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仮想通貨の勘定科目や会計処理はどのようにする?

公認会計士 大国光大
仮想通貨の勘定科目や会計処理はどのようにする?

少し前までビットコインを代表とする仮想通貨が話題となりました。現在でも大手証券会社が仮想通貨に乗り出すほどであり、まだまだ仮想通貨の需要があると言えます。しかし、勘定科目や会計処理はどのようにするのでしょうか。今回は仮想通貨の勘定科目や会計処理について現役公認会計士が解説します。

仮想通貨とは?

仮想通貨とは、読んで字のごとく仮想の通貨です。手元には見えませんが、インターネット上で流通しているお金のことを言います。しかし、現在はインターネットのみではなく大手家電量販店で使えたり、飲食店で使えたりと仮想というよりもペーパーレスの通貨とも言えます。

仮想通貨の勘定科目は?

仮想通貨はその保有目的によって勘定科目が異なります。

売買目的の仮想通貨

売買目的の仮想通貨は投資その他の資産で処理されます。勘定科目は投資仮想通貨等を使います。
もしも仮想通貨を売買して損益が発生した場合は営業外損益の適切な科目で処理します。わかりやすいように仮想通貨売却損益等のような科目にするとよいでしょう。
なお、売買目的であるかどうかは購入時の稟議書や取締役会議事録等で判断します。

資金決済目的の仮想通貨

資金決済目的の仮想通貨は流動資産に計上します。単純に仮想通貨等の勘定科目を使います。仮想通貨の売却により損益が発生した場合は営業外損益に計上され、仮想通貨売却損益等の勘定科目を用います。

交換業やトレーダーの場合

交換業やトレーダーの場合は本業の資産となりますので、棚卸資産に計上し、仮想通貨等の勘定科目で処理します。売却による損益が出た場合は売上高に計上されます。定款に仮想通貨の売買が事業の目的に記載されているかどうかで判断されます。

仮想通貨の取得原価は?

仮想通貨を貸借対照表に載せる際にどのような金額を取得原価として計上するのでしょうか。
「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」に準じて会計処理を行います。

参考:「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」

仮想通貨の取得原価は移動平均法もしくは総平均法で計算されます。原則は移動平均法ですが、煩雑であるため総平均法でも継続適用していれば問題ありません。移動平均法というのは、仮想通貨を購入した都度その平均単価を算出して売却原価とする方法です。

一方で総平均法は決算時に今まで取得した仮想通貨の単価を合計して原価を算出する方法です。移動平均法の方がリアルな単価が計上される反面、毎回単価計算をしなければならないため煩雑となります。反対に、総平均法は決算時に一括して評価を行えるため煩雑さが亡くなります。
とはいえ、どちらの方法にしても払い出し数量や取得価額は記帳しておかねばならないため、大変だという事実は変わりません。

仮想通貨を使用した際の会計処理

仮想通貨はあくまで通貨ですので当然資金の決裁にも使えます。では、仮想通貨で何かを購入した際の仕訳はどのように行うのでしょうか。以前から保有している仮想通貨で10,000円の消耗品を購入したとします。すると、借方は10,000円の消耗品費で処理することは想像できるでしょう。では借方も10,000円の仮想通貨という処理になるかというとそうではありません。その時の時価を調べて時価と取得原価との差額を仮想通貨売却損益で処理します。

このように処理しないと売却損益分がずっと仮想通貨勘定に残ったり、反対に仮想通貨勘定が足りなくなったりするからです。よって、仮想通貨使用時の時価は常に把握していなければならないので会計処理は想像以上に煩雑であることがわかるでしょう。

決算時の仮想通貨の処理は?

決算時に仮想通貨は原則時価評価します。売買目的の有価証券と同じような処理方法となります。時価評価する仮想通貨の要件は以下の通りです。

・継続的に売買の価格が公表され、かつ、その公表がされる売買価格等がその仮想通貨の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること
・継続的に前号の売買価格等の公表がなされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること
・次に掲げる要件のいずれかに該当すること
イ 第一号の売買価格等の公表が当該内国法人以外の者によりされていること
ロ 前号の取引が主として当該内国法人により自己の計算において行われた取引でないこと

今まで仮想通貨の取扱いは不明であったため会計事務所によって取り扱いが異なっていましたが、税務署も一定の指針がないと納税者に指摘することが困難であったためこのような基準が作られました。

では、活発な市場が存在しない仮想通貨の場合はどのように処理をするのでしょうか。答えは、原価のまま評価をするということです。市場がないのに時価で評価をすることは客観性の観点から決算が歪んでしまうことを恐れたのでしょう。なお、この時に用いる原価というのは先にお話をした移動平均法や総平均法を用いることとなります。

まとめ

このように仮想通貨は色々な時点での時価を把握しなければなりません。また、取得原価算定の為に常に帳簿をつけておかねばなりません。
よって、仮想通貨を保有している企業は会計処理が煩雑となりますので取得目的は明確にして、無駄に仮想通貨を保有しないようにした方が良いとも言えます。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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