけないなと思って、過去には『高卒シンママ会計士』という本を出版しました。
独立して、もうすぐ3年経つのですが、ようやく事務所での仕事も慣れてきたので、ちょうど今年ぐらいから何か動きたいなと思っていて、私自身の経験を活かして、具体的にどういうふうにやっていこうかと色々と考えています。
ー昨年は公認会計士としては初めてのミセス日本グランプリにも選ばれたと伺ったのですが。
はい、有難いことに賞を頂けて、今後は私にしかできないことをしたいと思っています。自分が得意なことを掛け合わせることで希少価値が生まれるので、それがいくつあるのかが大事だと思います。せっかく賞を頂けたので、ミセス日本グランプリを獲得した公認会計士として、そこは活かした活動をしたいですね。色々ありますが、やはり私は女性の方に元気を与えられる発言力や行動力を持ちたいと思っています。
ー親としてはどんな母親でいたいですか?
子どもにとって自慢の母親であり、子どもから私が母親でよかったと思ってもらえることが一番嬉しいですね。また、教育については、自由にはさせているけど、放任は絶対にしないと決めています。子どもとは何でも話し合える関係でずっといたいですね。
ーいま公認会計士を目指している方、もしくは今後目指す方に向けてメッセージがあればお願いします。
一番伝えたいのは、公認会計士になるという道を選んだ自分を好きでいて欲しいということですね。あとはモチベーションが下がりそうになったときは、ぜひ、目的、目標、手段をそれぞれ紙に書き出してみてください。
私が勉強していたときは、目的が独立で、目標は会計士になること、そしてその手段が勉強でした。目的は皆それぞれあると思いますが、その目的を絶対に貫くという強い気持ちがあれば、その手段として、自ずと勉強するモチベーションは維持できると思います。
勉強している人って本当にかっこいいと思うので、心から応援しています。
ー本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
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