注記表とは、企業の財務諸表について会計処理や補足的情報を表示する注記をまとめたもの。表題の「個別注記表」は、会社単体の財務諸表に関する注記表のことです。本記事ではこの「個別注記表」に焦点をあてて、その内容や項目を具体的に解説します。
注記表とは、企業の財務諸表について会計処理や補足的情報を表示する注記をまとめたものです。
注記表に記載すべき項目は、会社計算規則(会社法の規定により委任された会社の計算に関する事項を定めた法務省令)に定められています。
注記表は、財務諸表の種類によって以下の2つがあります。
・連結財務諸表に対する注記表:連結注記表
・会社単体の財務諸表に関する注記表:個別注記表
前項で、会社単体の財務諸表に関する注記表が「個別注記表」だと解説しました。
会社法(第435条第2項)では、株式会社および合同会社は、
・各事業年度の貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
の4つの計算書類を作成する必要があると定められています。
このうち個別注記表は、
・重要な会計方針に関する注記
・貸借対照表に関する注記
・損益計算書に関する注記
など、それぞれの計算書類に記載されていた注記事項を一覧にした書面です。
法人税の確定申告においては、決算報告書とともに添付書類として提出します。
個別注記表は、必ずしも全ての注記を一つの書類にまとめる必要はありません。貸借対照表などの特定の項目との関連性が分かるように記載しておくことで足ります。
根拠としては、会社計算規則57条第3項における記述です。
「計算関係書類(各事業年度に係る計算書類の附属明細書を除く。)の作成については、貸借対照表、損益計算書その他計算関係書類を構成するものごとに、一の書面その他の資料として作成をしなければならないものと解してはならない。」
つまり、一括した表の作成は強制されていません。計算書類の末尾に記載する形式でも問題ないのです。
ただし、必要な注記が漏れている場合は不備となります。
それでは、個別注記表についてどのような項目が必要なのかを具体的に見ていきましょう。
個別注記表に掲載しなければいけない項目は、以下の19項目です。
会計監査人設置会社かつ有価証券報告書の提出が必要な企業(事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する義務のある会社)は、基本的に19項目すべての注記が必要です。
それ以外の企業については、会計監査人設置会社かどうか、公開会社か非公開会社化によって、記載すべき項目が変わります。
なお、該当する事項がなければ、項目自体を省略することができます。
参考:会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)施行日: 令和二年八月十二日 (令和二年法務省令第四十五号による改正) 第98条
株式会社は、株式の譲渡制限があるかどうかで公開会社と非公開会社に分類できます。
譲渡制限とは、株式の譲渡に対して会社の承認が必要になることを定款で定めることです。
公開会社は、譲渡制限がない株式が1株でもある株式会社を差し、非公開会社はすべての株式に譲渡制限がついている株式会社を差します。
貸借対照表をはじめとする計算書類は、企業の経営状況などを外部に示すためのものです。
その内容は可能な限り正確に実体を示すものでなければいけません。
個別注記表は、計算書類の内容を解説する「注意書き」のようなものです。
個別注記表を見れば、各計算書類を見る際に、どのような点に注意すべきかがわかります。
会計における基準を会社がどう作っているかで利益の額は変動します。決算書を読む際に、個別注記表はなくてはならないものなのです。
個別注記表は、会社法上決算期において作成が義務付けられているものです。
現在のところ、個別注記表を作成していない場合でも、それでペナルティが課せられることはありません。
しかし、融資相談や許認可申請など先方から決算書の提出を求められた際に、必要であるはずの個別注記表が添付されていなかったらどうでしょうか。
「この企業はちゃんと決算をしているのだろうか?」と審査に影響することが考えられます。
あまり必要に思えない書類であったとしても、会社法上定められた書類を添付していないと言うことは、会社法を守っていないということです。
ひいては会社自体のコンプライアンス体制を疑われてしまう可能性があります。
決算の際には、財務諸表とともに個別注記表も必ず作成するようにしましょう。