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主幹事証券って何?どのように主幹事証券を決めるの?

公認会計士 大国光大
主幹事証券って何?どのように主幹事証券を決めるの?

主幹事証券というのは、上場のための企業へのアドバイスや株式発行の際の募集・売り出し、上場のための審査をする証券会社のうち最も企業に密接であり他の幹事証券をひっぱる証券会社です。主幹事証券の選び方によって上場までの道のりが変わるほど、重要なポジションであると言えます。今回は、そんな主幹事証券について現役公認会計士が解説します。

主幹事証券の決め方は?

主幹事証券を決める際には、全国にある証券会社から企業が選んで決定をします。上場担当者が以前付き合ったことのある証券会社があればそこに依頼することも多いですし、監査法人や他社からの紹介で証券会社が決まることもあります。また、会社四季報を見て上場を勧めるために飛び込みで営業をする証券会社もあるほどです。

証券会社と一口に言っても実はものすごく多くの会社があり、決めるのも難しいとも思えます。しかし、上場のための専門部隊がいる証券会社は限られており、その中から選ぶこととなります。ここからは具体的な証券会社のメリット・デメリットをお話するのでそれらを総合的に勘案して決めることとなります。

大手の証券会社のメリット

大手の証券会社のメリットは何と言っても上場に関するノウハウや経験が豊富なことです。最近のIPO銘柄を見ていると、ほとんどの会社が大手主幹事証券に頼んでいることがわかります。大手が主幹事になり、ノウハウが増え、また主幹事になるというサイクルとなっているため、この体制はまだまだ続くでしょう。

また、大手の証券会社では審査もある程度厳しいと言えます。そんな厳しい審査にも耐えて上場したということは、市場の目もそのように判断してくれる可能性が高いです。さらに、スタッフの数も豊富ですので同時進行で何社もIPOに関わることができますが、中小の証券会社では担当者が限られているため手一杯の可能性もあります。

中小の証券会社のメリット

中小の証券会社のメリットとしてわかりやすいのはコンサルフィーが安価であることです。証券会社へのフィーはそれなりにかかりますし、上場すれば成功報酬としてさらに費用がかさみます。上場すること、また維持するには相当な費用がかかるので、少しでもコストが低いのは企業にとってはありがたいでしょう。

また、中小の証券会社は審査が大手とはポイントが若干違うように見受けられます。誤解のないように言いますが、だからと言って簡単というわけではなく、どんな証券会社でのIPOであっても難しいですし、何より証券取引所の審査を通らねばなりません。ですが、ある程度の融通を聞いてくれるというのが本音でしょう。
さらに、中小の証券会社は担当者が地域ごとにおおよそ限られています。よってその担当者は様々な企業を経験しているため、経験値が高いと言えます。また、ある程度担当者も指名できるため、企業にとってはありがたいことでしょう。

証券会社によっては上場できない市場がある

正確には“扱っていない市場がある”ですが、企業が上場したい市場によっては証券会社が決まってしまう場合があります
例えば、東証ではなく名証への単独上場であれば大手証券会社では扱っていないことがあります。これは、規模が小さすぎて株式の流動性が低いことなどから証券会社として扱わないこととしている場合があるからです。その点、中小の証券会社ではそのような小さな市場でも取り扱っているため必然的に中小の証券会社に依頼することとなるでしょう。
また、最近は東証プロマーケットというプロ向けの市場も存在します。このプロマーケットとなるとさらに証券会社は絞られてきて、ほぼプロマーケットしか上場支援をやっていない証券会社を選ぶことになります。

主幹事証券によって上場後は何か変わる?

主幹事証券の特色は今までお話した通りとなります。それでは主幹事証券によって上場後は何か変わるのでしょうか。
まず、資金調達のために上場するので、社長たちが持っている株を市場に放出したり、新たに増資をしたりして資金調達を行います。そのためには株主が必要となりますが、大手であれば顧客も豊富ですので株を売りやすいと言えるかもしれません。しかし、現在、IPO銘柄は抽選となるほど人気があるので、どの証券会社が主幹事だとしても基本的には株は全て売り切ってしまうでしょう。そういう意味ではどの証券会社も同じと言えるかもしれません。
また、上場後はより上位の市場に鞍替えするために証券会社が継続してついてくれていることが多いです。例えばマザーズに上場している会社が東証1部に鞍替えするためには再度審査が必要となります。証券会社の相性がよければそのまま同じ証券会社となりますし、変えたいと思えば全く違う証券会社に変えることもあります。
ここで、東証1部だから大手でなければならないというわけではなく、中小の証券会社でも同様の業務は行っています。

これらを総合して、上場前、上場後合わせてどこの証券会社が良いかは先にお話したメリット・デメリットを勘案して、担当者との相性によって決めると良いでしょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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