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公認会計士試験に不合格となった時の就職・転職事情は?

公認会計士 大国光大
公認会計士試験に不合格となった時の就職・転職事情は?

公認会計士試験と言えば最難関試験の一つであり、簡単に合格できるものではありません。5年間勉強してみたけど合格できず、貯蓄も底をついたしそろそろ就職しないといけない、といった人は少なくありません。なぜなら毎年約10%の人しか合格できないのですから、90%は同じ気持ちで次のことを考えるわけです。では、今回は公認会計士試験に不合格となった時の就職・転職事情について現役公認会計士が解説します。

公認会計士試験の勉強が就職・転職に活きる例

公認会計士試験に合格しなくとも、それまで非常に多くの勉強時間を費やしてきたことは間違いありません。全く簿記を知らない人と比べれば知識は雲泥の差であることは本人が一番よく知っています。しかし、企業の人事担当者にはどのように映るのでしょうか。

まず、短答式試験合格をしているか、科目合格があるかどうかがポイントとなります。「公認会計士試験を勉強していました」といってもどれだけ勉強していたかは担当者にはわかりません。ですが、短答式試験や科目合格がある場合はある一定以上のレベルまで来ていたことがわかるため、履歴書でアピールすることができます。

また、日商簿記1級も持っていると良いでしょう。通常公認会計士試験の短答式試験に合格するレベルであれば簿記1級も合格できるはずです。実は、企業の担当者は公認会計士試験が難しいということはわかっていても深くは知らないことがほとんどです。ですが、簿記1級を持っているとなると経理要員として積極的に採用をしています。ですので、公認会計士には簿記1級は不要と言えますが、転職市場では武器となるので保険として合格しておくことが望ましいと言えます。

新卒や第二新卒での就職事情

公認会計士試験は例年8月に行われますので、その後の就職活動を想定します。大学4年生でしたら既に他の人は就職活動も終わっており、大手の企業は募集を打ち切っていると思います。しかし、通年で採用を受け付けている大企業もありますし、外資企業、ベンチャー企業も通年募集は存在します。
また、昨今は売り手市場となってきており第二新卒の需要もかなりあります。よって、新卒者と同様に論文式試験後の就職活動も思ったよりは募集枠が多いことに気づくでしょう。
このように、新卒や第二新卒では若干応募できる範囲は減るもののそれでも多くの選択肢が存在します。

また、新卒や第二新卒で経理部門に配属されても一から教えを乞うことになるのですが、公認会計士試験の素養がある場合は基本的なことはわかっているため、教える側としてもやりやすいと言えます。また、コンサルティング会社への就職では自ら勉強する姿勢が求められますが、その点既に勉強している実績があるため良い評価を受けるでしょう。

新卒や第二新卒での就職事情

社会人経験のある人の就職、転職事情

社会人経験のある人が数年公認会計士試験の為に離職していた場合の就職事情はどのようになっているでしょうか。

社会人経験があって公認会計士試験のために数年間離職していたとしても転職市場では前のキャリアに沿って評価が行われます。よって、中断期間があったとしても特にマイナス評価はされないのが通常です。加えて先ほどお話したように短答式試験合格、論文式科目合格、日商簿記1級等を勉強期間に通過していればその分プラス要因として評価されます。

元々経理として働いていたようであれば、大企業の経理要員やベンチャー企業のCFOという道もあります。経理とは異なる仕事をしていたとしても、その経験プラス経理の素養があるということで、コンサルティングや原価管理等の通常の経理プラスアルファの仕事に就くこともできるでしょう。

公認会計士から税理士に鞍替えする場合

公認会計士試験は一度に6科目受験をして合格しなければなりませんが、税理士試験は働きながら受験する人も多く、税理士試験に鞍替えを考える人もいるでしょう。しかし、税理士試験も難関資格には変わりありません。勉強時間が確保できるか、実務に仕事が活かせるかどうかがポイントとなります。
こういった人にとって魅力的に映るのが会計事務所や税理士法人となるでしょう。会計事務所は人材の流出も多い業界ですので、募集は年中どこかで行われていることが多いです。また、募集をかけている時はすぐにでも入ってくれる人材を探していることが多いので、現在就職していない人は内定後即入社できる可能性が高い為魅力的に映ります。

ここで気を付けなければならないのは、その会計事務所が激務であり勉強する時間がとれるかどうかや、試験のための長期休暇がとれる制度があるかどうかです。激務で勉強時間が取れないのは問題外となりますが、会計事務所の中には1か月近く試験の為に休暇を取らせてくれるところがあります。税理士試験は最後の理論の詰め込みが勝負と言っては過言ではないため、そのような時間を取らせてくれるのは魅力的でしょう。
しかし、制度として取れたとしても仕事が終わらなければ取りづらいのは変わりありませんので、こまめに有給休暇がとれるかどうかだけでも確認しておくと良いでしょう。

まとめ

難関である公認会計士試験に合格しなかったからと言って今まで勉強してきたことは全く無駄になりません。転職相談者さんでも不合格後に事業会社に入社して国際会計基準のリーダーとなった人や管理部担当取締役になった人など、公認会計士試験の勉強を経験して活躍している人はたくさんいます。就職、転職の際にはあまり後ろ向きにならず、むしろ何年間もひたすら勉強をしてきた根性と、知識を採用担当者にわかってもらえるようにしましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:転職・業界動向

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