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会計ビッグバンとは?歴史から導入による影響まで徹底解説

HUPRO 編集部
会計ビッグバンとは?歴史から導入による影響まで徹底解説

会計などの仕事に就くにあたって、必ず必要になるのが会計用語です。今回は、会計ビッグバンについて、その概要から導入による影響など、詳しく、わかりやすく説明します。

会計ビッグバンとは?

会計ビッグバンとは、現代では企業が海外に拠点をおき、急速に投資資金が国境を越える事が一般的となり、それに対応した新しい会計基準を導入しようとした動きのことです。
いいかえれば、現代社会の国際化に伴ない、企業会計の管理方法を世界基準に合わせようとする改革といえます。

これはわが国の企業の決算や経営に非常に大きな影響を与えています。日本の会計基準にも連結財務諸表の重視、金融商品の時価評価、税効果会計、キャッシュフロー計算書、退職給付会計、減損会計等の基準が導入されることになりました。

会計ビッグバンの歴史

会計ビッグバンは、1990年代からの流れがあります。
1990年代後半から日本の会計制度を国際会計基準に近づけるためになされた大きな変更です。新会計基準や会計改革とも言われます。時価会計の導入と連結重視の決算がその柱ですが、それまでにもいくつかの経緯をたどっています。

日本の会計原則は、過去には資産を時価ではなく原価で表記するという特色がありました。これを取得原価主義といいます。 そのため、土地などの現在の時価は終戦直後の何百倍にもなり、帳簿には載らないのですが膨大な含み益を抱えている会社が多くあったのが事実です。

日本の企業は不況時、本業が儲からなくても保有している株や土地の一部を売れば経常利益・当期純利益を黒字にすることができました。そして好況時には、土地や株を担保に借金をし、その利払いで本業の儲けすぎを抑え、法人税を軽減するということができたため、こういったことは長年の間日本企業の強みといえました。

しかし、バブルの崩壊とともに含み益は消失し、逆に資産以上の負債が増えていきました。その一部は不良債権としてここ十数年の日本経済の不調の原因となっていると考えられています。そして 2003年3月期以降、それまでの会計ビッグバンの流れで行われた改革によって、取得原価主義のみでは評価できなくなりました

他には、税効果会計、金融商品会計、退職給付会計、減損会計、などが順次導入され、外国人投資家などから不透明と批判を浴びていた日本の会計基準は国際基準に変わっていきました。 金融商品を簿価で評価するなどの改革で、不良債権隠しが行われにくくなり、企業経営そのものも変革したといわれています。

企業が海外の会社と取引を行なったり、国際金融市場で資金調達を行なう際にも、世界的に通用する財務表を作成する必要が出てきました。そのため、1970年代から国際会計基準委員会が設けられ、国際会計基準が規定されたのです。

2000年代に入ってからは、国際会計基準審議会により国際財務報告基準が規定され、企業会計の管理方法がよりグローバル化しているといえるでしょう。会計ビッグバンが日本企業の海外事業拡大を後押ししており、経済活動がさらにグローバル化して、ますます多くの投資資金が国境を越えるようになっています。

会計ビッグバン導入の影響とは

会計ビッグバン導入の影響とは

会計ビッグバンの新しく導入された会計基準の中でも、特に大きな影響を与えたと言われるのが金融商品会計です。
時価主義に基づく金融商品会計の導入は、それまでの取得原価主義と大きく異なるため、企業は大幅な見直しを迫られることになりました。実際にどのような影響があったかを説明します。

金融商品会計では、企業が保有する有価証券は保有目的に応じて時価評価することが求められます。主な処理として、時価で貸借対照表に計上し、期中の評価差額は損益計算書に反映させる売買目的有価証券と、時価で貸借対照表に計上し、期中の評価差額は純資産の部に直接反映させるその他有価証券の2つです

これにより企業が保有する有価証券の含み損益が表面化することになりました。財務省が公表した「会計基準等の変更に伴う法人企業統計記入内容変更状況調査(平成13年度)について」によると、この金融商品会計の導入により平成13年3月期には対象企業3万5663 社全体として、評価損が約△6・4兆円計上されています。

これは同期の対象企業全体の税引前利益約7兆円の約90% を占めることになり、つまり本会計基準の導入により企業の税引前利益がほぼ半減したことになります。

しかし一方では、純資産の部に+5・7兆円の評価差額が計上され、本会計基準導入により純資産の部に与えた影響としては、おおよそ7千億円程度であったと推計することができます。

また、有価証券の時価評価は金額的な影響だけに留まらず、持合い株式の解消にも一役買っている現状があります。株式の持合いは安定的な株主構造等に寄与する一方で日本企業の閉鎖性の象徴とされていました。

金融商品会計の導入により持合い株式にも時価評価が適用されるようになると、持合い株式の時価変動が自社の経営に影響を与えることになります。非事業用資産である株式は、評価益のある場合は純資産を増やしますが資本利益率を下げる要因となることもあります。

逆に評価損がある場合には、資本は減るものの評価が下がり過ぎると減損損失を計上しなければならないということもあり、資本効率が重要視される国際的な流れの中で、不必要な株式保有は経営上のリスク要因とみなされるようになっています。
 

会計ビッグバンの国際的基準

このように金融商品会計は企業の財務利益や株主構造等に大きな影響を与えましたが、これら会計ビッグバンと呼ばれる一連の新会計基準の特筆すべき点は、日本の企業経営に投資家・株主重視という視点を取り入れるようになったことです。
株主至上主義や利益追求主義として解釈され社会に議論を投げかけることもありますが、何が正しいのかという答えはまだ出ていない状況であるといえるでしょう。

会計基準の国際的な標準化の流れは今後も続き、日本の社会も益々変化していくと予想することができます。しかし重要なのは、ひとりひとり何が大切かを見極め、自分自身の基準を持って行動することです。

この記事を書いたライター

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