簿記1級は難易度の高い資格です。合格率も低く、過去をさかのぼっても10%ほどを維持しているような状態です。それでも必死に勉強をして簿記1級を取得する価値はあるのでしょうか。今回は、簿記1級を取得することで得られる価値にはどのようなものがあるのかについて解説していきます。
簿記1級を取得できれば、転職やキャリアアップに役立ちます。つまり、生涯賃金にも大きくプラスに働くといえるでしょう。上場企業においても簿記1級は高く評価されますので、よほどコミュニケーション能力などに支障がない限り、書類選考や1次面接などで落とされる可能性も低いといえます。中小企業と上場企業とでは、年収も待遇も大きく違ってきます。仕事内容も、責任の大きさややりがいも異なりますので、この簿記1級取得によるメリットは大きいのではないでしょうか。
簿記1級は、自身の資産形成に大いに役立ちます。まず、稼ぐ力が身につきます。先ほどの項目でお話したように、年収をアップさせることが可能になるということです。そして、自身の家計管理にも応用ができますし、簿記1級で得た知識を活かしてうまく投資をすることも可能になるでしょう。
簿記1級で必要となる知識はとても幅広く、そして奥の深いものです。連結会計、税効果会計、資産除去債務、退職給付会計、減損会計など、このような高度な業務に携わることができるのは、簿記1級を取得しているからこそだといえます。つまり、会計や経理に関するほぼすべての知識を得ることができるのです。「専門分野についての知識は他の人よりも多くもっている」ということが自分の自信につながります。そして実際に、責任が大きく、豊富な知識を求められるやりがいのある仕事がどんどん回ってくるでしょう。
なんといっても、簿記1級の価値は、税理士や公認会計士の受験資格となることといえます。税理士の試験内容は「簿記論」「財務諸表論」「税務3科目(所得税、法人税、消費税、相続税など)」となっています。一方、公認会計士の試験内容は「管理会計論」「財務会計論」「監査論」「企業法」「租税法」です。つまり、簿記1級を取得していれば、すでに「管理会計論」「財務会計論」「簿記論」「財務諸表論」の範囲を習得済みであることと同じといえます。税理士試験の会計科目と比べても難易度は変わりませんし、公認会計士の論文式の試験対策は必要であるとしても、これはそれほど大きな問題はないと考えていいでしょう。
ちなみに中小診断士の試験内容にも会計科目がありますが、簿記1級のレベルの方が高いです。そのため、簿記1級を習得した後に中小企業診断士を受験すると、会計科目については簡単に思えるほどです。こうして中小企業診断士の資格取得の可能性が高まる点も、簿記1級の価値といえます。
公認会計士を目指す前提で簿記1級を習得した場合、簿記1級を取得して得た知識は、実務にそのまま活きてきます。新人が担当するような監査手続きでさえも、当たり前のように簿記1級の知識が求められてきます。具体的には、資産の金額が正しく合算されているかどうかなどを確認する連結組替表の開示確認や、償却方法や耐用年数が正しいかどうかなどを確認する固定資産の減価償却費の計算の確認、時間外入金や未取立小切手の扱いが適切であるかを確認する銀行勘定調整表の検証などが挙げられます。
簿記を使用せずに成り立っている大企業はありません。それは、法律で簿記を使い、企業活動を記録することが定められているからです。そのため、簿記1級を取得するほどの知識を得ることができれば、世間の経済ニュースや経済本の会計用語もよく理解できるようになります。「ビジネスの共通言語」というように会計が例えられるのは、このようなことからもわかるでしょう。
簿記1級は取得が非常に難しい資格のひとつです。これから簿記1級を受験する人にとっては、試験範囲も広くて深いものであり、途中で投げ出してしまいたくなるような気持ちを経験された人もいるのではないでしょうか。実際、簿記1級を取得するためには、非常に膨大な時間が必要だとされていますし、勉強を続ける努力の大変さも、モチベーションの維持の難しさも並大抵のものではありません。しかし、それに値する価値が簿記1級にはあります。簿記1級は相対評価であり、すべての問題に正解する必要はありません。そのため、このような戦略も立てながら効率よく勉強し、ぜひ簿記1級を取得していただきたいと思います。