みなさんは何か買ったりサービスを受けたりするとき、提供しているお店や会社に自然と利益を上乗せした分を支払っています。普段あまり意識せずに、割に合うかどうか、高いか安いかだけ考えているかもしれませんが、当然ものを売ったりサービスを提供しているお店や会社は利益を生むために付加価値をつけています。ここにないものを持ってきたり技術を提供したり形はさまざまですが、友達同士のやり取りでもない限り基本的にはこのように付加価値という形で利益が上乗せされています。
それでは、今回はこの「付加価値」について詳しく見ていきましょう。
付加価値率とはその名の通り、企業がものやサービスを販売するときにどれだけ付加価値をつけることができるかの割合のことをいいます。付加価値が高いということはそれだけ企業が価値を上乗せすることができたということになり、つまり利益を上乗せできたということになるのです。企業が生みだした価値や利益を計る指標なので、会計分野だけでなく、経営指標として広く使われている用語になります。ではその概念や計算方法はどのようになっているのでしょうか。
付加価値率の概念は、企業が売るものに対して、「生産によって」どれだけ価値を上乗せすることができたか、利益を得ることができたかとなります。ではそもそも「付加価値」とはどのように定義されているのでしょうか。
付加価値とは、一般的には2つの意味があります。
一つは、「生産によって」あたらしく付け加えられた価値のことで、もう一つは、「生産によらず」付け加えられた価値のことです。アイスクリームの例で見てみましょう。
シングル(1個入り)だけどかわいいラッピングやデコレーションで400円のアイスクリームと、そのままだけどダブル(2個入り)で400円のアイスクリームの2種類の商品があるとします。
原価率を考えなければ、前者がラッピングやデコレーションで「生産によって」付け加えられた価値となり、後者は1個200円のアイスクリームと比較して2個食べたい人にとっては付加価値のあるものとなります。
今回は会計分野で企業の生産性を計る指標として使用するものなので、前者の「生産によって」付け加えられた価値を指すのです。
この「生産によって」新しく付け加えられた価値の金額を付加価値額と呼びます。
「生産によって」付け加えられた価値すべてを指すので、全ての売上合計金額から材料費などの売上原価を引いた金額のことを指します。
付加価値額=全ての売上合計金額-(材料費などの売上原価金額)
となるので、
付加価値率(%)=付加価値額/全ての売上合計金額×100
と表すことができます。
これが企業の利益となるので、
付加価値率≒売上総利益率
となります。
会計ではもっと細かく計算するので覚えるべき公式があります。では、付加価値率を計算するにはどのような公式があるのでしょうか。
実は付加価値率の計算方法は2つ存在します。「控除法」と「加算法」と呼ばれる方法です。
控除法では全ての売上からかかった費用を全て引いたもの、加算法では利益に相当するものを全て足していく方法です。付加価値が企業の利益なのでどちらも存在することになります。
2つのやり方があるのには理由があり、控除法は中小企業庁というところが推奨しているもので、加算法は日銀が推奨しているものとなり、推薦する機関が複数あるので、どちらのやり方もメジャーとなっています。
公式としては
控除法は 付加価値額=(総)売上高-外部購入価格(かかった費用)
加算法は 付加価値額=人件費+減価償却費+賃貸料+金融費用+租税公課+経常利益
となります。
どちらのやり方も新しく付け加えられた付加価値を求めるものとなっているので覚えておきましょう。
それでは新しく付け加えられた価値を高めるにはどのようにしていけばよいのでしょうか。また、新しく付け加えられた価値を求める計算方法は割と簡単だと思いますが、ではこの付加価値率は実際にはどのような場面で使用されるのでしょうか。
それぞれ見ていきましょう。
付加価値率の求め方を見てみましょう。
控除法では(総)売上高からかかった費用である外部購入価格を引いて算出します。つまり、かかった費用を減らしていくことにより付加価値額(率)を高めていくことができます。かかった費用とは、材料費や購入部品費、運送費、外注費などとなります。手間はかかりますがなるべく時分でものやサービスを形作り、低コストで作ることで付加価値は高まります。
加算法で見てみると、加算法では価値と呼べるものを加えていくものなので、そのまま各指標が高くなれば価値は高いと判断できます。控除法でもそうですが、手間がかかればその分価値は高いと考えられるので、人件費などがかかっていればそのまま価値は高いと言えます。人件費は従業員等に支払うものですからそのまま利益とは言えないところがポイントですが、ものやサービスに対しての価値と考えると人件費は高ければ高いほど価値も高いと考えられるのです。
「新しい価値」を「どれだけ加えられたか」を算出するものですので、よく生産性と結びつけて考えることが多いです。生産性とはそのものやサービスに従事する人がどれだけ価値を出せたかの割合ですから、付加価値額に対してそれを作った、または提供した従事者の人数で割った金額が「付加価値生産性」と呼ばれます。またこれに対して、付加価値額に対して人件費で割ったものは「労働分配率」と呼ばれ従事者に対してどの程度分配されたかがわかるのです。
このように、作られたものや提供されたサービスがどれだけの価値があるか、それがどのように使われたのか、すなわち生産性はどうなっているのかを導くことができるのです。
付加価値率はどのようにものが作られたかやサービスが提供されたかによって割合が大きく異なることがわかりましたね。そのため、他業界の企業や違うものやサービスを提供している会社と比較してもあまり意味をなしません。どういう業界で同様のものやサービスを提供している企業か、過去の実績と比較していくことが重要です。では業界ごとに付加価値率は概ねどの程度なのか見てみましょう。
付加価値率が高い業界の特徴として、人件費が高く付く業界があげられます。人件費は費用のなかでも高額となるためです。そのため、飲食業が大きく差をつけて他業界を抜いています。
その他には不動産業、情報通信業、農林業などが比較的付加価値率が高い業界となっています。
付加価値率が低い業界は、小売業や食料品業などものをそのまま売る業界が代表的です。
特に卸売業は業界的に付加価値率が特に低いですが、皆さんのイメージ通りなのではないでしょうか。また、自動車や鋼鉄業も付加価値率が低い業界です。機械による自動化が進んでいるため人件費がかかっていないことがその要因となります。
<参考:財務省の法人企業統計年報平成28年度年報>
飲食業:47.5%
非道産業:35.7%
情報通信業:33.6%
農林業:26.0%
建設業:21.4%
非製造業:21.0%
科学業:20.6%
全産業:20.5%
製造業:19.4%
小売業:17.7%
食料品業:17.5%
自動車業:17.1%
鉄鋼業:14.8%
卸売業:8.2%