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財務諸表分析とは?各指標について徹底解説

HUPRO 編集部
財務諸表分析とは?各指標について徹底解説

財務諸表分析とは、財務諸表を用いて、企業の経営の成績・財政状態を分析することです。
B/S、P/L、キャッシュフロー計算書の各要素を用いて指標を計算し企業の現状を分析します。大企業から中小企業まで同じ指標を用いて財務分析をすることが可能となっており、今回はそんな財務諸表分析について解説します。

財務指標分析の目的 誰がどんな目的でつかうのか

分析の目的ですが、企業内部の利害関係人が行う内部分析と、外部の利害関係人が行う外部分析があり、それぞれに目的が違います。

内部分析
経営者が自分で用いる
従業員が経営状態のチェックに使う
労働組合が経営改善・賃金交渉の材料に使う

外部分析
投資家が投資の際、判断材料や業績判定のために用いる
銀行やその他の金融機関が信用状況を判断するために用いる
取引先が取引開始にあたっての信用状況調査や債権回収の参考に用いる
国・自治体が税金の徴収・統計による経済状況の把握のために用いる

このように、多くの利害関係者が財務諸表分析でそれぞれの利害関係にあわせた判断ができます。

公認会計士試験・税理士試験・中小企業診断士試験・FP試験の科目の一部としても出題があり、証券外務員試験などの金融系試験・ビジネス会計検定・管理会計検定にも出題される技能でもあります。

財務諸表分析で用いられる手法

ところで、財務諸表分析においては、分析の手法が下記の通り4種類あります。

収益性分析 投資資本に対して、どれだけ効率的に利益が生み出せたか分析する手法
成長性分析 売上高や利益の伸び率・成長度を分析する手法
安全性分析 支払いが滞りなく行えるかどうか、十分な資金量があるかどうか、資金繰りが安定しているか分析する手法
生産性分析 経営資源あたり生み出す付加価値を分析する手法

これらの手法は、どの立場からも1つだけを使うのではなく、いくつかの分析手法と指標を組み合わせて利用して、分析することとなります。

また、財務諸表分析は、一つの会社のみを見るのではなく、同業他社との比較、業種間で同じくらいの規模の会社の比較、などといったように、多数の会社で比較しながら分析することも多くあります。さらに、時系列で変化を見ることもあります。

それと、業種業容・業態により、使える指標や標準とされる数字の水準が異なっています。それぞれの手法により、利用する指標と、それがどのように利用されるのか、以下で概説します。

収益性分析の指標と使い方

収益性分析は、企業がどれだけ効率的に利益を生み出せることができるかを見る指標です。収益性分析指標は、数字ではなく、比率でみます。
収益性分析を大まかに二つに分けますと、「売上高」をベースに見る「取引収益性」と、「資本」をベースに見る「資本収益性」に分かれます。

取引収益性の指標からは、収益をどれだけ上げられるかの事業のポテンシャルがわかりますが、資本収益性の指標からは、効率性を見ることが可能です。また、投資家からすると、資金調達1当たりの収益性がわかるので、株式投資の目安として使うことが多いものです。

取引収益性の指標

売上高を分母として、売上高総利益・営業利益・経常利益・当期純利益をそれぞれ分子として、利益率を求めます。

例えばよく聞く粗利率ですが、

粗利率(%)=売上高総利益÷売上高×100

また、売上高営業利益率は 

売上高営業利益率(%)=営業利益=営業利益÷売上高×100

となります。

また同じく売上高を分母として、費用から収益性をはかるのが原価率・販管費率です。こちらは、数字が少なければ少ないほど、利益率は高いことになります。費用・販管費の単純な年次推移よりも「稼いだ分に相応の費用」がどれくらいかを突き止めようというアプローチです。

売上高原価率(%)=売上原価÷売上高
売上高販管費率(%)=販管費÷売上高
売上高営業利益率(%)=営業利益=営業利益÷売上高×100

資本収益性の指標

期首・期末の平均総資本または自己資本を分母として、総利益・営業利益・経常利益・当期純利益をそれぞれ分子として利益率を求めます。

総資産利益率(ROA)(%)=経常利益÷総資産
自己資本利益率(ROE)(%)=経常利益÷自己資本
資本収益性の指標

成長性分析

成長性分析は、前期と比較して当期の売上高と経常利益の伸び率を見ます。売上高があがると伸びる増収率と同様に、増益率も増加するのが理想です。売上高が上がると同時に増益率が同時に同じ位に伸びているのかどうか見ることにより、名目でない実質の成長度合いを測ることができます。

増収率(%)=(当期売上高―前期売上高)÷前期
増益率(%)=(当期経常利益―前期経常利益)÷前期経常利益×100

また、研究開発型の企業などでしたら、売上高に占める研究開発費の割合を知ることにより、成長の予測ができるため、売上高研究開発比率も重要な指標になります。

売上高研究開発比率(%)=研究開発費÷売上高×100

そのほか、総資本増加率、財務諸表成長性の指標として使われます。

安全性分析

安全性分析は、その企業にどれだけの支払い能力があるのか、また、借入金が多いなど、経営に不安定な要素がないか、判断する指標です。

重要な指標として、当座支払い可能な資金をどれだけ確保しているかを見る流動比率と、自己資本比率があります。自己資本比率は、金融法人の財務に関する規制の基準となる数値としても使われています。

流動比率は、この1年間内に得られる現金等の流動資産と、同じく1年間に支払う負債の比率で見ます。これに対して、長期支払能力の指標である自己資本比率は、他人からの借入金である他人資本と自己資本の比率で判断しますが、他人資本が多いと、経営が不安定であるとの評価になります。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債
自己資本比率(%)=自己資本÷(自己資本+他人資本)×100

生産性分析

生産性分析は、指標のバリエーションが多くあることで特徴的です。しかし、ポイントは非常にシンプルで、経営資源の投入量と、生み出した付加価値の大きさを比べて、生産性が高いかどうかを判断するというものです。

さて、付加価値ですが、大別して2つの計算方法があります。

(加算法)
経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+公租公課=付加価値
(控除法)
売上高―外部購入価値=付加価値

です。

そのいずれを取るとしても、

付加価値率=付加価値額÷売上高×100

となります。

では、労働者一人一人では、どれくらい経営資源の投入量により、新しく付加価値を生み出しているのか、これを知るためにある指標が労働生産性です。

労働生産性=付加価値額÷平均従業員数

日本の労働生産性が世界の水準より低いのを、残業をおさえることにより上げようとしているのが「働き方改革」の課題のうちの一つですが、人件費が減ることにより、この数字が上がることは式からも理解が可能です。

財務諸表分析まとめ

財務諸表分析は、冒頭にも申し上げましたように、資格試験・ビジネス検定試験で出題されると同時に、実務上も経営・金融・投資の実務になくてはならないものの見方を提供しています。

身近な例を考えると、4つの分析手法を身に着けながら、会社のB/S、P/Lを読むことができると、自分の所属する会社の業績がわかり、株式投資の判断材料にもなり、役立ていることができます。

有価証券報告書など、公表されている資料から、生きた財務分析を身に着けてみてはいかがでしょうか?

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