監査法人で働いていると、企業の規模や個人の実力にもよるものの、働き始めて数年ほどたった頃にインチャージを経験することになります。では、監査法人のインチャージとは何なのでしょうか。今回は、監査法人で経験をすることになるインチャージとは何なのかについて解説していきます。
インチャージとは、簡単に言うと「現場責任者」です。ほかにも「主査」または「主任」と呼ばれることもあります。インチャージを任されると、単に調書を作成するだけが仕事ではなくなります。周りのスタッフに対して指示をだし、調書のレビューも行なうことになるので、とても大変です。また、案件の規模次第では、監査計画や監査資料の作成までを一括で管理しなければいけなくなる場合もあります。
監査法人でのインチャージの経験は、常にプロジェクトの様子を気にかけつつ、自分の調書も作成することになるので、きつい仕事だと感じるかもしれません。しかし、このインチャージを経験することにより、会計士としては大きく成長することになるでしょう。プロジェクト全体を俯瞰し、管理をすることができる能力が身につくので、中間管理職レベルの能力が身につくともいえます。そのため、転職を希望しているのであれば、市場価値が高まったのだと考えていいでしょう。若さという強みがさらにあれば、さまざまな会社から引く手あまたな状況になるはずです。
実際のところ、いつインチャージを任せてもらえるのかというのは、勤めている企業の規模や、クライアントの規模によります。大手クライアントの案件の場合は、規模がとても大きいので、たとえマネージャーにまで昇進していたとしても、インチャージの経験がないという人も多くいます。そのため、インチャージをしていないから自分の実力がないということではありません。
監査法人を転職するのであれば、最低でもインチャージを経験しておいたほうが良いという人もいます。しかし、一概にそのようにはいえないという考えの人もいます。今さきほどお話したように、本人の実力ではない事情により、マネージャーになってもインチャージを任せてもらうことができないというケースもあるからです。そのため、インチャージが必要かどうかというのは、転職先を考慮して考えた方がいいといえます。
例えば、コンサルティング会社や投資銀行などに転職をする場合は、年齢が若いことが圧倒的に有利だと考えられます。そのため、転職を決意した段階でインチャージを経験していなくても、とにかく若いうちに転職をした方がいいのです。そして、転職後に周りをまとめるような業務を積んでいけばいいと考えられます。同様に、ベンチャー企業へ転職をしたいと考えている場合も、インチャージの経験より早めに行動を起こした方がいいでしょう。
しかし、日系の大手企業に転職をする場合は、一般的には監査法人でインチャージの経験を積んでいたほうが有利だと考えられます。大手企業に転職後に周りをまとめるような仕事を任されることは、ずっと先のことになるためです。
そもそも、難関試験を突破した公認会計士なので、3年ほどでも監査法人に勤めていれば、それだけで高い評価が得られます。つまり、監査法人で3年働けば、インチャージの経験はなくとも、転職には不利にならないということです。
本当に転職を考えているのであれば、転職のタイミングというものを誤ってはいけません。監査法人でパートナーやシニアマネージャーなどのある程度の地位にまで昇進してしまうと、年収も上がっていますし、転職後の年収に不満を抱いてしまう可能性が高まります。また、パートナーやシニアマネージャーになっている頃には、年齢もある程度重ねているはずなので、転職活動をしても年齢が問題となりうまくいかないことも多いでしょう。
もし、転職するのであれば、監査法人に入社をして1~3年のインチャージ経験後がおすすめです。もしくは、マネージャークラスまで、と考えた方がいいでしょう。
監査法人でのインチャージとはどういったことなのかということや、監査法人でインチャージを経験してからでないと転職をしても不利なのかといったことをまとめました。インチャージの経験はあるに越したことはないですが、インチャージの経験を何年も待って年齢ばかりを重ねていくことは、転職市場価値を下げることです。日系の大手企業は経験を重視するところがありますが、転職先が日系の大企業でない場合は、インチャージにこだわる必要はないといえます。公認会計士の資格を取得していることや、日常の業務で頑張ったことなどを自己アピールとして、早く転職活動に進むようにしましょう。