自己資本回転率という言葉を聞いたことがありますか?自己資本比率や自己資本利益率等は聞いたことがあってもこの用語を聞いたことがある人はそんなにいないかもしれません。自己資本回転率は企業を分析したり、企業の戦略を策定したりするのにとても有用な指標です。そこで今回は、自己資本回転率について詳細に解説していきます。
自己資本回転率は以下の計算式によって表されます。
自己資本回転率=売上高÷自己資本
まず、自己資本というのは貸借対照表における資産から負債を差し引いたものを言います。厳密にはそれだけですと「純資産」となり、純資産から新株予約権や非支配株主持分を差し引いた額が自己資本となります。売上高は損益計算書に計上されている売上高(もしくは営業収益)となり、1年分の売上高で計算します。
自己資本回転率は、企業の自己資本をどれだけ有効活用して売上高に繋げているかを示す指標となります。大きければ大きいほど企業の資源を有効利用していることになり、小さければ小さいほど企業の資源を活用できていないという判断になります。
それでは自己資本回転率の目安はいくつくらいでしょうか。結論からすると自己資本回転率単体での比較は難しいとされています。これは、業種によって異なることはもちろんですが、同業でも創業間もない企業と老舗の企業とで大きく異なるからです。
よって、安全性のみ確認したいのであれば自己資本が大きければ大きいほど良いので自己資本回転率は小さければ小さいほど良いですし、投資効率のみ見たいのであれば大きければ大きいほど良いと言えるでしょう。
自己資本回転率は売上高を自己資本で割って求められます。よって、売上高を上げれば上げるほど上昇します。しかし、規模が大きくなっても損失が出ている場合は自己資本が減少しますので、余計自己資本回転率が上がります。
このように、あがっている理由が規模の拡大によるものなのか、損失が出て自己資本が目減りしているかという理由を分析することが大切です。また、自己資本が増加すればするほど自己資本回転率は低下します。利益が積み重なったり増資など会社資本が増強されたりすればされるほど自己資本回転率は低下しますが、見方によってはそれだけの自己資本を備えていながら売上が想定以上にあがっていないと判断されることもあります。とはいえ、銀行等安全性を重視する会社であれば自己資本回転率は低いほうが評価は高まるでしょう。
自己資本回転率は、自己資本利益率(利益÷自己資本)を売上利益率(利益÷売上高)で割った金額でも表されます。
自己資本回転率=自己資本利益率÷売上利益率
よって、自己資本利益率を上昇させれば自己資本回転率は上昇します。これは、自己資本でどのくらい利益が賄えるかの指標ですので、少ない設備投資でより多くの利益を獲得することで達成できます。
また、一方で、売上利益率が低下すればするほど自己資本利益率は上昇します。これは、売上高が増加しても利益が伴わないと自己資本が増えないため結果的に自己資本に対して売上高割合が大きくなるからです。
このように、自己資本回転率は単体で検証するのではなく、どの要素が上下したかを検証することによって分析することが大事です。
自己資本回転率は様々な分析には使えますが、他社比較をする際には要因を検証しなければならないため使い勝手が悪いときがあります。そんな時は次のような指標を用います。
総資本回転率は、売上高を総資本つまり総資産で割って求められます。自己資本回転率はその期の損益にも影響を及ぼしますが総資本回転率はその影響を排除して考えられます。よって、企業がもつ資産をどのくらい効率的に回しているかを知るのに有用な指標となります。
自己資本利益率は利益を自己資本で割って計算されます。自己資本回転率では売上高の指標を使っていたためその企業の損益によって数値が上下しましたが、自己資本利益率はその損益をそのまま利用します。
自己資本回転率が自己資本を用いてどのくらい効率的に販売をしているかという営業指標であるのに対して、自己資本利益率はどのくらい効率的に利益を計上しているかという指標であるため、販売のみならず製造努力も反映されるため総合的な指標として使いやすいものとなっています。
自己資本比率は自己資本を総資産で割って計算されます。総資産は株主からの払い込みや過去の利益の積み上げによって構成される自己資本と、借入金や買掛金など他人から調達された他人資本とで構成されます。原則として返済をしなくてもよい自己資本の比率が高い企業であればあるほど安全であると言われます。なお、自己資本比率が40%を超えるとちょっとやそっとでは潰れないと言われます。
自己資本回転率は大きければ大きいほど企業の資源を有効利用しているといえ、小さければ小さいほど安全性が高いといえます。また、自己資本比率があがっている理由として売上高が上がっている場合と損失が出ている場合があります。だた数値が大きい小さいではなく、その理由を明確にすることが経営状態を正しく判断することに繋がります。
自己資本回転率に近い指標も多く存在するので、いま企業内で何を図りたいのかによって用いる指標を変えていくのが良いでしょう。