現在、経理職にも二極化が進んできています。特に税理士は、大手税理士法人の勢いが増している一方で、小規模な事務所では顧客を獲得するための対策がますます重要な課題となっています。本記事では、そんな税理士の二極化の要因や今後の課題をご紹介します。
データが古くなってしまいますが、総務省・経済産業省が公表した経済センサスのデータによると、平成21年の税理士事務所の数は29,097ですが、平成24年では22,127となっており、3年の間に約7,000も減少していました。しかし、平成26年には28,427となり、徐々に戻ってきていることがわかります。
その一方で、税理士法人の数は同年で1,955、1,845、3,145と推移しています。
つまり、近年の税理士事務所の減少は個人事務所が一時的に大幅な減少をみせたことによるもので、法人数は1,300ほど増加しています。税理士法人が個人の税理士事務所からの人材を受け入れ、流動化が進んだ一方で、個人事務所を持つ人も増えたと考えられます。現に、個人の税理士事務所の数は平成21年の27,142人から平成24年の20,282人と、3年間で大きく減少したものの、その後平成26年には25,282人と再び増加傾向となっています。
このような形で税理士業界が時代の波に揺られて変わっていった発端をたどると、2002年の4月に施行された税理士法の改正までさかのぼります。
この法改正では、従来では個人事業だけに限られていた税理士の法人化が可能になったり、報酬規定が撤廃されたり、綱紀規則の改定によって自由な広告活動ができるようになったりと、さまざまな形で大きな変更が行われました。
この法改正をきっかけに、大規模税理士事務所は人材獲得や広告活動の面で有利になったことから、成長を遂げていきました。この影響は営業力や提供するサービスにも及び、その勢いを強くする要因となっています。
大きな税理士法人が増員をして、サービスを拡大する中で、比較的小さな個人事務所が活動を続けていくためには、どのような差別化を図ると良いのでしょうか。
他の税理士事務所とは違うサービスが提供できれば、そのサービスを必要としている顧客を高い確率で獲得できます。もちろん、単に違うサービスを提供するだけでは、顧客を獲得することはできません。どのようなニーズがあるのかを分析して、それに応えられる形での差別化を実現する必要があります。
近年高まっているニーズの例としては、外資系企業に関する業務があげられます。外資系企業が日本に進出する際には、法人税務に加えて外国人従業員の個人申告などの対応が必要となります。昨今では外資系企業の進出が増えていることから、外資系企業に関する業務は、税理士にとっても注目すべき分野となっています。
他の税理士事務所が積極的にやろうとしない分野に注目することも、有効な差別化につながる可能性があります。例えば、新たに設立した企業に対する業務は、顧問料に期待が持てないことや、短期間に廃業してしまう可能性があることから、敬遠する税理士もいます。その一方で、法人を設立したばかりの企業は税務に不慣れな場合が多く、ニーズが高い分野です。
また、顧客とのやりとりをしていく中で「最近はどのようなニーズがあるのか」「事務所に対して、顧客が期待しているポイントは何か」といったことに気がつくこともあります。顧客の話に良く耳を傾けることで、自分の事務所にとって必要な差別化の形が見えてくるかもしれません。
個人の税理士事務所にとっては厳しい状況が続いていますが、顧客のためにどのようなサービスが提供できるかを真剣に考えることで、活路が見つかる可能性があります。細かな情報にも注目し、真摯にニーズを探る姿勢が、有効な差別化につながるといえるでしょう。
顧問先の経営者は口には出さないかもしれません。しかし毎月の顧問料は費用対効果が少ないというのが経営者の考えの多数を占めるようです。今後は、決算申告もインターネット上で自動化されて、 税理士および会計事務所がやる業務ではなくなることは間違いありません。
同様に、社会保険労務事務所や中小企業診断士事務所、さらには、司法書士・行政書士事務所も中小企業の経営者から、経営相談を持ちかけられる事でしょう。そんな時に必要なのが企業の経営ドクターとして経営アドバイスができる税理士ではないでしょうか?
金額を安くして差別化を図ろうとする税理士事務所もありますが、この傾向を強めると、かえって経営を厳しくしてしまう可能性があるので、避けた方が良いでしょう。価格で他の事務所に差をつけようと考えるのであれば、まずはその金額でも利益が得られる体制を確立させる必要があります。
小さな税理士事務所では、大きな事務所よりも対応できる業務が限られてしまいます。そのため、どのようなサービスを提供できるかを絞り込んで、入念に検討することが大切です。