会計の知識は決算書を読むために必要ですが、日本の決算書に慣れてからアメリカの株式に投資するときは、勝手がいろいろ異なるところがあります。というのは、日本の会計基準とアメリカの会計基準が異なっているためです。今回は、US-GAAP(米国会計基準)について詳しく解説していきます。
US-GAAP(米国会計基準)とは、省略してGAAP(ギァープ、ギャープ、ガープ)といわれるときもありますが、アメリカの財務会計に使われる規則です。なお、日本の会計基準は、省略してJA-GAAPといわれるときもあります。
アメリカの証券取引所に上場するためには、US-GAAP(米国会計基準)に基づいた財務諸表を作って公表する必要があります。米国公認会計士や会計責任者、会社経営者は、US-GAAP(米国会計基準)の法令に違反したことで民事責任や刑事責任を問われるときがあります。
日本の証券取引所に上場している会社が提出する有価証券報告書に記載する連結財務諸表を作る基準は、基本的に日本の会計基準になります。
しかし、このような日本の会社でも、US-GAAP(米国会計基準)を採用しているところもあります。実際には、アメリカの証券取引所に上場している会社は、日本の有価証券報告書に記載する連結財務諸表をUS-GAAP(米国会計基準)で作っても問題ないという特例があります。
この特例は、US-GAAP(米国会計基準)にプラスして連結財務諸表を日本の会計基準で作ることを無くすためのものです。この特例が採用できる会社は、有価証券報告書にUS-GAAP(米国会計基準)で作った連結財務諸表を和訳して記載しています。
連結財務諸表だけをこの特例は対象にしているため、日本の会計基準で単体財務諸表は作る必要があります。
日本の証券取引所に上場しているいくつかの会社は、アメリカの証券取引所に上場するのを止めたにも関わらずUS-GAAP(米国会計基準)で有価証券報告書の連結財務諸表を作っています。というのは、US-GAAP(米国会計基準)で連結財務諸表制度が導入される前から有価証券報告書を作っている会社は、アメリカの証券取引所に上場するのを止めてもそのまま当分の間は認められるためです。
「NY上場廃止ラッシュ」というニュースが、2017年の3月に日本の経済新聞に載りました。
このニュースのきっかけは、アメリカの証券取引所に上場するのをNTTが止めるのを発表したことです。
アドバンテストなども、2016年にはアメリカの証券取引所に上場するのを止めています。そして、2018年にNTTドコモが実際にアメリカの証券取引所に上場するのを止めました。日本の経済新聞によれば、NTTドコモがアメリカの証券取引所に上場するのを止めたのは、証券市場を取り巻く環境が変化したことによって、アメリカの証券取引所に上場する必要性が少なくなったということです。
ソニーなどと比較すれば、NTTドコモは知名度が低いため、アメリカの証券取引所での取引量が多くないということが実状なのでしょう。日本の会社がアメリカの証券取引所に上場するのは、知名度をアメリカでアップすることが一つの理由です。
しかし、アメリカの証券取引所に上場するには、連結財務諸表をUS-GAAP(米国会計基準)で作る以外に、非常に厳しい内部統制監査と会計監査を受けるために費用と労力がかかります。さらに、アメリカの証券取引所に上場している会社は、アメリカの会社とみなすといういくつかのアメリカの法律があります。特に、アメリカの会社が賄賂を外国の官僚や政治家に贈るのを禁止する海外腐敗行為防止法に違反すれば、信用が無くなる以外に、課徴金が巨額に課されるため、多額の費用がコンプライアンス対策にかかります。
このようなことも、アメリカの証券取引所に上場するのを止めた理由であると思われます。アメリカの証券取引所に上場していた日本のグローバル会社は多くありましたが、現在は、ソニーやトヨタなどの最大手中心に数は多くありません。
このような会社は、US-GAAP(米国会計基準)を有価証券報告書の連結財務諸表に採用することができますが、いくつかの会社では、日本の会計基準を有価証券報告書に採用しています。また、国際会計基準(IFRS)を採用している会社もあります。
一方、アメリカの証券取引所に上場するのを止めてもUS-GAAP(米国会計基準)を採用している会社があります。アメリカの証券取引所に上場するのを止めてからもUS-GAAP(米国会計基準)を採用しているこのような会社は、国際会計基準に変更することを明らかにしています。先にご紹介したNTTドコモなどは、国際会計基準にすでに変更しています。また、以前はパナソニックなどもアメリカの証券取引所に上場していましたが、国際会計基準にすでに変更しています。