USCPAとは『米国公認会計士』のことです。USCPAは、会計の専門家としてのスキルに加え、英語力も発揮できる資格です。グローバルに活躍する機会が求められる現代社会にて、今後ニーズの高まる可能性が十分にある資格ともいえます。今回は職場別のUSCPAの年収や年収アップのポイントまで徹底解説します。
USCPAとは、「U. S. Certified Public Accountant」の略で、日本語では米国公認会計士と訳される、米国の会計基準や監査基準に精通した専門家です。
全米州政府会計委員会(NASBA)により資格試験が実施され、日本をはじめとする世界の多くの国で受験することができます。米国の資格とはなりますが、世界で最も広く認知されたビジネス資格の1つのため、資格保有者は、会計事務所や官公庁、一般事業会社などで幅広く活躍しており、キャリアの幅が広がります。
日本における会計士資格である公認会計士との違いとしては、監査報告書に監査責任者としてサインするという日本での独占業務を行えるか否かです。また、USCPAは資格の取得後も研鑽を重ねてレベルアップしていくことを前提としている点で、日本の公認会計士と異なるといえます。
USCPAになるためには、まず試験をうけるための受験資格を得る必要があります。受験資格は州ごとに異なりますが、主に4年生大学の学位などといった学位要件と、会計24単位などといった単位要件の2つがあります。
受験資格をクリアしたら、必須科目3科目、選択科目1科目の計4科目の試験に合格し、実務経験などのライセンスの申請と取得をすることでUSCPAになることができます。
試験科目内容や試験時間については、以下の記事でも詳しく紹介していますので併せてご参照ください。
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USCPAの年収についてご説明する前に、まずは主なキャリアパスについて解説します。
公認会計士の就職先としても王道の監査法人が第一に挙げられます。監査部門においては、英語力を活かす形で海外のクライアントの監査を担当することが多く、USCPAの知識を活かすことができます。また、USCPA取得者は会計・税務・財務の知識を持っているため、M&Aなどを主に支援するアドバイザリー部門においてもクライアントの課題解決や価値創造に貢献することができます。
会計・税務・財務の知識を持っているUSCPA取得者は、もちろん会計事務所でも活躍することができます。国内外のクライアントに対して、米国の会計基準に準拠した財務報告や税務計画などにおいて重要な役割を果たします。また税理士法人においては、国際税務部門などで特に評価されることが多いです。
USCPAが一般事業会社や外資系企業で働く場合、経理や経理部門で働くことが一般的です。これらの部門では、決算や予算、内部統制や財務報告など、会社の財務に関する重要な業務を担います。特に、国際的な会計基準に準拠した財務報告書の作成などで活躍することができるでしょう。
コンサルティングファームにおいては、海外のクライアントの経営改善や財務戦略の策定などで活躍することができます。USCPAの会計知識や財務分析スキルを通じて、税務リスクの管理や企業の税務戦略の策定など、クライアントの財務パフォーマンス改善に役立ちます。
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ここからは、本記事のテーマであるUSCPAの年収について、日本で働く場合とアメリカで働く場合に分けて解説していきます。
日本国内の企業で働いた場合の年収の目安について、政府統計のデータから会計士及び税理士をあわせた金額を例にすると約640万円となります。ただ、一般的に会計士より年収が低い傾向にある税理士も含まれた金額になるため、実際の年収より低くなっていることも想定されます。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査
日本におけるUSCPAの平均年収をより詳しくみるために、ここからは職場別にご紹介します。
上述の通り、USCPA取得者の主な就職・転職先は監査法人、一般事業会社、会計事務所、コンサルティングファームなどと多岐にわたるため、それぞれ紹介します。なお、会計事務所は仕事内容や国際業務の有無がバラバラなため割愛します。
監査法人に勤務するUSCPAの平均年収は、400~600万円といわれています。
一般にBig4監査法人の場合は、役職別に以下のような年収モデルになります。
役職 | 年収 |
---|---|
スタッフ | 500~600万円 |
シニアスタッフ | 700~850万円 |
マネージャー | 900~1,100万円 |
シニアマネージャー | 1,200万円程度 |
パートナー | 1,500万円~ |
また、中堅クラスの監査法人の役職別の年収モデルは以下のようになります。
役職 | 年収 |
---|---|
スタッフ | 400~500万円 |
シニアスタッフ | 500~650万円 |
マネージャー | 800~1,000万円 |
パートナー | 1,300万円 |
監査法人には明確な昇給フローがあるため、基本的には入社してからの年数で昇給していくため、USCPAと公認会計士とでは年収がそれほど変わらないといわれています。
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コンサルティングファームに勤務するUSCPAの平均年収は、500~700万円程度が一般的です。ただ、企業規模や業種によって異なるため、年収800万円以上を得ているケースもあり、さらに経験を積むことで昇給を通じて年収を高めることができます。
例えば、財務系コンサルティングファームの一般的な年収モデルは以下の通りになります。
役職 | 年収 |
---|---|
スタッフ | 500~600万円 |
アソシエイト | 600~700万円 |
シニアアソシエイト | 700~900万円 |
マネージャー | 900~1,400万円 |
ディレクター | 1,300~1,800万円程度 |
パートナー | 2,000万円~ |
このように知識や経験次第で若いうちから高い年収を実現することができますが、こうした企業では採用の際にUSCPAだけでなく、学歴や職歴も重視される傾向があるのが一般的です。
USCPAを取得して外資系企業で働く場合は、経理部門で勤務することが一般的です。初任給は450万円程度であり、日系の一般事業会社の初任給より高く設定されています。マネージャークラスに昇進すれば、1,000万円以上の年収を得られる可能性もあります。
ただし、日系企業と異なり勤務年数次第で昇給できるわけではないため、平均年収が500万〜700万円程度に収まるケースが多くなります。
一般事業会社に勤める場合も、外資系企業と同じく経理部門に勤務することが多いです。しかし、一般事業会社においては、USCPAを持っているからと言って必ずしも年収がアップするわけではなく、資格取得の手当てが出る程度となるのが一般的です。
一般事業会社に勤める米国公認会計士の平均年収は、400万円程度といわれており、年齢やスキルに応じて役職が上がるにつれて年収も上がっていきます。一般事業会社の経理職の平均年収を参考にすると50代のシニアクラスまで行って、700万円程度になると考えておくとよいでしょう。
一般的にアメリカで働くUSCPAの初年度平均年収は約500万円といわれています。その後、勤続年数が増えるにつれ以下のように昇給していきます。
勤続年数 | 年収 |
---|---|
1年 | 500万円 |
2~3年 | 500~900万円 |
4~6年 | 700~1,200万円 |
6年以上 | 1,500万円 |
またワシントンD.C.やニューヨークなどの主要都市では1,000万円以上なのに対して、バージニアやカリフォルニアでは900万円前後など、都市によっても異なる点に注意が必要です。
このように勤続年数や都市による違いはあるものの、2021年時点で約830万円($58,260)というアメリカの平均年収と比較すると高収入といえるでしょう。また、一般的にUSCPAの業務は専門性が高いため、景気に大きく左右されず、安定して高収入を得ることができる資格ともいえます。
出典:U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS「Occupational Outlook Handbook|Accountants and Auditors 」
アメリカの資格のため、日本で働くうえで活かせないと思う方もいらしゃっると思いますが、実際には上述の通り、昇給を重ねながら高年収を実現することができます。
このようにUSCPAが日本の職場でも求められる理由としては、次の3点があげられます。
アメリカの資格といえど、世界的に受験者も多い国際的に認められた資格であるため、日本や米国だけでなく、様々な国からの評価や信頼を得ることができます。近年のグローバル化に伴い、海外進出する日本企業が増えていますが、こうした企業にとって国際基準の会計知識を持つ人材は必要不可欠となっています。USCPAは国際的にも信頼性の高い資格であり、さらに国際会計基準を理解している貴重な人材として需要が高まっているため、結果的に年収も上がりやすくなります。
言うまでもなく、USCPAの試験は英語のみで実施されるため、USCPAに合格するということは会計に関するビジネスレベルの英語力の証明にもつながります。
ビジネスの共通言語である英語ができることで、給与水準が高い外資系企業で働くことができたり、海外とコミュニケーションをとる重要なポストに抜擢されたりとすることで年収アップを実現することができます。
上述の通りUSCPAを取得することで、監査法人や外資系企業など様々な場所で活躍することができます。こうしてキャリアの選択肢を広げることができるため、年収が上がりやすい職場を自ら選択することができるといえます。また日本は世界的にみると賃金が上がりにくい状況にありますが、USCPAは国際的に通用する資格であるため、海外で働くという選択をすることもできます。
USCPAは高年収が期待できる資格ですが、ただ取得するだけで自動的に年収が上がるわけではありません。
ここからは年収を上げるために必要なポイントについて解説していきます。
上述の通り、USCPAとして働くうえでは昇進や昇格を重ねることが年収アップの有効な手段です。昇給を重ねることで年収がアップするだけではなく、より高度な業務に携わることができるため、USCPAの知識やスキルをさらに発揮することができます。自分の得意分野や強みを明確にし、会社の評価制度を通じて仕事の成果や貢献を積極的にアピールしていきましょう。自分の目標やキャリアプランに沿いながら、昇給のためにスキルアップの努力を続けることが重要です。
年収アップのためには、積極的に業務効率化を図ることも重要なステップです。業務を効率化することで時間やコストを節約し、より多くの仕事に対応することができます。年収アップのためには知識だけでなく経験も不可欠なため、業務効率化して多くの業務に挑戦することも大切です。
USCPAを活かして、より自分のキャリアや方向性に合った職場に転職することも年収アップの1つの方法です。今まで培ってきたスキルや経験に見合った報酬を得ることができ、また自分の価値を高く評価される機会にもなります。さらに、USCPAは国際的な信頼も高い資格であり、転職市場においても競争力が高いため、さらなるキャリアアップと年収アップを狙うことができます。
結論から申し上げますと、USCPA合格後に年収2,000万円を実現することは可能です。Big4などの大手監査法人で昇給を重ねたり、またある程度実務の経験を積んだうえでPEファンドや外資系投資銀行など、さらなる高年収が期待できる職場に転職するなどの方法が挙げられます。ただし、会社の規模や働く業界により異なるため、事前に業種や企業の調査が必要です。
USCPAを取得することで転職活動を有利に進めることができます。
上述の通り、USCPAを取得することにより、
などをアピールすることができます。そのため、グローバル展開している企業や外資系企業に転職する際には、日本の公認会計士と比較すると評価されやすくなります。
USCPAは、専門的な知識とスキルだけでなく、ビジネスのレベルの英語力が必要であり、難易度も非常に高い資格であるといえます。しかしUSCPAを取得することで、400~1,000万円の年収をベースとして、昇給を重ねることで2,000万円以上の年収を狙うことができるでしょう。さらに年収だけでなく、将来的なキャリアの選択肢が広がるという点でも、非常に魅力的な資格であるといえます。
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