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建設業経理士とは?検定試験の内容・取得するメリット・難易度・合格率を解説!

HUPRO 編集部
建設業経理士とは?検定試験の内容・取得するメリット・難易度・合格率を解説!

皆さんは「建設業経理士」という資格をご存知ですか?建築業界における会計のスペシャリストとも称される建設業経理士ですが、本記事では、そんな建設業経理士についてご紹介します。

建設業経理士とは?

建設業経理士とは、建設業関連の会計知識と会計処理の能力をもった、建設業経理のプロのことです。建設業経理士になるためには、建設業経理検定試験に合格しなければいけません。建設業経理独自の会計ルールを理解し、帳簿の作成や決算処理などの会計処理や書類の作成・管理などの事務処理を行います。

建設業経理では、建設業独自の会計ルールに沿って会計処理を行います。
また、商業簿記では「売上」と呼ばれるものが、建設業経理では『完成工事高』と呼ばれるなど、用語が異なることも特徴のひとつです。
このように、基本的な商業簿記の知識だけでなく、建設業についての専門的な知識や理解も必要となります。

会社によっては、資格手当として毎月数千円が支給されるところもあります。また、専門性の高い資格のため、簿記2級からのステップアップ資格としても注目を集めている資格です。

主な就職先

建設業経理士の主な就職先は、建設会社や工務店など、建設業および建設業関連の企業です。個人経営から中小企業、大企業まで規模はさまざまです。建設業の企業は全国にあるため、就職先は幅広くあります。

仕事内容

建設業経理士は、建設業独自の帳簿作成、決算処理、建設業独自の書類作成・管理などを行います。建設業というと肉体労働のイメージを持つ方もいるかもしれませんが、あくまで経理職なのでオフィスワークです。男女問わず活躍されています。

建設業経理検定試験とは

建設業経理検定試験とは、国土交通省に登録経理試験の実施機関として登録された一般財団法人建設業振興基金が実施する検定試験です。

主に建設業の企業内で経理部門に従事する方を対象に、建設業経理に関する知識および処理能力の向上を図ることを目的としています。

検定試験は内容及び程度によって1級から4級に分かれており、1級と2級は建設業経理士検定試験、3級と4級は建設業経理事務士検定試験です。100点満点中、70点以上で合格となります。

平成18年の建設業法施行規則改正により、登録経理試験制度が創設されて以降の1・2級合格者は建設業経理士となり、それ以前の合格者は建設業経理事務士となります。

受験資格

建設業経理検定試験は、誰でも受験できます。年齢や学歴などによる受験資格はありません。

試験日程

建設業経理検定試験は、毎年3月と9月に実施されています。
3月は1級(3科目)と2〜4級、9月は1級(3科目)と2級です。3級と4級は年に一度しか受験できない点に注意しておきましょう。

令和3年(2021年)の試験日 9月12日(日)
令和4年(2022年)の試験日 3月13日(日)

試験費用

建設業経理検定試験の試験費用は以下の通りです。

1級1科目 7,410円
1級2科目同時 10,600円
1級3科目同時 13,680円
2級 6,280円
3級 5,250円
4級 4,220円

インターネット受験申込の場合の受験料の支払方法は、クレジットカードまたはコンビニ決済のいずれかです。書面による受験申し込みの場合は、ゆうちょ銀行または郵便局での払い込みとなります。

申し込み方法

インターネット受験申込と書面による受験申込ができます。申込書は、財団及び全国の都道府県建設業協会の窓口で配布されています。申し込みの際には顔写真が必要です。

受験申込には申し込み期間が設定されています。受験申込期間を過ぎると、申し込みはできません。また、申込後に受験級及び受験科目の変更はできません。

出題内容

建設業経理検定試験1級~4級の出題内容は以下の通りです。

1級 建設業原価計算、財務諸表、及び財務分析
2級 建設業の簿記、原価計算及び会社会計
3級 建設業の簿記、原価計算
4級 初歩的な建設業簿記

建設業経理士検定試験(1・2級)、建設業経理事務士検定試験(3・4級)の出題範囲は、建設業振興基金ホームページの下記ページで確認できます。

検定試験の出題範囲等

建設業経理士検定試験1級の注意点

建設業経理士検定試験1級は、原価計算・財務諸表・財務分析の3科目から成る科目合格制をとっており、3科目全てに合格すると1級資格者となります。
1級と他の級との同日受験はできません。同日での1級の複数科目受験は可能です。

1級各科目の合格は、合格通知書の交付日から5年間有効です。
合格通知書の交付日を基準日として、それ以後5年の間に行われる試験において、残りのすべての科目を取得すれば「1級建設業経理士」となり、合格証明書が交付されます。
有効期間内に3科目全てに合格できなかった場合、期間が満了した科目は合格が消滅します。1級取得のためには、合格が消滅した科目を再度受験する必要があります。

建設業経理士資格を取得するメリット

建設業経理士資格は、建設業への転職で有利になります。採用時に評価されるのは2級以上です。3級・4級については、基礎的な内容で合格率も高いため、高く評価されることはありません。会社によっては、資格を取得することで手当が支給されることもあります。

また、建設業経理士資格を取得した労働者を雇用することは、企業側にとっても役に立ちます。

経営事項審査において、建設業経理士資格を取得した労働者がいることで加点されます。経営事項審査とは、建設会社の経営状態をチェックする審査です。公共工事の入札時に審査を受ける必要があり、取引先からも審査を求められることがあります。
加点基準は、1級で1ポイント、2級で0.4ポイントです。税理士・公認会計士も1ポイント加算されます。つまり、建設業経理士1級は、税理士・公認会計士と同じ評価であり、建設会社にとって重要な資格です。

建設業以外では役に立たない

建設業以外の経理転職において、建設業経理士資格を取得していても高い評価が得られることはありません。建設業経理士試験で問われるのは建設業に特化した内容が中心なので、建設業以外の業種では役に立たないからです。

簿記とのダブルライセンスもおすすめ

建設業経理検定と簿記検定は、出題範囲に共通点が多く、同時に取得を目指すと効率的です。建設業経理検定2級なら簿記2級、建設業経理検定1級なら簿記1級の同時取得を目指しましょう。初めて資格取得目指す場合は、簿記から勉強することをおすすめします。

「簿記検定」と「建設業経理検定」の違い

「簿記検定」は、企業の経理はもちろん、営業・販売などあらゆるビジネスシーンに役立ちます。なかでも「日商簿記2級」は、毎年15万人以上が受験する、日本でもっとも有名な簿記資格。経理・財務の求人の多くが、日商簿記の資格を持っている人を優遇しています。

一方の「建設業経理検定」は、建設業の会計処理やコスト管理を身につける試験です。建設業界では「奨励資格」となっているため、建設会社や工務店などへの就職・転職活動では、強力なアピールツールとなります。

建設業経理検定試験の合格率・難易度

過去5回に実施された、建設業経理検定試験各級の合格率は以下の通りです。
・建設業経理士検定試験1級(財務諸表) 20.5%~27.8%
・建設業経理士検定試験1級(財務分析) 20.8%~37.1%
・建設業経理士検定試験1級(原価計算) 11.2%~25.6%
・建設業経理士検定試験2級 30.8%~62.5%
・建設業経理士検定試験3級 61.7%~70.4%
・建設業経理士検定試験4級 76.8%~86.5%

建設業経理士検定試験1級(財務諸表)の合格率

第29回(令和3年 9月12日実施) 27.8%
第28回(令和3年 3月14日実施) 21.9%
第27回(令和2年 9月13日実施) 24.2%
第26回(令和元年  9月8日実施) 20.5%
第25回(平成31年 3月10日実施) 24.4%

建設業経理士検定試験1級(財務分析)の合格率

第29回(令和3年 9月12日実施) 37.1%
第28回(令和3年 3月14日実施) 20.8%
第27回(令和2年 9月13日実施) 32.6%
第26回(令和元年  9月8日実施) 30.3%
第25回(平成31年 3月10日実施) 26.6%

建設業経理士検定試験1級(原価計算)の合格率

第29回(令和3年 9月12日実施) 24.7%
第28回(令和3年 3月14日実施) 11.2%
第27回(令和2年 9月13日実施) 25.6%
第26回(令和元年  9月8日実施) 16.0%
第25回(平成31年 3月10日実施) 23.1%

建設業経理士検定試験2級の合格率

第29回(令和3年 9月12日実施) 39.5%
第28回(令和3年 3月14日実施) 41.1%
第27回(令和2年 9月13日実施) 62.5%
第26回(令和元年  9月8日実施) 41.1%
第25回(平成31年 3月10日実施) 39.5%

建設業経理士検定試験3級の合格率

第39回(令和3年 3月 14日実施) 70.4%
第38回(平成31年 3月 10日実施) 64.3%
第37回(平成30年 3月11日実施) 63.7%
第36回(平成29年 3月12日実施) 61.7%
第35回(平成28年 3月13日実施) 67.2%

建設業経理士検定試験4級の合格率

第39回(令和3年 3月 14日実施) 86.5%
第38回(平成31年 3月 10日実施) 78.5%
第37回(平成30年 3月11日実施) 76.6%
第36回(平成29年 3月12日実施) 76.5%
第35回(平成28年 3月13日実施) 77.2%

「簿記2級」と「建設業経理士2級」どちらが難しい?

「簿記2級」より、「建設業経理士2級」の方が難しいといわれています。なぜかというと、建設業経理検定2級では、「日商簿記2級の知識」+「建設業会計の知識」が必要になってくるからです。

日商簿記2級と学習範囲が重複するところも多く、「簿記2級」を取得してから「建設業経理士2級」にチャレンジする方が多いです。
2級に限らず、1級でも日商簿記1級の知識が必要になってきますので、事前に勉強してから取り組むとスムーズに進められると思います。

1級・2級の勉強時間の目安

建設業経理士検定試験に、独学で合格を目指す場合の勉強時間の目安は以下の通りです。
・1級 500時間(半年~1年)
・2級 150時間(2~3か月)

1級は原価計算・財務諸表・財務分析の3科目に合格する必要があるため、勉強時間が長くなりやすいです。一度に3科目受験することも可能ですが、1科目・2科目に分けて受験・勉強するのもよいかもしれません。

すでに簿記1級・2級に合格している場合は、もっと短い期間で合格できるでしょう。通学講座や通信講座を利用すれば、効率良く勉強できるため勉強時間を短くすることができます。

この記事を書いたライター

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