経理でも医薬品業界の経理は特別？

さまざまな業界がこの世には存在していますが、医療業界の経理は特有といえます。ただ、まったく経理の方法が違うなどということはありません。では、医薬品業界の経理を目指す場合、どのような知識をあらかじめ身につけておいた方がいいのでしょうか。今回は、医薬品業界の経理について解説していきます。

• そもそも医薬品業界とは？
• 医薬品業界の経理として押さえておくべき点
• まとめ

そもそも医薬品業界とは？

医薬品業界というと、薬を作る会社というイメージが強いのですが、実はその製造された薬が患者さん（消費者）に届くまでには、さまざまなプロセスがあるのです。

まず、医薬品とは、薬事法によって細かく定義をされています。医師または歯科医師の治療で使用され処方箋が必要となる「医療用医薬品」、薬局での販売は許可されているものの、リスクが高いためにインターネットでの販売は許可されていない「要指導医薬品」、そして薬局でもインターネットでも販売が許可されている「一般医薬品」があるのです。さらに、この「一般医薬品」も、リスクの度合いにより「第1類」より「第3類」までに分けられています。

ちなみに「医薬部外品」という分類もあります。これは、今お話した分類には該当はしないけれど、医薬品に準ずるかたちで効果が期待できるものと考えられて厚生労働大臣が指定しているものを指します。これらの医薬品を取り扱っているのが医薬品業界です。そして、薬事法に基づいて、医薬品などの製造のみを行う「製造業」と、製造したものを出荷する「製造販売業」の2つに分けられています。もちろんこの2つの業においても厚生労働大臣の認可は必要とされています。

また、医薬品を医療機関やとりまとめ薬局などにのみ販売をする医薬卸売業もまた、医薬品業としてみなされています。医薬卸売業には都道府県知事の許可が必要であり、医薬品を安全に、そして安定的に供給するために厳しい規制があります。

医薬品業は、取引が特殊であるという特徴をもっています。医療業界では「薬価」という公定価格があり、これを前提として医療用医薬品の取引がおこなわれます。そして、医療機関などでは、この薬価によって医薬品卸会社より購入されたことを前提に保険請求がされます。しかし実のところは、薬価よりも低い価格で購入をするケースが多く、この薬価と実際の取引価格の差である「薬価差」が医療費を増大させている要因となっているとも考えられています。そのため、この「薬価差」問題を解消する目的で、現在は2年に1度、薬価が見直されることになっているのです。

次に、医薬品の数が多いということも、医薬品業界の特徴です。医薬品は、病気やその症状に合わせ、さまざまなものが存在しています。そのため、製造の工程においても、多品種少量生産に合ったものとなっています。また、薬品の製造は「新薬１つを生み出すには、平均で１０年以上の年月と200～300億円もの莫大な費用が必要になる」といわれており、実際に新薬の開発には長い時間と大きな研究開発費用がかかるのです。ただ、ひとたび新薬を開発することができれば、製薬会社には莫大な利益が入り、投資した資金の回収も可能になります。

そのほか、ここ最近では、薬剤訴訟に関する訴訟費が巨額になってきています。これは、薬の副作用などで健康を害したとの訴えに対する際の裁判費用や敗訴した場合の損害賠償などを指します。これらを支払う責任を負えば、医薬品会社の経営が困難となるケースもあるほどです。

医薬品業界の経理として押さえておくべき点

医薬品業界で経理をするといっても、基本的な部分は他の業界の経理と大きな差はありません。一般的な商業簿記の知識があれば充分です。医薬品製造業においての経理は、原価計算の知識をもっていれば役立ちますが、経理に携わりながら勉強していくかたちでもいいでしょう。

だたし、医療品業界においての商慣行や流通に関しては、経理に携わる前に知識として得ておいた方がスムーズに業務をこなすことができます。

まず、医薬品業界においては収益とは、薬品を出荷した際に売上を計上するという出荷を基準として収益を考える「出荷基準」という考え方が一般的です。これは、医薬品は検収が厳しいため、数量や製品の間違いが起こりにくいためだとされています。

そして、医薬品を各製薬会社が製造して医薬品卸会社がこれを仕入れ、その後、医療機関などに販売が行われる流れとなることも押さえておきましょう。この際、製薬会社より医薬品卸会社への販売価格のことを「仕切価格」、医薬品卸会社より医療機関などへの販売価格のことを「納入価格」と呼ばれます。もちろん、薬価が見直されれば、これら仕切価格と納入価格も見直されることになります。

まとめ

医薬品業界の経理だからといって特別なスキルを求められることはありません。ただし、お薬品業界は特殊性の高い業界であるため、業界で常識とされている用語や流通の流れに関しては、あらかじめ知識を得ておいた方がいいでしょう。

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