得意先が倒産するリスクに備えて、その損失額を見込んで、引当金として計上する貸倒引当金。税務は基本的には会計処理に準じた取扱いがなされますが、この貸倒引当金は会計上と税務上で取扱いが異なる部分があります。今回は、この貸倒引当金の会計上と税務上の違いを解説します。
会計上の引当金は、将来の損失の原因が過去に起因する場合、発生の可能性が高く、合理的に見積もり可能なら、当期の負担に属する部分は当期の費用とすべきという期間損益計算の観点から成り立ちます。
その引当金のうち、金銭債権(受取手形、売掛金、貸付金等)に該当するものが貸倒引当金です。
貸倒引当金は、会計上の目的は、費用収益対応の原則から適正な期間損益計算を行う趣旨で計上されます。一方で税務は会計処理に準拠するという立場をとりながらも、貸倒引当金のように見積りで算定するものは、客観性に乏しく恣意性が介入する余地があります。そのため、公平な課税を目的とする税法の立場上、計上方法を独自で定めています。ここに両者における乖離が生じることになります。
貸倒引当金の会計処理は、金銭債権を「一般債権」、「貸倒懸念債権」、「破産更生債権等」の三つに区分し、その区分ごとに「貸倒実績率法」、「キャッシュフロー見積法」、「財務内容評価法」のいずれかの方法を適用し、金額を算定します。貸倒引当金の計上は、「洗い替え法」か「差額補充法」により貸借対照表の負債の部に計上されます。
経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権で、貸倒実績率法により算定されます。
経営破たんに至ってはいないものの弁済に重大な問題が生じる、またはその恐れがある債権で、その債権の状況に応じて、キャッシュフロー見積法か財務内容評価法のいずれかを選択適用し算定されます。
経営破たんした債務者の債権で、財務内容評価法により算定されます。
債権の全体、または同種・同類ごとに過去2~3期の貸倒実績の平均値から算出された実績率を乗じて算定する方法です。
将来のキャッシュフローについて、当初の約定利子率で現在価値に割り引いた金額の総額と債権価額との差額を貸倒見積高とする方法です。
相手の支払い能力を考慮し、債権額から担保の処分見込み額、保証による回収見込み額を引いた金額を貸倒見積高とする方法です。
貸倒引当金を貸借対照表の負債の部に計上するには、洗い替え法と差額補充法とがあります。洗い替え法とは、前期に繰り入れた貸倒引当金を戻入れて収益に計上し、今期の貸倒引当金を費用に計上する方法です。一方差額補充法は、前期と当期の貸倒引当金の差額のみを費用として計上します。
税務上の貸倒引当金は、金銭債権を回収不能の可能性が極めて高い債権を「個別評価金銭債権」とし、それ以外の債権を「一括評価金銭債権」とに区分し、それぞれの繰入れ限度額を定めています。
個別評価金銭債権は、金銭債権の種類ごとに繰入れ限度額が定められています。
一括評価金銭債権については、原則としては、過去3年間の貸倒損失発生額をもとに算定した実績繰入率による方法となります。
ただし中小法人等については、特例として業種ごとに定めた法定繰入率による方法も認められています。
実績繰入率を簡略すると、過去3年間の貸倒損失の年平均を過去3年間の金銭債権の年平均で割って求めます。
中小法人等が特例として適用する法定繰入率は業種ごとに以下のとおりとなります。
上述のとおり貸倒引当金には、会計上と税務上に違いがあります。これを決算上はどう取り扱うかというと、税務申告書の作成は、決算書作成後となるため、両者の違いは税務申告書上で申告調整として処理します。
なお、実務上、中小法人では経理事務の簡略の観点から、税務上の特例による法定繰入率で算定された貸倒引当金を決算書上に計上し、申告調整は行わない方法がとられることが多いようです。
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