様々な理由で在宅勤務を希望する人が増えています。その大きな引き金となったのが、働き方改革の拡大とコロナウイルスのまん延ですが、会計事務所での導入は進んでいるのでしょうか?本記事では、会計事務所の在宅勤務制度の導入状況や在宅で働くメリットから年収への影響、フルリモートの可能性まで詳しく解説します。
2024年現在の状況として、在宅勤務(リモートワーク)ができる会計事務所はかなり増えています。つい5年ほど前まではここまでの拡がりを見せておらず、大手の税理士法人以外で制度を導入している事務所はかなり稀でした。
そこから中小規模の会計事務所でも導入が進められるようになった要因として、「働き方改革」の拡大と「コロナウイルスのまん延」の影響が税理士業界にも及んだことがあります。
働き方改革とは、2019年から順次施行されている「働き方改革関連法」によって政府が推し進めている施策です。
会計事務所は、クライアント企業の決算月付近の業務量が大きく増えるため、その時期を繁忙期と呼びます。この時期は残業時間が80時間を超過したり、平日だけでは業務が終わらず休日出勤をしなければならないことも当たり前でした。
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しかし、そのような働き方を是正するための動きである働き方改革が社会全体に広がってきた結果、税理士業界の残業時間も減少していきました。
DXによって、一部業務の効率化ができるようになったことも一つの要因といえます。
また、働き方改革がかなり普及してきているため、あまりに職場環境が劣悪だとそれが目立ってしまい、事務所のブランドイメージが落ちるリスクがあります。働き方をよくする事務所が増えているのには、そういったリスクをなくしたい事務所が多いから、という要因もあります。
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コロナウイルスは中国で広まったのち、2020年には日本でも広くまん延しました。その影響で、人と人との接触による感染リスクを極力避けるため、通勤のピークタイムを避ける目的で一般的となったフレックス制(時差出勤)と共に、在宅勤務も職場内や通勤時での感染を防ぐ目的で導入する事務所が増え、それらの働き方の認知度も高まりました。
2023年以降はコロナウイルスの影響も落ち着き、在宅勤務の制度を廃止する事務所が出てきた一方で、引き続き制度を残している事務所も多く存在します。その理由として、親の介護や子息の保育園の送迎など、家庭の事情を抱える方にもニーズの高い働き方であることが挙げられます。在宅勤務ができる会計事務所の人気は高いので、良い人材を採用するためにこの制度を敢えて残しているという事務所も多いのです。
会計事務所は、税理士の8,9割が働いている職場とされています。そんな税理士が「在宅勤務(リモートワーク)をするのは違法」といううわさを聞いたことがあるかもしれません。
このようなうわさが出る要因として、税理士法第40条第3項で定められている「二ヶ所事務所禁止規定」の存在があります。この規定では税理士が2ヶ所以上の事務所を設けることが禁止されているため、事務所の代表を務める税理士はこの規定に抵触してしまうと考えられていたのです。
この規定と在宅勤務の兼ね合いについて、日本税理士会連合会は2019年4月に以下のような見解を出しました。
出典:税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)~新型コロナウイルス感染防止対応版~
日本税理士会連合会
つまり、自宅以外の場所に事務所を開業した上で、自宅を税理士事務所として運営しなければ、税理士が業務を自宅で行うことは問題ないということです。この見解がコロナウイルスのまん延より前に発表されていたこともあり、会計事務所における在宅勤務制度の導入が加速されたのです。
通常の出社での勤務と比較して、在宅勤務で働くことには以下のようなメリットがあります。
在宅勤務の最大の特徴として、職場への行き来の手間をなくせることが挙げられます。通勤時間のすべてを有意義に使っているという方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの方が通勤は時間を浪費している感覚でしょう。その時間を仕事やプライベートに充てることができるのは、大きなメリットといえます。
もともとコロナウイルスの感染防止を目的として広まっていった在宅勤務制度ですが、直近の利用目的として多いのが、育児や介護との両立をしたいからというものです。
育児なら子息、介護なら親のそばにいながら仕事をできるため、本来は一時的に離職しなければならないような状況でも、在宅勤務があることで働き続けることができます。
また、保育園や老人ホームの送り迎えなどの対応についても、在宅勤務であれば柔軟に調整できるのも利点です。
このようなライフイベントが発生しても、在宅勤務があれば退職することなく働き続けることができるでしょう。
会計事務所の9割ほどが従業員10名未満の零細会計事務所ですが、そのような小さな規模感だと代表税理士やその事務所の雰囲気との相性が重要になってくることがあります。
職場内のコミュニケーションが苦手という人は、直接会話することが少ない在宅勤務ができた方が働きやすいと感じるでしょう。
次に在宅勤務で働くにあたっての注意点を解説します。
これまでと違う環境で働くことは、思わぬ落とし穴も。事前に把握した上で応募するようにしましょう。
在宅勤務では、「職場=自宅」ということになります。
周りに上司や同僚がいる事務所とは違い、緊張感がなくなるとついのんびりしてしまって、作業効率が低下し、結局は長時間労働になってしまうことも珍しくありません。
在宅だと確かに、洗濯や洗い物などのちょっとした家事もすぐできますし、食事も自宅で食べられて便利なのですが、そのぶん集中が難しいという問題があるのです。そのためオンオフが切り替えられず、時間を浪費したり期待される業務量がこなせなくなる可能性があります。
在宅で業務を行うことで、今まで使用していた評価制度では対応しきれません。あくまで「結果」で判断されてしまいます。
これまでは業務がちょっと遅れたりしても「電話対応していて手が塞がっていたからな」など、上司からその原因がわかっていたり「いつも頑張っているからな」と温情的な加算点がついていたかもしれません。
しかし、在宅の場合はそこまで確認できませんので、オフィス以上に効率的に業務をこなして提出する必要があります。
今まで職場で毎日顔を合わせていた同僚と対面で会えなくなると、少し寂しいかもしれません。雑談などが実は自分の精神衛生に大きな意味があったことに気がつく人も多いでしょう。
また上記に留まらず、業務の相談や質問を気軽にしづらくなってしまい、仕事への悪影響を与えてしまう可能性もあります。
いずれのデメリットにおいても、「在宅勤務だから仕方ない」という主張が通ることはまずありませんので、出社している場合と変わらないパフォーマンスができる前提で在宅勤務を選択する必要があります。
ここでは会計事務所の在宅勤務に関して、聞かれることの多い疑問・質問をまとめましたので、ご覧いただければと思います。
結論から申し上げますと、在宅勤務かどうかで年収は左右されません。会計事務所で年収を左右する重要な要素は、対応できる(経験した)業務と持っている資格だからです。また、年収を上げるためにはスキルを積んでいき担当できる案件数を増やしていくことも大切だといえます。
会計事務所でのフルリモート勤務は可能ではあるものの、業務内容によってはあまり現実的でないことがあります。その業務というのが巡回訪問です。巡回訪問は、税務的な課題解決や相談に乗る目的で、担当しているクライアントを月1回程度訪問するものです。
この業務をオンラインで行うことは原理的に不可能ではありませんが、ほとんどが実際に訪問しています。とはいえ、業務の調整を行いフルリモート勤務可能な環境を実現している会計事務所が無いわけではありませんので、以下よりご覧ください。
経験者ほどではありませんが、未経験でも在宅勤務可能な求人に応募することはできます。ただし、未経験の場合は入社後半年程度は研修が行われることが一般的であり、この期間は出社しその後は在宅勤務可能という会計事務所も多いので、各求人をよく確認するようにしましょう。
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今回は、会計事務所での在宅勤務(リモートワーク)が可能かという観点で解説しました。在宅勤務可能な会計事務所は、働き方改革とコロナウイルスのまん延の影響で多く存在します。一方で、様々な事情で在宅勤務を希望する方も多いため、そのような事務所は転職市場において人気の職場です。
このような職場への転職を成功させるために、士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロを是非ご活用いただければと存じます。ご紹介したように、フルリモートを含めた在宅勤務可能な求人を多くお取り扱いしているだけでなく、業界特化だからこそできる面接対策や書類添削についても高い満足度を頂いております。まずはご相談から、お待ちしております。
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