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公認会計士のキャリアパス。一般企業で活躍する企業内会計士とは?

HUPRO 編集部
公認会計士のキャリアパス。一般企業で活躍する企業内会計士とは?

企業内会計士という言葉をご存知でしょうか?その言葉の通り、事業会社で働く公認会計士のことを言い、現在増加傾向にあります。一般的に監査法人で働くことの多い公認会計士がなぜ事業会社に転職するのか?現役の企業内会計士が企業内会計士としてのメリットとデメリットを語ります。

企業内会計士とは

「企業内会計士」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。その名の通り、企業の内部で働いている公認会計士のことです。以前は公認会計士といえば監査法人でキャリアを積み、一定のタイミングで税理士事務所やいわゆるコンサルタントなどとして開業するようなステップアップが多かったようです。

しかし最近は、監査法人でのキャリアを早々に区切り、あるいは当初より監査法人に勤めることなく、新卒入社が大勢を占めるような大企業やスタートアップ企業に入社するような会計士が増えてきています。筆者自身も監査法人で5年半ほどキャリアを積んだのち転職し、製造業の事業管理部門で働いている企業内会計士の一人です。

企業内会計士の増加には様々な背景がありますが、

①公認会計士試験制度の見直しにより会計士の人材が増加していること
リーマンショック期に監査法人が採用を圧縮したこと

等により会計士が監査法人の外に活躍の場を求め始めた、ということは少なくとも挙げられると思います。このような企業内会計士という人材について、今回は簡単に触れたいと思います。

企業内会計士という働き方のメリット

企業内会計士が広がっていくことは基本的には人材交流の活性化であり、会計士自身にとっても企業にとってもメリットがあるといえます。

1) 会計士自身にとって

まず会計士自身にとっては企業内で働くということは、やりがいと自信・経験を得ることのできる格好の機会であるといえます。

監査法人の業務といえばやはり監査というチェック者としての業務が中心になります。これと比較して企業内で働く場合、ビジネスに直接携わり「商売をしている」という感覚をよりシビアに実感できると思います。

また、単に企業で働くといっても、その働き方は様々です。最も会計士という人材が馴染むのは決算や一般経理業務を担う部署、つまり経理部かと思いますが、その他にも経営企画や内部監査、予算管理等々職種は様々です。工場や海外駐在の場合は経理以外の人事や労務など管理業務全般を担うこともあります。

そして、優秀な人材の集まる大企業や幅広い業務遂行の求められるスタートアップ企業に身を投じ一定の成果を上げることができれば、会計士自身にとっても大きな経験と自信を得ることができるといえます。監査法人という閉じられた業界の外で自身の市場価値を確かめることができることは、キャリアプランを考える上でもメリットとなるでしょう。

2) 企業にとって

次に採用する企業の目線でメリットを考えた場合、(手前味噌で大変恐縮ですが)会計士という人材は平均水準が高いといえます。

まず、会計や監査の知識に関していえば、特定の企業のローカルルールなどに基づかない、体系的な知識やノウハウを持っている人材といえます。これは公認会計士試験やその後の監査法人における多数のクライアントへの業務提供により蓄積されるものであり、企業勤めではなかなか習得しづらいと考えられます。経理部等での採用を想定した場合、基本的には即戦力として扱うことができるといえるでしょう。

また、監査法人に勤める多数派の会計士とは異なるキャリアを培っていこうと考えている人材であり、モチベーションも高いといえます。企業の生え抜きの人材とは異なった観点からの取組みが期待でき、その他のメンバーに対して良い刺激にもなると思います。

3) 会計士業界にとって

最後に、企業内会計士という働き方が浸透することは、公認会計士という資格の認知度を広める上でもメリットがあると思います。海外に比べ日本は公認会計士という資格の認知度が低く、いわゆる「期待ギャップ」(公認会計士の業務に関する世間一般の認識と実際とのズレが大きいこと)の要因にもなっていると考えられます。様々な企業で会計士が活躍することで、会計士業界全体の活性化にもつながっていくと考えられます。

企業内会計士という働き方に潜むリスク

これまで述べてきた通り、企業内会計士が浸透することで様々な側面でのメリットが期待されます。その一方、安易にその選択肢を採ることで企業も会計士自身も不幸になるリスクもまた孕んでいます。

1) 会計士自身にとって

第一に、給与水準は多くの場合下がります。特に転職の波が来るタイミングである30歳前後の働き盛りの会計士を想定した場合、監査法人でバリバリ働いていたころの給与水準を確保しようとすると選択肢はかなり絞られてしまいます。

また、公認会計士の登録料を負担してくれる企業は少ないですし、会計士継続に必要な単位取得のために有料のEラーニングや研修受講が必要となる可能性もあります。(監査法人に所属している限りは、法人内の研修により殆ど意識しなくとも単位は充足できるかと思います)

また、監査法人という会計・監査のプロフェッショナル集団から外れることで、最新の会計基準や業界動向のキャッチアップはどうしても難しくなります。純粋な知識の拡充に取り組むのであれば、意識的に社外の研修に参加する必要があると思います。

2) 企業にとって

企業の目線で見た場合、誤解を恐れながら申し上げると、会計士という人材は相対的に「辞めやすい」と考えられるかもしれません。

元々監査法人という人材の出入りが激しい組織が主流であること
客観的な資格を有しておりいわば手に職があるため企業のポジションへの執着が低いと考えられること

が傾向としてあるように思います。

また、ひとくくりに会計士という人材であってもいわゆる「専攻分野」は区々です。新卒見合いでポテンシャル採用する場合を除き、会計士の様々なサービスライン(たとえば通常の監査業務のほか、IPO、IFRS=国際財務報告基準導入、財務デューデリジェンス等)のうち、どの分野に明るいか確認する必要はあるでしょう。

今後の見通し

企業内会計士という働き方は今後ますます広がっていくことが想定されますが、今はその過渡期にあるように思います。企業側から見れば「なんで会計士がわざわざうちのような事業会社に転職するの?」という印象は少なからずあるようです。(筆者自身、転職活動の際には面接で何度か聞かれた記憶があります)

企業も会計士もお互い過度な期待を持つことなく、「企業内会計士」がブームではなく主要なキャリアプランの一つとして定着していくことを願います。

この記事を書いたライター

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