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法人税が中小企業は優遇されている!?優遇期間も延びる?

HUPRO 編集部
法人税が中小企業は優遇されている!?優遇期間も延びる?

原則として、すべての法人企業は法人税を納める義務を負担しています。大企業も中小企業も、法人税の納付義務を課されているという点において違いはありません。

ただ、法人税率に関して言えば、いくつかの点で特筆すべきポイントがあります。資本金の規模や事業年度における所得金額によって軽減税率の適用を受け、場合によってはかなり低い税率で法人税が算定されるケースがあります。

この記事では、そもそも法人税とはどのようなものなのか、そして、いわゆる中小企業が法人税に関して受けることができる優遇措置(軽減税率や優遇措置期間の延長など)に焦点をあてたいと思います。法人税に関する制度は極めて複雑ではありますが、他方で法人である以上必ず向き合わなければいけない問題です。ぜひこの機会に、知識を整理してください。

法人税を納めるべき法人とは?

税法上、日本国内に本店もしくは主要な拠点がある法人企業は、原則としてすべて法人税を納付しなければいけないとされています。ただ、ここで注意しなければいけないのが、そもそもの法人税の位置付けです。

法人税とは、法人が経済的活動によって利益を上げた場合に、最終的にプラスになった分(所得)に対して課されるものです。ポイントは、「経済的な活動を目的としてお金を稼いだ」という点です。つまり、当該法人が経済的利益を目的として事業を行っているのなら当然法人税の課税義務が生じますが、「経済的利益の獲得を目的としていない」のであれば、法人税を課される根拠がなくなるということになります。

したがって、例外的に一定の法人団体については、法人税の納付を免除されているケースがあります。以下では、法人税の課税を受ける団体と非課税の団体について、それぞれ整理します。

法人税課税組織・非課税組織について下記のコラムでも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

《関連記事》
法人税とは?計算方法、税率から納税方法までの基礎知識を解説

普通法人

一般的な方が思い浮かべる「会社」というものは、おおよそ「普通法人」に区分されます。普通法人は、法人税の納付義務を課されています。普通法人に該当する組織は、以下の表をご参考ください。

普通法人 株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、医療法人、相互会社、企業組合、労働組合、管理組合、日本銀行

協同組合など

協同組合など(具体例は以下の表をご参考ください)は、法人税の課税対象です。ただし、株式会社をはじめとする普通法人とは異なる税制上の措置が用意されています。

協同組合など 農業協同組合、信用金庫、中小企業等協同組合、消費生活協同組合など

普通法人との具体的な取り扱いの違いは次の通りです。

・事業分量配当を損金に計上できる
・原則として法人税の税率は19%(例外的に15%に更なる控除を受けられることも)
・欠損金繰越控除につき所得金額の100%まで損金に計上できる
・一定限度の範囲で貸倒引当金を損金に計上できる

このように、協同組合などについては、軽減税率を受けられることに加えて、損金計上額が多めに設定されているので、節税効果を狙いやすくなっています。

公益法人など

公益法人とは、宗教または学術などの公益を目的として団体活動を営んでいる法人のことを指します。つまり、これらは「経済的利益をあげること」を目的として事業活動を営んでいるわけではありません。したがって、上述のように、公益法人に関して法人税は非課税です。

公益法人に分類されるのは以下のようなものです。

公益法人 公益社団法人、財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人、日本赤十字社など

ただし、一点注意すべき点があります。それは、例外的に公益法人も法人税の適用を受けうるということです。

例えば、公益法人とは言っても、その活動すべてが公益目的事業というわけではありません。事業の種類によっては、公益目的以外の収益事業や共益事業に分類されることもあります。このような事業については、結果的に収益が上がった場合に限って、上述の法人税課税の趣旨が当てはまります。したがって、公益法人とは言え、お金儲けをしようとして儲けが出た場合には、しっかりと法人税を納めなければいけません。ただし、その際には軽減税率が適用される可能性があります。

人格のない社団など

いわゆる民法上「法人格のない社団」と称されるものについては、法人税は課されません。もちろん、公益法人の箇所で述べたように、例外的に収益事業によって所得が発生した場合には、法人税の課税対象となります。

人格のない社団 PTA、同窓会、サークルなど

公共法人

公共法人とは、国や地方自治体が運営をしている団体のことを指しています。提供サービス内容の公共性が極めて高いために、法人税は課されません。

公共法人 地方公共団体、国民金融公庫、住宅整備公団、都市整備公団、住宅金融公庫、日本道路公団、国立大学法人、日本放送協会など

そもそも中小企業とはどこまでを指している?

法人税について企業形態を分析する際には、もう一歩踏み込んだ分析が必要です。というのも、法人税率を決定する際には法人の規模について注目しなければいけないのですが、法人税法でより詳細な定義規定が置かれているからです。

以下では、法人税法及び関連法において規定されている企業の分類・定義について紹介します。ご確認ください。

中小法人の定義

一般的には中小企業と呼称されますが、法人税法では「中小法人」と言われます。中小企業という用語を使用する際には、法人税法が念頭に置かれているのではなく、中小企業基本法の定義によるものです。この記事では法人税がメインテーマですので、法人税法上の「中小法人」の定義を扱います。中小法人の定義は次の通りです。

普通法人のうち各事業年度終了時の資本金額・出資金の額が1億円以下で、以下に該当しないもの。

・いくつかの大規模法人によって発行済株式などの3分の2以上が所有されている
・特定の大規模法人によって発行済株式などの2分の1以上が所有されている
・常時使用する従業員数が1,000人を超えている

ただし、平成31年4月1日よりも後に開始する中小企業のなかで、3年以内の事業開始年度の日に終了をした年度所得の平均額が15億円を超える法人(適用除外事業者と呼ぶ)は除いて考えることになっています。

大規模法人

次に、中小法人との比較のために、大規模法人の定義をご紹介します。

普通法人のうち中小企業を除いた法人で、以下のいずれかに該当をする法人

・資本金もしくは出資を有しない法人のなかで常時使用する従業員が1,000人を超える
・資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える
・大法人の100%小法人である
・グループ内のいくつかの大法人に発行済株式などすべてを保有されている

大法人

さらに、法人税法では、大法人に関する定義が用意されています。

資本金の額もしくは出資金の額が5億円以上である法人

中小法人が納めるべき法人税について

では、中小法人が納付すべき法人税の算定方法について説明します。中小法人の法人税額を算出する際には、まず法人税率を確認し、次に軽減税率の適用を受けることができるか、という観点で考えます。

###中小法人の法人税率について

中小法人の法人税率は以下の表のように定められています。

ご覧のように、そもそも中小法人に当てはまらなければ軽減税率を受けることができません。上述の定義を今一度ご確認ください。

そして、中小法人に該当すると判断される場合には、課税対象額に応じて、段階的に軽減税率が適用されます。もう少し整理すると、
・資本金等が1億円以下
・課税対象所得が800万円以下
この2つの要件を充たした場合に限り、軽減税率の適用を受けるということになります。

では、以下では具体的に法人税を計算し、理解を深めていきましょう。

中小法人の軽減税率についてはこちらの記事でも詳細に解説しています
《関連記事》
中小企業向けの特例税制措置について解説!

普通法人で資本金は1,500万円、課税対象所得が700万円のケース

普通法人かつ資本金が1,500万円ですので、中小法人に該当します。
そして、課税対象所得が700万円ということは、軽減税率を受けられるラインである800万円の要件も充たしています。

したがって、この企業の法人税は、700万円×15%=105万円と導かれます。法人税を支払った後の残りの金額は695万円です。

普通法人で資本金は1,500万円、課税対象所得が、①800万円、②801万円のケース

さて、いかに軽減税率が重要であるかとご理解いただくため、このようなモデルケースについても考えてみましょう。

①課税対象所得が800万円ですので、法人税率は15.0%です。
800万円×15.0%=120万円
手元に残るお金は、680万円です。

②課税対象所得が801万円ですので、法人税率は23.20%です。
801万円×23.20%=約186万円
手元に残るお金は、約615万円です。

あくまでもモデルケースですが、①と②を比べたとき、あまりに理不尽、いえ、軽減税率がいかに重要かご理解いただけるはずです。課税対象所得は1万円しか差がないのに、税率の妙のため、手元に残る金額に約65万円の差が生まれてしまっています。しかも、②のケースの方が「多く稼いでいる」にもかかわらず、です。

以上より、中小法人では節税対策を練って、軽減税率の適用範囲である800万円以下にすることがとても重要ということです。

普通法人で資本金は3,000万円、課税対象所得1,000万円のケース

資本金が3,000万円ですので中小法人にあたります。
そして、課税対象所得が1,000万円ですので、800万円までについては軽減税率が適用され、800万円を超える部分については軽減税率を受けられないということになります。

それぞれ計算すると、
800万円×15.0%=120万円
(1000万円-800万円)×23.2%=46万4,000円

となります。そして両者を合算した金額が法人税として納付義務を課されるものです。
120万円+46万円4,000円=166万円4,000円

中小法人の法人税が軽減される期間について

上述の法人税率に関する表の中でも触れましたが、今現在、中小法人の軽減税率は15%です。本来は2019年3月31日までの予定だったのですが、適用期限が2年延長されたために、2021年3月31日までにはじめる事業年度についてまで適用を受けられます。中小法人にとってはありがたいことなので、ぜひ活用してください。
尚、それ以降は19%になるのでご注意ください。

まとめ

中小企業の法人税優遇については以上です。節税対策がいかに重要かご理解いただけたと思います。
税率次第で、手元に残る金額は大きく変わってきます。中小企業にとっては、今後の事業継続を左右しかねないといっても過言ではありません。より上手に納税するには、法人税法に対する知識を深めることが何より重要です。税理士などの専門家に相談しながら、しっかりと法人税対策を行いましょう!

この記事を書いたライター

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