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敵対的買収とは?友好的買収との違いや買収の実情について解説!

HUPRO 編集部
敵対的買収とは?友好的買収との違いや買収の実情について解説!

敵対的買収という言葉をきいたことがあるという人はとても多いと思います。最近でも、2019年1月末日に、伊藤忠商事がスポーツウエア大手デサントに対してTOBを行なうことを発表したことや、同年11月には文具最大手のコクヨがぺんてるに対してTOBを発表し話題となりました。敵対的買収という言葉のイメージが悪いため、敵対的買収は悪いものというイメージが先行していますが、敵対的買収は必ずしも悪いものではありません。今回は、そんな敵対的買収についてわかりやすく解説していきます。

敵対的買収とは

敵対的買収とは、買収の対象企業の取締役や親会社の事前の同意を得ずに、既存の株主から株式を買い集めて、対象企業を買収することを言います。一方、事前に同意が得られている場合の買収は友好的買収と呼ばれます。
敵対的買収という言葉のイメージは悪いものの、敵対的買収自体は企業を買収するための一つの方法であるので、その行為自体に善悪の含意はありません。

敵対的買収では、不特定かつ多数の者に対して、公告によって株券等の買付け等の申込みまたは売付け等の申込みの勧誘を行い、取引所金融商品市場外で株券等の買付け等が行われます。

敵対的買収の場合、株主総会において、重大な影響力を持つことができるようになる対象企業の株式の3分の1、もしくは過半数の取得を目標として買収活動が行われることが普通です。

発行済株式数の3分の1の株式を保有することによって、株主総会の特別決議を拒否することができるようになり、過半数を取得することによって、株主総会において重要な決議に対して大きな影響力を行使することができるようになります。

敵対的買収を仕掛けられた経営陣にとっては、この買収活動は敵対的であるとしても、経営陣以外の株主や顧客、従業員にとっては友好的である可能性もあります。したがって、敵対的買収の脅威は、経営者に対する脅威であって、企業価値に対する直接的脅威であるとは言えません

敵対的買収は必ずしも悪いとは限らない

買収対象企業の経営者や従業員は、買収後のポストや雇用条件等への不安から反対することが普通であるものの、敵対的買収が行われた結果、企業価値はむしろ向上することもあります。

敵対的な買収が行われることが公表されたあと、買収に関する経営陣と買収活動を行なう相手との間での攻防を通じて、買収対象企業の内在価値や経営に関する問題点が浮き彫りとなり、結果として、経営効率の向上が促進されるからです。

ただし、敵対的買収の実施が発表された場合、株式の買い付け対象企業の取締役会は、10営業日以内に賛成、反対、中立、留保などの意見表明を行う必要があります

既存株主は、敵対的買収を通じて企業価値が高まると判断すれば積極的にTOBに応じます。しかし、買収によって株主価値が毀損(きそん)される懸念があれば、むしろ買収を失敗させた後の経済的利益を期待して現経営陣を支持することもあります。

敵対的買収の防衛策

敵対的な買収者から狙われやすいのは、会社の資産価値と比較した場合に、時価総額が割安である会社です。たとえば、過剰に現預金を保有していたり、株式・土地等に含み益があったりするなどの場合には、狙われやすくなります。また、経営陣の間で対立があることから、支配権の獲得が比較的容易と見られる会社も敵対的買収の対象となりやすくなります。

敵対的買収から自社を守るためには様々な方法があります。最大の防衛策としては、企業価値を高める戦略を遂行し、投資家向けの広報(IR)を十分に実施して株主の理解を得て、企業価値や株主価値を日々高めておくことです。さらに、取引先や系列企業、あるいは従業員持ち株会に自社の株式を保有してもらうなどの方法も考えることができます。

買収を仕掛けられる前に防衛策を

しかし、こうした行動をとっていたとしても、敵対的買収を絶対に仕掛けられないということはありません。内部留保を成長資金として、設備投資やM&Aに活用することも防衛のための有効な手段となります。他にも、配当・自社株買いを行なうことで、利益を株主に還元するなど株主が支持する政策を粛々と実行することも重要です。

また、日本においては、買収を仕掛けてきた相手の持ち株比率を下げることを目的として、既存の株主に新しい株式を発行して買い取ってもらう権利である、新株予約権を割り当てておく方法がよく利用されています。
これによって、買収を仕掛けられたとしても、新株予約権を行使することで買収を仕掛けてきた相手の持ち株比率を下げ、買収する意味を失わせます。この方法は、ポイズンピルとも呼ばれています。他にも、特定の株主に重要事項の議決に対する拒否権を付与する黄金株と呼ばれる手法も活用されています。
ポイズンピルについて詳しくはこちらをご覧ください。

関連記事:ポイズンピルとは?企業買収防衛策には他に何がある?

敵対的買収って何?わかりやすく解説します!

敵対的買収の実情

敵対的買収の成功例は少ないのが実情です。やはり日本では敵対的買収は株主や従業員、労働組合の賛成を得にくいことが多く、現状の株価よりも高い買い付けを提示されたとしても、既存株主は株売却に応じないケースが多々あります。

仮に株主の賛同を得て敵対的買収を行ったとしても、例えば経営陣を入れ替えた場合、働く従業員が納得しないと、反発し上手く経営がいかないという可能性も十分に考えられ、リスクがある方法と言えるでしょう。そのため、企業買収の際は友好的なM&AやTOBを行うのが良いと一般には考えられています。

敵対的買収の不成立事例

上記でもご説明したように、敵対的買収はなかなか成功が難しく、過去失敗に終わったケースも多々あります。実例をいくつか見ていきましょう。

ドン・キホーテとオリジン東秀の事例

2005年、ドン・キホーテは新たなビジネスの展開を模索し、そんなときに注目したのがコンビニエンスストアでした。新たにコンビニチェーンを展開することを考えていて、そのときにオリジン東秀と業務提携することを検討していました。オリジン弁当を展開する会社と協力することによって、コンビニを展開するときに有利に運べると考えたのです。しかし、オリジン東秀側はドン・キホーテ側の提示を断り、そのため、ドン・キホーテから敵対的TOBをすることになったのです。

このときにオリジン東秀はTOBを避けるためにイオングループに助けを求め、その結果、イオングループが対抗TOBを実施することになったのです。ドン・キホーテとのTOBは不成立に終わり、代わりにオリジン東秀はイオングループの傘下に入ることになりました

スティール・パートナーズとブルドックソースの事例

米投資ファンドであるスティール・パートナーズは2007年にブルドックソースに対して敵対的買収を実施しました。このときにブルドックソース側が買収防衛策を実施しましたが、それは不公平な方法であるとしてスティール側が差止めを申し立てました。最終的に裁判所で決着することになり、東京地裁と東京高裁はいずれもスティールの主張を退けるという結果になり、ブルドックソース側による防衛策は必要性と相当性があるものとして認められました
このように敵対的買収に関しては裁判沙汰にまで発展するケースもあります。

まとめ

敵対的買収は、企業価値を最大化するという意味では正当化される行為です。しかし、日本では、敵対的買収は良くないものとして多くの場合認識されており、買収を仕掛けられた経営陣や従業員が激しく反発することが多いのが現状です。

敵対的買収から企業を守るためには、買収を仕掛けられる前にきちんと防衛策を巡らせておくことが重要です。どんな方法にせよ、敵対的買収に対して準備なしで対抗することはできません。したがって、内部留保を積極的に投資に回したり、利益を株主に還元するなどすることで、日頃から利害関係者と良好な関係を築いておくことが非常に重要です。

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