数字を扱うことが多い公認会計士であれば、みんな数学が得意に違いないと思っているのではないでしょうか?でも、そんなイメージとは裏腹に、公認会計士で数学が得意という人はあまりいません。その理由は、公認会計士になるための登竜門となる公認会計士試験では、数学の知識はほとんど問われないからです。
結果として、公認会計士になる人たちは、ほとんど数学の勉強をしないで公認会計士となっています。だからこそ、公認会計士はみんな数学ができるというわけではないのです。この記事では、公認会計士の仕事をするために数学が必要であるかについてわかりやすく解説していきます。
結論から言えば、公認会計士の仕事に数学の知識は今のところ必要ありません。数学の知識がなかったとしても、公認会計士の仕事である監査の仕事を行なうことはできます。また、公認会計士試験のなかでも数学の知識を多く必要とする科目はありません。選択科目である経営学や経済学のなかで数学的な知識を要求されることもありますが、数学的な知識がなくとも、あるいは、数学的に理解していなくとも、出題のパターンは決まっているので、解き方さえ覚えてしまえば試験上は数学的な知識がなくても問題を解くことはできるようになっています。また、選択科目であるため、苦手そうだと感じた場合は別の選択科目を選ぶことも出来ます。
数学の勉強が苦手でも、公認会計士が習得しておかなければならない簿記については理解することができます。もともと、1494年に誕生し、「スムマ」(算術・幾何・比及び比例全書)と呼ばれる本の中で「簿記論」を論じたイタリアの商人出身のルカ・パチョーリ(1445年ごろ - 1517年)は数学者だったことからもわかるように、簿記はもともと数学の知識として広く紹介されていました。
しかし、現代に至っては、簿記は数学ではなく、簿記という一つの科目として勉強するのが一般的となっています。それは、現在の簿記が、「基本となる一定の仕組み・ルール」さえ一度習得しておけば、多少の反復練習が必要となるものの、実際に行われた取引をその仕組とルールを当てはめるだけで問題を解くことができるからです。したがって、公認会計士には数学の知識はほとんど必要ないと言えます。
そもそも公認会計士の仕事は監査をすることです。監査業務は、公認会計士の資格を保有している人しか行ってはいけない、公認会計士の独占業務となっています。
公認会計士が、適切な監査を行なうためには、会計学の知識が欠かせません。もちろん、他にも税務の知識やマネジメントの知識が必要となることは言うまでもありません。
監査業務では、監査対象となっている会社が作成した損益計算書や貸借対照表等の財務諸表について、会社とは独立した第三者である公認会計士が、会計の専門家として適正であるかどうかについて意見を述べる業務のことを言います。すでに作成された財務諸表を監査するにあたっては、数学的な知識はほとんど必要ありません。財務諸表のほとんどは既存のルールにもとづいて作成されており、そのルールに基づいて財務諸表が作成されているかどうかを公認会計士は判断する業務となっています。
公認会計士の仕事そのものは、必ず数学の知識がないとできないというものではありません。しかし、公認会計士であれば、数学の知識があった方が有利なこともたくさんあります。
たとえば、数学ができれば、会社を取り巻く経済環境や会社の特性などを理解して、決算の数値に間違いが生じるリスクが高いところに対して、統計的手法でサンプル数を決定、抽出して手続を実施し、結論を導き出すといったことを行なうことができるようになります。
統計学は数学的な知識が必要となるので、その知識を習得していないと統計分析はできません。したがって、数学ができる公認会計士は統計的な分析手法を使ってより高度な分析ができるのです。選択科目の1つである統計学を苦手と感じずに勉強できることは大きなメリットといえます。
実際に数学を使う問題を見てみましょう。
統計学では、このような問題が出題されます。こちらの問題は令和5年度に出題された問題です。数学にもさまざまな分野がありまして、皆さんがイメージしているのとは少し違うかもしれません。統計学は、大学受験で選択科目である「確率分布、期待値」と被る部分であり、どの受験生もあまり選択していないことが多いです。公認会計士を受けるどの受験生ももともとの知識が少ないため、苦手意識がない場合は選択するのも一つの手だといえます。
こちらの問題も統計学で実際に令和5年に出題されていた問題です。こちらは確率を計算する問題となります。高校1年生で習うレベルの問題であるため、公認会計士を目指すどの受験生も、勉強をすれば習得可能なレベルとなっています。
このように苦手意識が強くない場合は統計学を選択しても問題ないでしょう。その他の科目も、統計学以上の難易度を必要とする数学の問題は出ないため、今回の例題と照らし合わせて、公認会計士を目指す1つの参考になれば幸いです。
出典:令和4年公認会計士試験論文式試験の試験問題
公認会計士は三大難関国家資格の1つとも言われる非常に難易度の高い資格です。それだけ難易度の高い資格となっているので、それ相応に年収は高いといわれています。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和5年)によると公認会計士の平均年収は922万円でした。対して国税庁の民間給与実態統計調査(令和4年)によると、平均年収は458万円でした。この結果から分かる通り、約500万円もの年収の差があることが分かり、年収が高いということが言えます。
下記の記事ではより詳しく公認会計士の年収について書いてありますので、併せて参照していただけると幸いです。
公認会計士になるためには公認会計士試験に合格する必要がありますが、そのほかにも3年間以上の実務経験を積まないと、公認会計士として登録することが出来ません。そのため、効率よく公認会計士になりたいと考えた場合、監査法人で実務経験を積みながら資格取得を目指すことがオススメです。
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公認会計士の仕事に数学の知識は基本的に必要ありません。その理由として、数学が必要な科目が選択科目であるからです。そのため、公認会計士の中には試験勉強中に全く数学を勉強しなかったという人も少なくありません。したがって、数学を通らずに公認会計士になることが可能であるため、数学が心配だった方も公認会計士を目指して行きましょう。