最難関資格の一つとされる公認会計士試験。合格者のほとんどは学生か無職の方(大学卒業後就職していない人や前職を退職した人)が占めています。一方で、合格者調べによると7%前後が社会人として働きながら公認会計士試験に合格していることも事実です。では、公認会計士試験は社会人が働きながら勉強しても合格できるのか?また、どのように勉強したら働きながら合格できるのかを解説していきたいと思います。
初めに結論をお伝えすると、働きながら公認会計士試験に合格をするということは可能です。
実際に、金融庁より公表されている「令和5公認会計士試験 合格者調」という資料によれば、合格者の14%が働きながら合格した社会人合格者となっています。
ただ、社会人で公認会計士を目指す場合、働きながら適切な勉強時間を確保することが難しく、合格までに何年もの期間を要することもあるでしょう。さらに、公認会計士試験に合格した後にも、実務経験を積み、補習所に通って修了考査に合格する必要があるなど、登録のために時間がかかります。
このように試験だけでなく多くのステップを要するため、1日中働いて疲れて帰った後に公認会計士を目指して集中するということはかなり難しいことなのです。
ここからは、働きながらの取得が難しい理由について、実情を踏まえて詳しく見ていきます。
一般的に公認会計士試験に合格するために最低でも3,500~4,000時間の勉強は必要だといわれています。1日10時間勉強したとしても、1年以上続ける必要があります。
とはいえ、社会人で働きながら目指すのであれば、通勤時間を含め朝から夕方までは仕事があるため、1日10時間の勉強時間を確保することは非常に難しいといえます。簿記知識や実務経験の有無にもよりますが、働きながらであれば2~4年などある程度の長期戦を覚悟しなければなりません。
《参照記事》
公認会計士試験における社会人の合格率は約4~5%で推移しているといわれています。全体の合格率が約9%であることを踏まえるとやや低い数値であるといえるでしょう。合格者の多くを占める学生と比較すると、やはり上述の通り勉強時間に制約があるため、社会人は不利にならざるを得ないといえます。
上記では、社会人として合格することは難しいとお伝えしましたが、それでも社会人として働きながら勉強をするに見合うだけのメリットもあります。
まず一番のメリットは、職を失わずに受験できることです。公認会計士試験は難関であるため、必ず受かる保証はありませんが社会人として働き続ければ無理だと思ったときに諦めてもマイナス点がないことが挙げられます。
また、公認会計士試験では独学を除くと専門学校に70万円程支払い、受験中に収入がないとすると相応の貯蓄が必要となります。しかし社会人として働きながら受験をしていればその収入源を絶たれることなく勉強することができます。
さらに、他の受験者が学生か無職である一方、社会人としての経験を同時に積むことができれば公認会計士試験に合格した際に重宝される場合があります。例えば金融機関に勤めていれば金融機関の監査で重宝されますし、事業会社の経理をしていればクライアント先でも話がしやすくなるでしょう。
さらに、「会計×医療」、「会計×教育」、「会計×IT」など、これまでの社会人経験と公認会計士資格を掛け合わせることで、キャリアの選択肢を増やし、オリジナルのキャリア形成が可能となるでしょう。
公認会計士は高い年収を見込めるといわれています。後ほど詳しく解説しますが、厚生労働省のHPによると令和5年(2023年)の公認会計士の平均年収は約746万円です。日本の平均年収である461万円に比べると、約300万円ほど高くなっており、社会人から公認会計士に転職した際に収入が増える例は多くあります。
働きながら公認会計士を目指すのは難しいことですが、社会人であっても両立して合格を目指すことができます。ここからは、働きながら勉強をするために押さえるべきポイントを3つご紹介していきます。
勉強時間が限られている社会人は、とにかく効率よく学習を進めることが重要です。受験生の環境や現在のスキル、性格なども考慮したうえで、自分に合った勉強法を選択することで効率的に学習を進めましょう。
社会人から公認会計士を目指す場合の主な勉強法は以下の3つになります。
公認会計士試験に合格した人のほとんどは受験予備校に通っています。
受験予備校に通うメリットとしては、試験のプロが合格の最適解に近いカリキュラムやテキストを作成しており、また講義を受講することで自分の学習の進捗やモチベーションの管理もすることができるでしょう。
ただ受験予備校は費用が高く、また働きながら目指す場合には、仕事の時間との兼ね合いなどで通うことが難しい場合もあります。予備校によっては数か月の短期講座や特定単元の講座などもありますので、自分の勉強スタイルに合わせて利用してみて下さい。
通信教育は場所や時間にとらわれず、自分のペースで勉強することができるため、働きながら公認会計士を目指す場合にはおすすめの勉強法であるといえます。さらに費用の面でも平均的に40~60万円と受験予備校よりは抑えることができます。
一方、受験生の仲間がいる環境に身を置くことができないため、モチベーションや勉強の進捗などを自己管理しなければいけない点には注意が必要です。
独学で合格を目指す場合には、受講料がかからないということ、さらに自分のペースで勉強を進められることが大きなメリットとして挙げられます。
一方、公認会計士試験は専門性が高く独学では理解が難しい部分があり、平均の勉強時間より多くかかる場合もあるでしょう。また中長期的なスケジュール管理や学習方法は独学で習得が難しい点も考慮する必要があります。
《参照記事》
上述した通り、働きながら合格を目指すにあたり最も課題となるのが勉強時間の確保です。通勤の時間を有効活用して通信講座を受講したり、苦手な科目に触れるなど、スキマ時間を活用して持続的に勉強することが重要です。
ここで、実際に働きながら公認会計士に合格した人の時間の使い方を紹介します。ぜひご参考にしてみてください。
例えば、通勤電車に片道1時間乗る人であれば、行きの電車で毎日苦手な企業法を勉強し、帰りの電車で同じく苦手な監査論を毎日勉強します。苦手な科目でも毎日1時間触れるだけで得意科目になる可能性があります。また、毎日1時間簿記の総合問題を解く癖をつけることで計算科目を得点源とし、残り3時間をその日の重点科目に費やすことで穴をなくすという方法があります。
通勤の2時間に加えて4時間勉強すれば受験勉強時間として最低ラインの6時間はクリアできるはずです。昼休みも使えるようでしたらプラス1時間もできます。
ただ、社会人として働きながらだと、残業が多いなど職場環境によっては、勉強時間を確保できない場合も少なくありません。そうした場合には、思い切って勉強しやすい職場に転職なども考えることが大切です。
例えば、会計事務所や事業会社の経理など、仕事内容と試験内容に関連がある職場であれば、仕事を通じて知識を身につけることができ学習にも活かすことができるでしょう。
また、監査トレーニー制度を採用している監査法人など、資格取得を応援している職場もおすすめです。監査トレーニーとは、一部の大手監査法人で導入されている制度であり、残業禁止や試験前の休暇制度、また過年度合格職員による合格サポートなど受験を応援する制度です。実際に監査法人で実務経験を積みながら会計の知識や収入も得ながら勉強を進めることができます。
《参照記事》
これまで一般事業会社の経理部門に所属してきたKさん。会計業務の面白さを感じ、公認会計士を目指したいと一念発起し、短答式試験を受けるタイミングで弊社転職支援サイト「ヒュープロ」にご登録され、ご転職活動を始められました。
初回面談時にお伺いしたご希望条件は、公認会計士試験のための勉強に理解を示していただける職場であるということと、監査業務に携われるということでした。キャリアアドバイザーは弊社企業担当と掛け合い、Kさんの希望する条件を伝え、希望条件にあった事務所のみをご提案させて頂きました。
Kさんの転職成功ポイントは、弊社のキャリアアドバイザーとの面談の中で今後のキャリア形成についてじっくりお話をさせていただき、譲れない希望条件を絞れたことにあります。そのため、弊社もKさんの希望に合った監査法人を提案することができ、スムーズに転職活動を成功させることができました。
弊社では現在資格取得に向けて勉強をしている方のキャリア相談も行っております。将来のキャリアプランに関して疑問や不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
最後に、社会人で働きながら公認会計士を目指す方からよく寄せられる疑問についてQ&A形式でご紹介していきます。
公認会計士とよく比較される資格として同じ会計資格である税理士が挙げられます。そのため、働きながら目指す場合、公認会計士と税理士のどちらを目指した方がいいのかという疑問がよく寄せられます。
税理士試験は科目合格制度が採用されているため、働きながらでも1科目ずつ段階的に合格を目指すことができ、社会人の取得率が高いことから、働きながら目指しやすいといえます。
ただ、二つの資格の仕事内容は全く異なるため、将来自分がやりたいことや描きたいキャリアプランを軸に決めることが重要です。監査業務を通じて幅広いスキルを身につけて幅広いキャリアを描きたい場合は公認会計士、また地域やクライアントに根付いた仕事がしたいのであれば税理士というように、自分がやりたいことを実現できる資格を選択しましょう。
《参照記事》
これから公認会計士を目指される方も気になるであろう年収について、上述の通り公認会計士の平均年収は約746万円と、日本の平均年収である461万円に対して約300万円ほど高くなっております。
職場や役職により異なりますが、公認会計士の就職先として最も多い監査法人においては、7年目では約1,000万円の年収となるケースもあります。また、FAS系コンサルティングファームなどでは数千万円も期待できるでしょう。さらに、公認会計士のキャリアとしては独立開業があります。開業した後にどれだけ多くのクライアントを獲得して仕事を受注できるかによりますが、およそ1,000~3,000万円程といわれています。
《参照記事》
社会人から公認会計士を目指す場合、これまでの業務経験を活かして公認会計士として多様なキャリアを描くことができるでしょう。
例えば、公認会計士の代表的な就職先である監査法人をはじめとして、一般事業会社の経理部門や会計事務所が挙げられます。また、M&A業務のサポートを行うM&Aアドバイザリーやコンサルティングファームでも会計や監査の専門的な知識を必要とする業務も多く、ニーズの高い職場なのです。さらに、企業や事務所に所属せず、公認会計士として独立するのも選択肢の一つです。
《参照記事》
結論から申し上げますと、ほとんど不可能であるといえます。
簿記や実務経験などの前提条件があったとしても、科目数の多さや専門性の高さなどの点から、平均2年程は受験生活を送らなければいけません。
とにかく早く合格したいけど職場環境的に難しい場合は、一度退職して試験勉強に専念するのも一つの方法です。結果的に公認会計士試験に合格することができれば、勉強のための退職でブランクがあっても転職の際にマイナスポイントになることはほとんどありません。それほど、公認会計士はニーズが高い専門的な資格なのです。
ただ、実際に退職して勉強に専念する場合は、生活資金の余裕があるのか、またモチベーションや進捗は管理できるかなど事前にしっかり計画を立てることが重要です。
このように社会人にとっての受験勉強のネックは何といっても時間となります。逆に受験勉強のみの1日ではなくなるため気持ちの切り替えによっては受験勉強のみを行っている受験生よりも濃い勉強時間にすることもできます。通勤時間や細切れの時間をうまく使って社会人合格を目指しましょう!
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