企業は会計基準を用いて財務諸表を作成しています。ところがこの会計基準は、4つ、基準があります。今回は、どうして会計基準が4つもあるのか、どのような会計基準があるのかなど、さまざまな角度から会計基準について解説していきます。
会計基準とは何かというと、財務諸表を作る際に用いるルールのことをいいます。決算期になると企業は、財務諸表(損益計算書や賃借対照表)を作成し、株主や債権者などの企業の利害関係者に財政状態や経営成績を報告しなければなりません。
もし、各企業が自由なかたちで財務諸表を作成してしまえば、その企業ごとの業績は見えたとしても、他の業績や他社の業績とは比較が難しい状況が起こります。そのため、企業は「会計基準」というルールにそって、財務諸表を作成します。
会社法または金融取引法においては、一般的に公正妥当だとされる企業会計の慣行に従うべきだという定めがあり、「一般に公正妥当な企業会計の慣行」とされるのが会計基準です。
日本において、会計基準は以下の4つが認可されています。
日本会計基準は、日本独自の会計基準です。日本の企業にとっては、1番馴染みのある会計基準だといえます。この日本会計基準は、1949年公表の「企業会計原則」をベースとしており、その後2001年からは、社会変化に応じた企業会計基準委員会が設定した会計基準を含んだものが採用されています。
企業会計原則には「一般原則」「賃借対照表」「損益計算書原則」があり、日本会計基準は、これらの原則に則っています。そして「賃借対照表」「損益計算書」は、損益計算書原則や賃借対照表原則に基づいて作成されることになります。
「米国会計基準」は、アメリカで使われている会計基準です。米国財務会計基準審議会(FASB)が発行するFASB解釈指針(FIN)や財務会計基準書(SFAS)などによって構成されています。ちなみにアメリカで上場をしている日本企業は、米国会計基準に基づいて財務諸表を作成することとなります。
「J-IFRS」は、日本会計基準とIFRSの間のような内容であり、2016年3月期末より適用となっています。IFRSを、日本国内の経済状況などに合わせた会計基準です。
「IFRS」とは、 International Financial Reporting Standardsの略語であり、国際会計基準のことです。国際会計基準審議会が作成をした会計基準で、EU域内の上場企業に対し、2005年に導入が義務化されました。
IFRSでは、賃借対照表は「財政状態計算書」と呼ばれており、固定資産についても「非流動資産」として計上されるなど、日本会計基準とはルールが異なっています。また、IFRSは時価評価を重視しており、出荷基準が認められないために、すべてが検収基準となることもあるほどです。日本企業の導入には、ハードルが高いものだといえます。
ただし、国際会計基準を導入することのメリットもあります。海外に子会社をたくさんもつ企業であれば、会社間がすべて同じルールで徹底されますので、経営管理がラクになるでしょう。また、海外展開する企業であれば、海外においての資金調達がしやすくなります。
会計基準は、企業の比較をするために作られたものであるとお話しました。それなのに、どうしてこんなにも複数の会計基準が存在しているのでしょうか。それは、これまで、各国がそれぞれの経済環境や歴史に応じた独自の経営基準を設けてきたからです。日本においても独自の会計基準が設けられていますが、国際市場での影響力はなく、アメリカでは日本会計基準の財務諸表は認められないといった状況です。
このような背景により、日本国内で米国会計基準の適用が可能となり、EU各国を中心とした世界共通の会計基準であるIFRSも、日本において用いられるようになりました。今、日本の金融庁が中心となり、IFRSやJ-IFRSが設計されるなど、試行錯誤が続いています。
では、IFRSの導入により、日本の会計はどのように変わるのでしょうか。
IFRSを導入すれば、世界基準の会計基準となるので、世界中の投資家から注目されることが予想されます。さらに、海外にある子会社の一元化ができ、海外上場も容易になるでしょう。ただ、世界中の投資家より注目されることにより、M&Aのリスクが高まるというデメリットも考えられます。
IFRSを導入すると、日本基準で会計をしていた企業は今までと異なる会計基準で会計処理をすることになります。例えば、研究開発費ひとつとっても、日本基準では一括費用処理ができていましたが、IFRSでは研究段階の費用は費用計上として、そして開発段階の費用は資産計上として償却する必要があります。研究段階と開発段階の区別など、会社としては新たに定めなければいけないことが多くでてくるでしょう。
会計基準がこんなにも複数存在していては、企業同士を比較することが難しい状況が生まれます。しかし、会計が複雑なものであるがゆえに、世界中で統一することもなかなか難しいものです。とはいえ、日本も世界基準に合わせようと動き出しています。今後の動向に注目していきましょう。