計上は、会計用語としてよく耳にする言葉です。例えば、「費用を計上する」「売上を計上した」などといったように使われます。しかし計上という言葉の意味を、経理初学者に対してもわかりやすく説明することができるかとなると、案外難しいと感じるのではないでしょうか。今回は、計上について解説していきます。
「計上」とは、簿記や経理などの会計用語として使われる言葉です。同じような言葉に「記帳」というものがあります。計上も記帳も、どちらも帳簿に記録する言葉で、ほぼ同じ意味をもっていますが、まったく同じ意味の言葉とはいえません。
「計上」という言葉は、売上や費用を企業の予算に反映させるために帳簿へ記録をするという意味の言葉です。記帳という言葉よりも、数字の要素が強い意味をもっています。つまり、売上や費用の数字をひとつひとつ明らかにして、予算全体の計算に含み、全体の企業のお金を計算することが計上です。
実際に、経理業務位において会計システムや帳簿に記録する時には「計上する」といったように計上という言葉がよく使われています。
「記帳」は日常生活にもあふれている言葉です。「通帳に記帳をする」といったように使われます。この記帳は、銀行や郵便局などで使っている通帳に入出金の履歴を印字する際に使用するでしょう。
経理においても同様に、毎日発生する売上や費用などの取引履歴を帳簿に記録する際には、記帳という言葉を使います。
企業会計原則の損益計算書原則によると、費用は「発生主義で計上」することと記載されています。発生主義とは、会計原則のひとつです。現金の収入または支出とは関係がなく、経済的に物事が動いた時点で費用を計上しなければいけないという考え方です。反対語には、現金の受け渡しの時点で計算をする「現金主義」があります。
話を戻しますが、発生主義は「現金の収入または支出とは関係がなく」という言葉の通り、実際にお金が動いていないとしても、費用を計上するという方法です。費用計上は、発生主義による計上が基本であり、これは、後になってから費用を回収する、または支払うという考え方が一般的になっています。
発生主義による代表的なものを2つ取り上げてみましょう。
2つとも現金のやりとりとは関係なく、経済的に物事が発生した時に費用を計上します。
国語辞典などで計上の意味の対義語は存在しないのですが、言葉の意味としての対義語が存在します。簿記やビジネスなどにおいての計上の意味の対義語について、解説していきましょう。
予算計上により構成される賃借対照表は、その企業の財政状況を分かりやすく把握するために作成される書類です。言い換えるのであれば、その企業の安全性を示しています。正しい手順で作成された書類であれば問題はないのですが、健全に予算計上をされたものの反対の意味をもつ言葉として「不正会計」があります。
不正会計には、水増し計上と過少計上があります。水増し計上といえば、実態よりも多く計上をすることをいい、過少計上は実態よりも少なく計上することをいいます。不正会計は、数字の操作をするだけで簡単にできるものですが、もちろん調べればすぐに判明するためにリスクが高く、発覚すれば企業がこれまで築いてきた信用がなくなってしまいます。
簿記の計上に「正しい計上」という表現があるとすれば、対義語は「正しくない計上」となります。簿記で集計をしていると、手元に存在している金額と、帳簿のうえでの金額にずれが生じる場合があり、このずれを現金過不足といいます。現金過不足を認識した場合には、手元の金額と帳簿の金額が同じになるように調整をしなければなりません。この場合、帳簿の右側に「現金」と過不足の金額を記載し、帳簿の左側に「現金過不足」と右側に書いた金額と同じ金額を記載します。もし過不足の原因がわかれば、仕訳をし直せばいいですし、わからなくても、期末日に現金過不足を精算することにより、ずれは0円になります。
計上といっても現金主義なのか発生主義なのかによって、どの時点で費用を計上するのかが変わってきます。企業は基本的に発生主義で計上をすることを覚えておきましょう。また、記帳と計上の意味の違いについても、自分の言葉で説明できるほど理解を深めておくと良いでしょう。