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税理士と行政書士のダブルライセンスがおすすめな理由

HUPRO 編集部
税理士と行政書士のダブルライセンスがおすすめな理由

これから税理士資格取得を目指そうという人の中には、税理士試験に合格した後どのようなキャリアを歩もうか悩んでいる人も少なくはないでしょう。中小の税理士事務所や会計事務所に勤務してその後独立して自分の事務所をもつのも良し、大手税理士法人にチャレンジして大手企業を相手に仕事をするも良し、いろいろな選択肢が考えられます。

ただ、実は、以上のように税理士としていろいろな形で専門性を高める以外に、行政書士登録もして業務の幅を広げるというキャリアプランも考えられます。税理士資格と行政書士資格のダブルライセンスをフル活用すれば、税理士資格だけで業界で勝負している同業者から差別化されたサービスを顧客に提供することができるでしょう。

そこで、この記事では、税理士資格と行政書士資格のダブルライセンスを取得して会計業界で働くメリットについて解説します。将来的に税理士業界や行政書士業界で働くことを目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。

税理士と行政書士のダブルライセンスをおすすめする理由

なぜ税理士と行政書士の二つの専門資格に基づいて仕事をするのがおすすめなのか、まずはその理由を説明します。

税理士資格さえあれば行政書士試験は免除される

本来であれば、行政書士資格を取得するには、国家試験である行政書士試験に合格しなければいけません。ただし、行政書士試験に合格する以外にも、以下の条件を充たすことができれば、行政書士として仕事をすることができます。

・公務員として17年以上の勤務歴があること
・弁護士、弁理士、税理士、公認会計士の資格を取得していること

つまり、税理士試験に最終合格すれば、わざわざ行政書士試験に合格するまでもなく行政書士として仕事ができるのです。わざわざダブルライセンスを取得するために資格試験の勉強を重ねる必要はありません。

税理士と行政書士の業務には連続性がある

税理士と行政書士のそれぞれの仕事は、業務に重なる部分が多くあり、同時にお互いがお互いに補完し合う関係になっているからです。両者はまったくの無関係な仕事なわけではなく、税理士からすれば「行政書士の資格や経験がないとできない仕事」がありますし、行政書士からしても「税理士の資格や経験がないとできない仕事」があるので、仕事の幅を広げやすいというメリットを得られるでしょう。

例えば、相続に関する業務を例に挙げてみましょう。相続が発生した場合には、①相続財産や相続人を調査し、相続放棄などの意思確認等を行って円滑に相続が進むように財産の目録書や遺産分割協議書を作成する必要があります。そして、相続財産の配分が終われば、②各相続人に配分された財産について、相続税関係の調整を要することにもなるでしょう。

ここで重要なのが、前半部分①は行政書士しか仕事を受け持つことができないということ、そして、後半部分②は税理士しか扱えないということです。つまり、行政書士業務と税理士業務のどちらか一方しか取り扱っていない事務所では、相続に関する一連の顧客ニーズを充たすことができないのです。他方、行政書士と税理士のダブルライセンスで活躍している専門家であれば、相続開始から税務上のアフターケアまで、すべてを一連の流れで処理することができます。クライアントの要望を最大限迅速に達成できるので、集客に役立つでしょう。

税理士・行政書士は法的素養が求められる

税理士は主に税務を扱う仕事ですが、財務諸表論や簿記論等のテクニカルな税務処理はさておき、その前提には税法関連の知識が大前提として求められます。選択科目などにおいて相続税法等の法律に習熟しなければいけないことからも、税理士にはある程度法的素養が求められます

他方、行政書士は、法律関係の書類作成や申請業務を主たる仕事として活躍する専門職です。民事法や行政法に関する知識に精通していなければ行政書士は務まりません。つまり、行政書士も法的素養が当然に求められるのです。

民事法、刑事法、行政法と、それぞれの法分野において必要とされる詳細な知識に違いはありますが、法律解釈能力や要件論などの前提能力はすべての法領域において共通して求められるものです。つまり、税理士も行政書士も法的素養という面において共通していることから、税理士が行政書士として職務をこなすのは難しいことではありません。

税理士と行政書士の両方の業務で経営が多角化する

税理士と行政書士では業務が重複したり連続する分野がありますが、同時に、税理士でなければできない仕事、行政書士でなければできない仕事も明確に棲み分けられています

両者の具体的な業務内容については項を改めて紹介しますが、ここでのポイントは事務所経営の多角化によって収益増加を狙えたり、経営上のリスクマネジメントを図れるという点です。

そもそも、ダブルライセンスで仕事をする以上、それぞれの資格のみで集客を狙えるために、経営基盤はしっかりします。さらに、例えば税理士は決算期などに仕事が忙しくなる傾向がありますが、それ以外は比較的業務は暇になります。そのような税理士稼業の狭間のタイミングでしっかりと行政書士として仕事を集めることができれば、事務所経営も安定するでしょう。

税理士と行政書士が求めあう業務範囲

税理士も行政書士も、それぞれ専権事項として扱える業務範囲が異なります。したがって、お互いがお互いの足りない部分を補うことで、よりクライアントの要望を実現できます。

税理士が行政書士に求める仕事

行政書士の仕事は実に多岐に渡りますが、税理士業務との連続性という観点からは、以下の業務が挙げられます。

・遺言書や遺産分割協議書の作成などの相続関連業務
・建設業や飲食業、風俗営業、産業廃棄物業者などの役所の許認可が必要な業種の申請支援
・会社設立の際の定款認証

これらの業務は行政書士の資格と実務知識がないと対応が難しいですから、ダブルライセンスで活躍していない税理士事務所で顧客からこの類の相談があった場合には、提携している行政書士などに業務を依頼しているのが実際のところです。

しかし、ダブルライセンスのもとで仕事をしている税理士であれば、この種の業務を自分の会計事務所で完結できます。上述の通り、相続関連業務は最初から最後までサポート可能です。営業にあたって行政の許認可が必要な業務を代行してしまえば、そのまま会社設立後の当該法人の税務サポートに関する継続契約の獲得にも役立つでしょう。

このように、税理士が行政書士の資格でも仕事を受任することができれば、中長期的な仕事の獲得にも繋がるのです。

行政書士が税理士に求める仕事

逆に、行政書士の側からすると、所得税の確定申告や法人税の申告と言った業務は税理士の独占業務ですから、これらの業務にまで手を広げたい場合には、本来であれば税理士との提携が必要になります。

しかし、ダブルライセンスのもとで仕事をしている行政書士であれば、法律相談の流れで税務コンサルティング業務なども提供できるので、より顧客の経営に資することができるでしょう。

税理士と行政書士の資格取得に必要な勉強時間

税理士資格を取得すればそのまま行政書士として働くことができるので、本来なら行政書士試験に求められる勉強は不要です。他方、行政書士資格を取得したとしても税理士試験が免除されることはないので、行政書士資格ありきでダブルライセンスを狙うなら、二つの資格試験に合格するために努力を要します。

一般的に、税理士と行政書士の資格を取得するために必要な勉強時間は、それぞれ以下の時間が目安と言われています。

・税理士:2000時間程度
・行政書士:500時間程度

もちろん、勉強をスタートする時点での知識(法学部や経済学部出身かどうか)や、資格試験だけにどれだけ集中して時間を使えるのか(働きながらかどうか)にもよりますが、これだけの総学習時間を達成するには、少なくとも3年〜5年程度は本腰を入れて勉強する必要があるでしょう。

しかし、税理士試験を先に取得するルートであれば、行政書士資格獲得に必要とされる勉強時間を省くことができます。すでに税理士試験をパスしている方はぜひ行政書士登録を済ませるべきですし、これからどちらかの資格にチャレンジしようと考えているのなら、ぜひ税理士試験から挑戦してみてはいかがでしょうか?

税理士と行政書士の資格取得に必要な勉強時間

税理士が行政書士のダブルライセンスで仕事をするときの注意点

注意しなければいけないのが、税理士資格を取得している人が、明日から急に行政書士としての仕事ができるわけではない、という点です。税理士資格取得によって行政書士試験は免除されますが、行政書士として仕事をするには、行政書士会への登録作業等が求められるからです。

行政書士会への登録

専門性の高い行政書士業を営むためには、日本行政書士連合会の行政書士名簿に会員登録をしなければいけません。各都道府県の行政書士会に申請をする必要があるので、1ヶ月程度の時間を要します。

登録する自治体によって費用は異なりますが、登録費用や入会金などをあわせると約30万円程度を要します。

行政書士事務所を開設

行政書士登録をすませた後は、税理士法人とは別に行政書士法人や行政書士事務所を開所しなければいけません。税理士法人の看板だけでは行政書士業務を遂行できないのでご注意ください。

税理士試験を目指すなら税理士事務所で働きながら合格を目指そう

実は、税理士事務所・会計事務所・税理士法人で働く人は、税理士試験の受験生である人がほとんどです。採用を行う事務所側も、採用する従業員が会計や税法に関する前提知識を持っているに越したことはありませんから、税理士試験受験生を優先的に採用しているという事情があるからです。

税理士事務所で働けば、同僚や先輩も同じ試験の受験生という環境になりますから、勉強と仕事の両立を図りやすいというメリットがあります。例えば、人間はまわりの環境に左右されやすいものですから、まわりに試験勉強をしている人が一人もいない環境で働くのと、「今年はAさんが5科目合格した。来年は誰だろう?」という環境で働くのとでは、当然ながら後者の方があなたの希望するキャリアにたどり着ける可能性が高まるのはむしろ当然です。

したがって、これから試験勉強を始める段階の方は、会計事務所で働きながら勉強することをぜひ選択肢に入れてみてください

まとめ

今回は、税理士や行政書士の資格を目指す人向けに、ダブルライセンスで仕事をするメリットについて解説しました。税理士や行政書士は、いずれも難関資格に分類される試験ですが、両方の資格を持つことができれば業務守備範囲は確実に広くなります
税理士資格取得後のキャリアプランでお悩みの方は、ぜひご参考にしてください!

この記事を書いたライター

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カテゴリ:資格試験

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