経営者なら知っておきたい!IFRS決算を読み解くときのポイント5選

HUPRO 編集部2019.03.20

目次

IFRS(国際会計基準)決算を読み解くために

経営者や投資家のみなさんは、日々たくさんの企業の決算書に触れる機会があると思います。そんなときに抑えておきたいのが企業の適用する会計基準です。日本基準もあればUS-GAAPもありますし、もちろんIFRSもあります。特に大企業や新規上場企業を中心に、IFRSの決算書が増えている傾向は肌感覚としてあるのではないでしょうか。
今回は、日本基準にはない視点を中心に、IFRS決算書を読み解く上でのポイントを5つ、お話ししたいと思います。

ポイント1:のれんの減損

まずは個別の会計基準に関して3つご紹介します。1つ目は「のれんの減損」です。超定番の論点ですね。
日本基準では20年以内の期間にわたり定額法で償却がされ、他の固定資産と同様、減損会計が適用されます。一方のIFRSでは定額償却は行われず、毎期減損テストとしてのれんの再評価を行い、価値が下回っていた場合のれんの減損処理が行われます。すなわちIFRSでは買収した事業が期待通りの収益を獲得している分には費用が計上されることはありません。逆の言い方をすれば、のれんの金額が大きい企業ほど、のれんの減損による一時的かつ多額の損失発生のリスクがあるわけです。
日本企業でも近年はM&Aによる成長が主流になっており、のれんがどの程度あるか、(開示されている範囲内において)どの買収案件に基づくものか、等は重要な情報であると思います。のれんが数兆円も超えるレベルも企業もあり、減損テスト如何では1年分の利益が消し飛ぶ可能性があります。
なお、執筆時点(2019年1月)で決定された事項はありませんが、国際会計基準審議会(IASB)はIFRSにおけるのれん償却要否について今一度検討をはじめたようです。将来、IFRSにおいても償却が必要となる可能性がある点は頭の片隅に留めておいてもよいかもしれません。

ポイント2:非継続事業

個別の会計基準について、2つ目は「非継続事業」です。これはのれんほどメジャーなトピックではないですが、日本基準には全くない発想の基準ですので紹介したいと思います。先ほどのれんの中でも触れましたが、日本企業は近年M&Aを積極的に行っていますよね。のれんは事業を買う側の会計処理に関する留意点ですが、この非継続事業は事業を売る側に関するものです。
非継続事業に関する会計処理は、一言でいえば他社に譲渡することが決定した事業等は財務諸表から切り離して開示させるものです。継続企業の前提がある中で、その企業が継続して行わないことが明らかな事業が損益やキャッシュ・フローに含まれていると、投資家に誤解を与える可能性があるという考え方に基づきます。
比較情報も含めて損益及びキャッシュ・フローが切り離して開示されるため、「現時点で」企業が成長のために営む事業の体質を測ることができるという意味で有用な情報だと思います。(実務担当者は大変ですが・・・)

ポイント3:不確実な税務ポジション

個別の会計基準の最後は「不確実な税務ポジション」、税金に関するものです。企業が損金経理した調整項目や移転価格の取決めについて税務当局に否認される可能性が高い場合、否認されそうな金額を予め税金計上する処理です。ほぼ確実となったタイミングで計上する日本基準に比べて範囲が大きく拡大しています。グローバルで複雑な取引を行う大企業にとっては要注意の基準かもしれません。
詳細な考え方は別記事(IFRSの「法人所得税」とは?日本基準と何が違う?)を参照頂ければと思います。この論点に限らず、税金・税効果まわりは変更点が複数あります。

ポイント4:業績管理指標

観点を変えて、今度は企業の業績管理方法に関する考え方です。制度会計の業務に携わっているとあまり馴染みがないかもしれませんが、企業が財務上の経営目標として設定するものです。典型的なものは営業利益額・率かと思います。
この業績管理指標をどう注視するかですが、IFRS導入を契機に企業が指標や水準を変える可能性があります。なぜなら、段階損益の考え方が変わるからです。IFRSでは経常損益という概念がなく、営業損益が金融収益・費用計上前の税引前損益に近い概念になります。この結果、同じ営業利益率10%とかROE5%といっても、日本基準とIFRSでは大きくポジションが異なります。
したがって、企業はIFRS下で業績管理指標の目標水準を設定し直す可能性がありますし、EBITDAなど日本基準やIFRSに関係ない指標を用いることもあります。さらに、企業独自で「事業損益」等の名称でいずれの基準における営業損益とも一致しない業績管理用の段階損益概念を新たに設定する場合もあります。
日本基準からIFRSになったタイミングで業績管理指標が変わっているか、変わっている場合は背景や従来の指標との違いをどう説明しているか把握することで、今後の経営の方向性が見えてくるかもしれません。

ポイント5:初度適用時

最後の5点目は、各企業一度きりの論点です。初度適用時、すなわち日本基準⇒IFRSの移行期における動きです。
IFRS移行にあたり実務上最初に作成されるのは比較情報です。たとえば2019年3月期からIFRS移行するならば、比較情報である2018年3月期の財務諸表(損益計算書及び期首・期末の貸借対照表)をまず作成する必要があります。そしてこの比較情報として作成されたIFRS財務諸表と、従来の日本基準に基づく財務諸表との差異金額・内容が「調整表」として開示されるのです。差異は企業によってさまざまです。なお、典型的な論点としては、前述したのれんに関する処理の違いのほか、繰延税金資産の回収可能性見直しや、リース資産のオンバランス等でしょうか。
このようなIFRS移行期の動きを把握しておくことで、日本基準⇒IFRSで主としてどのようなインパクトがあったのかを確認することができます。日本基準の会計期間も含めた経年推移を適切に分析する上で、重要な情報と考えられます。

おそれずたくさんIFRS決算書を読もう

ここまで、IFRS決算書を外部の投資家目線で眺める場合のポイントを述べてきました。色々変わってしまうのだなと身構えてしまったかもしれませんが、財務諸表であることに変わりはなく基本的には同じですのでご安心ください。むしろこのような明らかな変更点を意識しながら、その企業はIFRSを導入することで財政状態・経営成績の見え方がどう変わったか、意識して眺めることが大事です。臆せずたくさんの決算書を見続けて、変わるところと変わらないところを抑えていくようにしてください。


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カテゴリ:経理用語辞典

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