在庫評価とは、決算や毎月の損益計算をするため、在庫として存在している商品を金額にして算出することをいいます。本記事では、経理・会計担当者として押さえておきたい「在庫評価」について、その種類と利用用途を解説します。
在庫評価とは、決算や毎月の損益計算をするため、在庫として存在している商品を金額にして算出することをいいます。決算日の帳簿上の在庫の金額をいくらにするか、帳簿金額と実際に売れる見込みの金額のどちらを作用するのかを決定することが重要となります。
また、棚卸資産とは企業が販売するために保有している商品をはじめ、製品、原材料、仕掛品などをあわせた資産のことです。一般的に在庫と言われるものです。
在庫評価額は売上原価に商品数をかけた金額であり、1個100円の商品が10個あれば、在庫評価額は1000円となります。この1個100円は通常仕入れたときの金額となります。
この金額を算出するために、先入先出法や後入先出法、移動平均法などがあります。それによって在庫評価額は異なります。いつどのタイミングで、いくらで仕入れたものを、いつ販売するのかによって金額が異なるためです。これらの在庫評価方法を総称して棚卸資産の評価方法といいます。
さらに、決算日に在庫の棚卸しをしたとき、実際の数量が帳簿の数量よりも少なかったら「棚卸減耗」、この数量が少なかった分の帳簿金額を費用として処理するとき「棚卸減耗損」といいます。
在庫評価額の評価方法には先述の通りさまざまな方法があります。まず、原価法と低価法に分けることができます。原価法は、棚卸資産の取得原価をもとに計算する方法のことで、低価法とは、棚卸資産の評価を原価法による評価額と期末時価のどちらかの低い価格の方をとって評価額とする方法のことです。
原価法には先入先出法や移動平均法など6つがあります。ここでは、具体的にそれぞれの方法の概念と特徴をお伝えします。
届け出のない場合にはこの方法を取る一般的な計算方法です。期末に一番近い日に取得した仕入れの単価を期末棚卸資産の単価として計算します。価格変動が大きいときは、実際の取得価額との誤差が大きくなってしまう可能性もあります。
実際の取得価額をもとに、個々で評価するのが個別法です。これは、実際のものの流れと帳簿を完全に一致させることができるので、誤差が出ることはありません。しかし、計算を行う実務としては手間と労力が必要になります。
宝石や絵画など個別性が高く、個々の値段が高いものを計算する際に適した方法です。
実際のものの流れをきにすることなく、先に仕入れたものから売れていくと考えます。そのため、在庫は期末に取得した資産が残っているものと考え、取得価額で評価します。単価を割り当てるときに実際の資産の流れに一致しやすいのが特徴です。
前期の繰越資産と当期中に取得した資産の総額を総数量で割り、平均価額を求めます。この平均価額を取得価額として計算するのが総平均法です。一定期間ごとに区切りをみつければ、年度でなく月ごとに計算することも可能になります。会計処理が簡単に済むことが利点といえます。
資産を取得するたびに、前回の平均価額と在庫数量に加える形で計算をし、資産取得をするごとに平均取得価額を求めることになります。期中にも随時評価額を算出する方法ですので、会計処理は難しくなります。
販売価額に原価率を掛け合わせて算出します。棚卸資産に売価が付随されていないと計算できない方法です。おもに百貨店や小売店などで使用される計算方法で、製造業においても使用されます。
先入先出法とは逆に、「後から仕入れた商品を先に売っていく」と考え、期末に残っているのは、最も古い在庫であるとみなして、在庫を評価する方法です。この方法は、約10年前に国際会計基準(IFRS)へのコンバージェンスのため、廃止されました。
国際会計基準(IFRS)では、「B/Sを、できる限り公正な価格(≒時価)で評価する」ことが重要視されます。それに対して、後入先出法で評価された在庫は、時間が経てば経つほど、現在の時価との差が大きくなる一方で、公正な価格からは、程遠くなってしまいます。
このように、国際会計基準(IFRS)の考え方と後入先出法の考え方に大きなズレが存在するため、国際会計基準(IFRS)では、後入先出法は認められていないのです。日本においても、日本の会計基準を国際会計基準(IFRS)へ近づけていく試みの一貫として、後入先出法は廃止となりました。
評価方法を決定するためには、評価方法の届け出が必要になります。もっとも一般的な「最終仕入原価法」を取り入れる場合は届け出が必要ありません。事業開始年度の確定申告書提出期限までに税務署に届け出をします。
この評価方法は、一度選択して届け出ると、特別な理由などがない限りは同じ方法で評価しなければなりません。一般的に3年経過し、正当な理由があれば評価方法の変更が認められるようになります。変更する場合は変更承認申請書を税務署に提出しなければなりません。
在庫評価の方法については、会計と税務で違いがあります。
会計上では、低価法が強制適用となっているのに対し、税務上、低価法は任意適用、つまり原価法と低価法のどちらを採用してもOKとされています。会計上も税務上も、低価法を採用している場合には、評価損は、税務上でも損金として認められます。
しかし、税務上、原価法を採用している場合には、評価損は損金として認められません。この場合、税務上、評価損が認められるには、激しい陳腐化などの厳しい要件を満たしていなければならないのです。とはいえ、時価の判定が難しく、事務手続きが煩雑になるため、税務上は原価法を採用している企業も多くあります。
以上、在庫評価の方法とその申請について解説しました。在庫の評価方法は、企業の利益を決める重要なポイントです。一度決めた評価方法を頻繁に何度も変更することはできないので、どの方法が最適なのか、しっかり検討して決めましょう。
評価方法や、申請について国税庁のホームページに細かい規定などが記載されているので確認するか、税務署などでも質問対応してもらうことができます。