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売価還元法は小売業の在庫管理に有効!売上還元法のポイントまとめ

HUPRO 編集部
売価還元法は小売業の在庫管理に有効!売上還元法のポイントまとめ

スーパーなどの小売業では、食品や日用品や衣類などの多種多様な商品を、日々仕入れ、そして販売しています。

これら少量多品種の商品のすべてについて正確な在庫管理をするのは、きわめて難しいです。

そこで利用されるのが売上還元法です。売上還元法は類似性のある商品をグループ化してその原価率を求め、さらにその原価率を期末の売価合計額に乗じることで、期末棚卸資産の価額を計算する方法です。

本記事では、売価還元法の基本的なポイントについてご紹介していきます。

売価還元法は在庫評価方法のひとつ

企業会計上の在庫(棚卸資産)評価の方法としては、まず原価法と低価法の2つがあります。原価法は原価から棚卸資産を評価する方法で、低価法は原価法による評価額と期末時点での時価のうち低い方を評価額とする方法です。

さらに、原価法と低価法のそれぞれについて、以下の6種類の計算方法があります。売価還元法はその6種類の計算方法のうちの一つです。全体では12通りの方法があることになります。
・最終仕入原価法
・個別法
・先入先出法
・総平均法
・移動平均法
・売価還元法

これらの在庫評価方法の詳細につきましては、以下の2記事が参考になります。
参考:在庫評価って何?棚卸資産の評価方法についてご紹介
参考:在庫評価で利益が変わる?代表的な在庫評価方法を解説!

売価還元法について

売価還元法は棚卸資産の評価方法の一つです。売価棚卸法や小売棚卸法などと呼ばれることもあります。

売価還元法は、個別の単位原価によって棚卸資産評価をすることが非常に難しいケースで用いられることが多いです。例えば、無数の商品を取り扱うことになる小売業や卸売業、あるいは部品や製品の品目数が膨大な数にのぼる製造業のような業種です。

売価還元法では、品目や形状や性質や等級といった分類というよりは、値入率や回転率などの類似性によって棚卸資産をグループ化し、1つ1つ個別ではなくそのグループ単位で原価を求めます。

さらに、ここで求めた原価を期末在庫の売価合計額に掛けることで、期末在庫を評価することができます。このように売価合計額から取得原価を逆方向に概算する方法をとることによって、ある程度の正確性を保ちつつ、計算の手間を大幅に省略することができます。

売価還元法の計算手順

ここからは売価還元法の計算手順についてみていきます。3つのステップに分けて説明します。

STEP1:評価対象をグループ化する

まず、評価対象となる在庫商品などをグループ化します。どのようにグループ化するかについては、税法や会計でそれぞれ以下のような基準があります。

『(4) 売価還元法 値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法
売価還元法は、取扱品種の極めて多い小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用される。』
引用:財務会計基準機構|企業会計基準第9号 棚卸資産の評価に関する会計基準

『売価還元法により評価額を計算する場合には、その種類の著しく異なるものを除き、通常の差益の率がおおむね同じ棚卸資産はこれをその計算上の一区分とすることができるものとする。』
引用:国税庁|法令解釈通達第1款 原価法

最初の引用の「値入率等の類似性」とは、仕入原価する利益の割合が同等程度である、ということです。2番目の引用の「通常の差益の率がおおむね同じ」というのも、主旨としては「値入率等の類似性」と同様です。

つまり、食品ごとや日用品ごとというような品目による直感的なグループ化では必ずしもなく、利益率が同等程度のものでグループ化する、ということになります。

以下の具体的な数値の計算よりも、このグループ化のほうが、より正確に棚卸資産を評価するためには重要です。恣意的なグループ化になったりしないように注意する必要があります。

STEP2:原価率を求める

次に、グループごとに原価率を求めていきます。原価率の計算式を、まず分子と分母に分けて以下に示します。原価率分子は原価ベース、原価率分母は売価ベースです。
 原価率分子=期首商品原価+当期商品仕入原価
 原価率分母=期首商品売価+当期商品仕入原価+原始値入額+(値上額-値上取消額)-(値下額-値下取消額)

以上の2式から、原価率を求めます。原価率は100を掛けて%にしなくてもかまいません。
 原価率=原価率分子÷原価率分母

STEP3:期末評価額を求める

最後に、原価率を期末棚卸資産の売価に掛けると、グループごとの原価ベースの期末評価額を求められます。
 期末棚卸資産(売価)=原価率分母-当期売上高
 期末評価額(原価)=期末棚卸資産(売価)×原価率

式だけ見るとなんとなくややこしそうですが、適当な数値をあてはめて具体的に計算してみると、それほど複雑でも難しくもないはずです。

まとめ

売価還元法についてご紹介してきました。以下がこの記事のまとめです。
・売価還元法は在庫評価方法のひとつである
・少量多品種を扱う小売業や製造業などに適している
・まず利益率の近いものでグループ化する
・次に原価を求める
・最後に原価から期末評価額を求める

在庫評価の方法は全部で12種類あるため、業種などによって適切な方法を選択する必要があります。売価還元法が適している業種としては主に小売業が想定されますが、細かい部品などが多い製造業にも適しています。

売価還元法を使うときは、どんなグループ化をするかが重要になります。この記事を少しでも参考にしていただけたなら幸いです。

この記事を書いたライター

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