グループ会社が複数あり、管理部門の業務をグループ全体で取りまとめて行うことで、効率的に運用するシェアードサービス会社というものがあります。このような会社では各種の管理部門の業務をグループ会社から請け負いますが、特に経理業務の請負を一括で担うシェアードサービス会社は幅広い経理の経験を身につける上で非常に有益です。今回はシェアードサービス会社で経理業務の経験を積むことのメリットを見ていきます。
そもそもシェアードサービスとは何なのかをまずは確認していきましょう。
シェアードサービスとは、グループ会社各社でバラバラに行われている業務を、一社に集約してしまって、そこで集中的に処理することを目的として行われるサービスです。なぜそのようなことをするのかというと、管理部門の業務は各社で多少異なるところはあるものの、基本的な業務の流れは同じなので、グループ会社それぞれで専門性のある人材を配置してオペレーションを行うのはグループ全体で見ると非効率的だからです。
経理に関して言えば、グループ各社に経理の仕訳作業・決算作業・開示資料の作成、管理会計の資料の作成に精通した人材をそれぞれで採用して定例業務に臨もうと思うとかなりの人数の経理スタッフが必要になります。
また、会計ソフトやそれに関連するシステムも各社でバラバラに導入することになるため、その工数や費用面も大きな負担です。
そこで、シェアードサービス会社にグループ各社の経理業務を集約してしまえば、経理周りの知見や経験の豊富なマネージャーやスタッフを一箇所にまとめて配置することが出来るのでチーム全体の効率やノウハウの共有、引き継ぎなどの体制面でも効率が良くなります。
また、会計ソフトなどのシステムの導入も全社同一のものを入れることができ、グループ全体の連結決算の作業も、グループ各社の決算資料を作成しているのがシェアードサービス会社であるため、各社の個別の決算資料を作成する流れで一気通貫で連結決算に移ることが出来ます。現在では特に上場会社を中心に、決算作業の効率化や開示資料の作成の迅速化のため、シェアードサービス会社で経理業務を行うことが増えています。
シェアードサービス会社では、グループ企業各社の決算を請け負っています。そのため、同じような業態のグループ企業各社であっても、それぞれ異なる会計論点があり、幅広い経理業務に関するノウハウが身につきます。
どうしても経理作業で係わっている会社が1社だけだと、棚卸在庫の必要ないビジネスだったり、固定資産がほとんど無い会社だったり、年金制度の無い会社だったりと、その会社次第で、実務経験を積めない分野がどうしても発生してしまいます。
その点、シェアードサービス会社を設立する程度の規模の会社だと、幅広く様々な業務を手掛けるグループ会社がそれぞれあり、転職などを経ることなく、幅広い経理経験を積むことが出来ます。
シェアードサービス会社にいると、グループ会社の各社の連結消去仕訳のための作業に大なり小なり係ることになります。
連結決算の作業は、そもそも連結決算をしなければならない会社が上場会社などのごく一部の大企業に限られるため、実務経験を積める機会は限られます。
その分、経理人材の市場を見たときに連結決算に対応できる人材が少ないので、連結決算に関する業務経験を多少なりとも積めるというのは人材としての希少性を高めることが出来ます。
他社の経理業務を受託する会社としては、記帳代行のように、グループ会社ではなく、純粋にサービスとして第三者(社)の経理業務を請け負う会社もあります。一方で、記帳代行のように他社から経理業務を受託する会社の場合、1仕訳いくらというような単位で業務を受託し、その作業当たりのコストに対しての収入が上回るようにする必要があるため、作業効率重視で、実際に行う業務も単純作業になりがちです。
もちろん、シェアードサービス会社も、経理業務を受託するという性質上、効率良く、正確に業務を行う必要があるのは当然ですが、グループ会社から業務を受託することになるため、基本的にはグループ会社全体で必要な管理コストという意味で必要経費という認識になります。そのため、頻繁にグループ会社から委託料の値下げを迫られたりということは通常起きません。
働き方としても、長い目線でシェアードサービス会社で経験を積んでキャリアアップしていくことが出来るので、業務が単調な作業になりすぎず、適度に新しい分野の業務に調整していく環境が整っていると言えます。
いかがでしょうか。シェアードサービス会社は経理として幅広い業務経験を積み、キャリアアップを図っていく上で有力な選択肢の一つです。ぜひ、今後のキャリアについて少しでも気になっている方は参考にしてみてください。