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決算資料開示について、開示義務と任意開示

HUPRO 編集部
決算資料開示について、開示義務と任意開示

会社は年度末に毎年決算を行い、その内容に基づいて財務諸表などの決算書を作成します。この決算資料は作成すれば終了!ではなく、実は「開示義務」があり、内容を公表すべき義務があるのです。本記事では、決算書の開示についてその内容と範囲について解説します。

決算資料の内容について

決算書は正式には「決算報告書」といい、以下のものを表しています。
・商法では計算書類
・証券取引法や企業会計原則では財務諸表 

商法では、
・貸借対照表
・損益計算書
・営業報告書
・利益の処分または損失の処理に関する議案(通常〈利益処分案〉という)
・付属明細書
を指します。
株式会社はすべて商法に基づく計算書類を作成して公示し (商法282条) ,定時総会の承認を得なければならない (商法283条)とされています。

財務諸表というのは、決算書の別名として使われることもありますが、基本的には財務関連の報告書を差すもので、
・損益計算書
・貸借対照表
・キャッシュ・フロー計算書
・株主資本等変動計算書
のことです。

このうち特に、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの計算書は、重要な書類としてこれらを総称して「財務三表」とも呼ばれます。

決算資料には、開示義務がありますので、外部の人に見られることをあらかじめ想定して作成する事が必要です。

決算資料の開示義務について

決算書類には、必ず開示すべき義務がある開示先と、任意の開示先とに分かれます。まずは、必ず開示しなくてはならない開示先から解説しましょう。

①税務署

税務署には税務申告書類の他に、決算資料も開示する義務があります。これは全ての法人において必要なことです。
税務署は決算報告書と税務申告書類を確認したうえで、決算内容に不備や不正がないかをチェックします。

②上場企業・大会社の一般開示

上場企業は、金融商品取引法によって、決算報告書の開示が義務付けられています。しかし、上場していなくても、会社法上で「大企業」に分類される会社(資本金として計上した額が5億円以上、または負債として計上した額の合計額が200億円以上の株式会社)は、決算書を開示する義務があります。開示方法としては官報や新聞への公告のほか、自社WEBサイトへの掲載などを5年間継続公開する事が認められています。
また、上場企業の開示書類については、金融庁のWEBサイトであるEDINETでも閲覧が可能です。

③債権者・株主に対して

債権者とは、その会社にお金を貸している金融機関や、買掛金の発生している取引先などです。会社法442条3項により、債権者から決算書の開示を求められた場合は、開示する義務が生じます。

また、株主にはその持分比率(通常は議決権比率と同様)によって、決算書の開示を要求する権利が与えられることがあります。
中小企業であっても、3%以上の株式を保有している株主は、決算書を閲覧する権利があるので、開示請求があった場合は要求に応じなければなりません。

決算資料の任意開示について

次に、決算書を任意で開示する場合について解説しましょう。いずれも義務ではありませんが、決算資料は開示要求があった場合には出せるようにしておくのが望ましいと言えるケースです。

①金融機関の融資を受ける場合

銀行などの金融機関は、決算書からその会社の財務状況を判断し、融資を行うか、返済条件を変更するかなどを決定しています。
つまり、金融機関に融資を受けようとする場合などについては、決算書を任意ではありますが、提出する必要があるのです。

②取引先からの要求がある場合

決算資料の一般への会議事務がない会社にとっても、取引先が上場企業や大会社となると、新たな取引前に決算資料の開示を求められることは良くあることです。
ある程度の企業ともなれば、取引先の財務状況などを確認しておくのは当然で、もちろん強制ではありませんが、その場合は新しい取引先として認めてもらう、もしくは今後も取引を続けるのはかなり困難になるといえます。

③社員からの開示請求がある場合

会社法第440条第1項にて、原則として、株式会社は貸借対照表の公告が必須となっています。つまり、社員は決算書を公開していない場合でも公告を見ることは可能ですが、実はこれは上場企業や大会社以外には罰則がなく、努力義務のため、中小企業においては非開示にしているところも珍しくはありません。

これは、特に役員報酬などについて従業員に秘匿しておきたいという同族会社・オーナー社長の一存もあったりしますが、良い人材を確保したいという希望があるのであれば、こうした数値にまつわるところを開示しておき、従業員との信頼関係に役立てるという使い方もできるのではないでしょうか。

これからの人材不足において、モチベーションを持って働いてくれる優秀な人材を確保したいという事であれば、なおさら会社の財務に対しての透明性の確保は重要な課題であるといえます。

この記事を書いたライター

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