EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)は、国際的に活動する企業や設備投資を多く行っている企業の収益性を検討する際に活用される指標の1つです。今回はこのEBITDAの内容、計算方法や活用について説明します。
EBITDAとは、一般的に償却前営業利益と呼ばれるものです。日本における呼称は、「イービットダー」「イービットディーエー」「イービッダー」など、さまざまです。基本的な計算方法としては、以下の通りです。
EBITDA = 税引前利益 + 支払利息 + 減価償却費(無形固定資産および有形固定資産のいずれに対するものも含む)
企業の活動形態や所在地によっては、純利益だけでは当該企業の活動レベルを正確に計ることができません。というのも、各国ごとに税率や利率は異なりますし、減価償却方法にも差があるからです。同じ企業力を有しているにも関わらず課せられる税率が異なる場合に、税金を引かれた後の利益だけを見たとしても、当該企業の現状及び将来性は分かりませんよね。その問題をクリアするための指針が、EBITDAです。
上述のようにEBITDAは、税金、支払利息、減価償却費を計上する前の企業活動を把握するためのものです。何を基軸にするかによっていくつかの公式立てをすることができるのですが、EBITDAは営業利益と減価償却費をプラスしたものとご理解いただくのが最もシンプルでしょう。
以上の3つの計算式は、基本的にはすべて同じ意味です。分かりやすいもので理解すれば問題ありません。
上述のように、EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えたものです。つまり、営業利益とEBITDAには、減価償却費分の差額が生じることになります。果たして、なぜこのような指標を作成する必要があるのでしょうか?
営業利益は、総売上高から必要経費(減価償却費を含む)を引いたものです。シンプルに、「ビジネスで儲ける力」を表しているものです。
上述のように、営業利益は減価償却費を含む必要経費を引いたものです。この営業利益を評価すれば、その企業が毎年収益性を維持できているのかどうかを判断することができるはずです。
しかし、企業の中には、企業経営の前提として巨額の設備投資をしているものもあります。例えば、電気通信事業などについて考えてみれば明らかでしょう。利益を出すためには、あらかじめ大がかりな通信設備を配置しなければいけないのです。そして、これに対しては減価償却費がかかってきます。
会計上の規則として、帳簿上、投資された設備に対しては、耐久年数・資産価値・耐用年数の観点から減価償却費が割り出され、毎年一定額がコストとして計上されます。つまり、企業がどれだけ積極的に利潤を上げていたとしても、減価償却費が大きな負担となった結果、営業利益としては予想以上に低く算出される可能性があるのです。
事業活動自体に問題がないにもかかわらず、減価償却費を引いたあとの営業利益が芳しくないという状態において、営業利益に対するコンサルティングだけでは不十分です。減価償却費を引く前の数値、つまりEBITDAを分析対象としてはじめて、踏み込んだ施策の検討に移れることになります。この意味においてEBITDAは現金ベースの儲ける力を表していると言えます。
以下では、EBITDAが積極的に役に立つ場面を紹介します。
融資をするに重要なことは、「融資額に加えて利息を含めた回収が可能か」ということです。融資先にこの返済能力がなければ、そもそも融資対象としては外れます。
これを判断するために、EBITDAは非常に有効です。というのも、営業利益が帳簿上の修正を受けた数値であるのに対して、EBITDAはあくまでも現金ベースの指標となりうるからです。EBITDAの数値が優秀である限り、当該企業はキャッシュが回っていると判断できます。つまり、ある程度の融資に耐えうるとの評価が可能です。
EBITDAは融資の回収が可能かを見極める指針です。
EBITDAは、企業価値を評価する際に有効な指針となります。例えば、M&A実行時には買収先企業の価値を判定しなければいけませんが、その際にEBITDAが役立ちます。
企業を買収するときには、「企業の買収金額を当該企業の儲け自体で回収すること」が大前提です。これが達成できなければそもそもM&Aをするメリットがありません。そしてその判断の際に用いられるのがEBITDAです。例えば、買収額が500億円と想定される企業についてEBITDAが50億円であれば、回収期間は10年と求められます。当該企業が10年間現状のEBITDAを維持できるかを考慮し、M&Aの実行を判断します。EBITDAが100億と高ければ回収期間は5年間、逆に、EBITDAが2億円と低ければ回収期間は250年間、というような塩梅です。
EBITDAは、買収のコストパフォーマンスが良いかどうか、を判断する基準として役立つと言えるでしょう。
EBITDAには次のようなメリットがあります。
EBITDAのメリットは、外国企業との比較が容易になる点です。国によって金利や法人税などのルールはさまざまです。EBITDAに表れる数値は、これらの異なる条件を排除したものなので、純粋な企業価値の比較が可能となります。多国間で活躍する企業の比較時には必ず用いられます。
EBITDAは、減価償却費を考慮せずに、企業価値を判定できます。特に、大規模な設備投資をしている企業に対する中長期的な企業価値判断に有効です。
EBITDAはあくまでも1つの目安でしかありません。減価償却費を考慮しないのは1つの企業価値測定の方法としては有効ですが、他方で過剰な設備投資によって損失が生じている場合に、これを捕捉できません。設備投資を行う企業に対する評価において、設備投資それ自体の是非を判断に取り込めないのはデメリットと言えるでしょう。
また、そもそもEBITDAの統一基準があるわけでもありません。基準として確たる定義が存在しない以上、絶対視はおすすめしません。
EBITDAと並べて語られる指標としてEBITがあります。
EBITは利息と税金を当期純利益に戻したもの、つまり、EBITDAから減価償却費を差し引いたものです。基本的には営業利益と同義なので、EBITが使用される機会は少ないのが実情です。ただし、営業利益とEBITが違うのは、EBITが利息の他に発生する有価証券評価損益などの営業外損益をプラスした利益額であることには注意が必要です。
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EBITDAの説明は以上です。メリット・デメリットを含め、特徴は以下の通りです。
・減価償却の影響を受けない企業の力を考慮できる
・外国企業との比較の際にも有効
・融資時・M&A時における企業価値評価に役立つ
・絶対的な指針として採用するのはリスキー
以上の特徴を考慮して、EBITDAを有効にご活用ください。