会社で、購入する経費や備品の中には、今日購入して、明日には捨ててしまうような新聞紙から、いつも、だいたい一定数の数が会社にあるように買い置きしておく、文房具や切手類もあります。切手は、使用期限がないので、何年も保管されている場合も珍しくないようです。
切手の特徴として、切手には金額が表示されていますから、1枚いくらかがわかります。切手は、換金性が高く、お金の代わりに決済手段として使うこともできますから、資産として扱ってもいいのでしょうか?そこで、切手の仕訳についてまとめてみました。
そもそも、仕訳とは何でしょうか?
仕訳とは、会社の取引を5つの要素(資産、負債、資本、費用、収益)に分類してから、勘定科目を指定し、借方(かりかた)と貸方(かしかた)に分けて、伝票に記入することです。
伝票の左側が借方、右側が貸方です。この仕訳には、ルールがあり、どの会社でも同じルールを使って仕訳を起こします。このルールを簿記と呼び、世界共通のルールです。
しかし、世界共通のルールであっても、各国の商習慣や税金の制度は様々です。そこで、各国の実情に合った仕訳を選ぶことができ、また、経理に十分な時間と労力を割くことが難しい会社でも仕訳が起こせるように、簡便な仕訳も選ぶことができます。
仕訳を起こすと、5つの要素ごと、勘定科目ごとに集計され、資産、負債、資本の要素は、貸借対照表に、費用と収益は、損益計算書として、報告されます。貸借対照表と損益計算書は、会社の決算報告書として、税務署や銀行に提出され、また上場会社なら広く公開されるので、仕訳を正確に起こすことは極めて重要です。
では、切手の仕訳は、どのようにしたらいいのでしょうか?
まず、切手を購入し、そのまま封筒やはがきに貼り付けてポストに投函して、手元に1枚も残らなかった場合の仕訳について、説明いたします。
この場合の仕訳は、全額が費用処理され、借方の科目は通信費になり、貸方の科目は支払った現金などになります。
例えば、84円の切手を10枚購入して、そのまま使った場合、消費税込の金額で計上すると、
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 840 | 現金 | 840 |
となります。
消費税抜きの金額で計上すると
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 800 | 現金 | 840 |
消費税 | 40 |
となります。
通信費や消費税の科目名は、会社によって、交通・通信費や、仮払消費税など他の科目名を使う場合があります。説明に使った科目名は例に過ぎないので、具体的な科目名につきましては、勤務先の科目にしたがって下さい。以下の説明に関しても、同じように科目名は、例としてご理解下さい。
次に、切手を購入し、全く使わずに保管した場合には、換金性の高い切手が会社に保管されていることになりますので、全額を資産計上します。また、消費税は、消費した時に、切手の場合には使った時、課税仕入として処理するのが原則ですから、購入時には、消費税の課税対象外として処理します。
例えば、84円の切手を10枚購入して、そのまま保管した場合、
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
貯蔵品(消費税課税対象外) | 840 | 現金 | 840 |
となります。
その後、使用した時に費用に振替えます。
例えば、保管していた84円の切手を1枚使った場合、
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費(課税仕入れ) | 84 | 貯蔵品(消費税課税対象外) | 84 |
このような仕訳ですと、
切手をまとめて買った時と1枚切手を使うたびに仕訳を起こすことになり、作業量が増えてしまいますね。
また、たった84円のために、いちいち仕訳を起こす意味はわからないと思うのも理解できます。
そこで、簡便な仕訳も認められています。
簡便な仕訳は、購入した時に、いつも経費処理する方法です。
例えば、84円の切手を10枚購入して、そのまま全部を保管した場合でも、2枚使って残りの8枚を保管しても、10枚全部を使用した場合と同じ処理をする方法です。
仕訳は税込みの場合、
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費(課税仕入れ) | 840 | 現金 | 840 |
となります。
消費税抜きの金額で計上すると
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費(課税仕入れ) | 800 | 現金 | 840 |
消費税 | 40 |
となります。
もっとも、この方法でも、年度末の決算では、切手が会社にあるので、資産計上する必要があります。
年度末には、切手が何枚あるか数えて、資産に振替えることを忘れないようにしましょう。
84円の切手が1枚残っていたら、年度末の仕訳は、以下のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
貯蔵品(課税仕入れ) | 84 | 通信費(課税仕入れ) | 84 |
切手の仕訳は、購入した時と使用した時に起こします。
購入した時には資産計上し、使用した時には、課税仕入として経費計上するのが原則です。しかし、簡便な方法として、購入した時に、使用した時と同じ経費計上することも認められています。この方法でも、年度末には、会社に保管している切手については、経費から資産に振替えて計上することが必要です。