株式投資の特徴として株式は、他の金融商品と異なり、年利何%という決まった利率はありません。株式は、その会社の業績などに応じて配当額が変化し、株式の価値が変化するからです。したがって、株主に投資する際には、投資家は一定の水準の利益が得られることを期待して投資していることになります。では、このような投資家の期待はどのように数値化されるのでしょうか。株主資本コストなどとあわせて解説します。
株主資本コストとは、株主からの出資によって調達した株主資本金に必要とされるコストのことをいいます。資金調達をしたのにコストがかるのか?と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし資金調達を行う際に、株主(投資家)は利回りや配当を希望して出資します。当然この時の配当は企業側の剰余金から捻出されます。そのためコストとして捉えられます。
投資家は、株式の値上がりや、配当金による利益を得ることを期待として株式を購入しているわけですから、こうした期待を裏切られれば、株主としての地位に基づいて経営者を解任するといった動きになります。
したがって、会社としてはそのような事態にならないように、投資家が求める期待に応えることが、株式による資本調達のコストとして求められることになります。つまり、株主資本コストは株主の期待する水準のことを指すことになります。
CAPMは株主資本コストを算出するための理論の一つです。
CAPMは、キャップエムと呼ばれるのが一般的でCapital Asset Pricing Modelの頭文字をとったもので「資本資産価格モデル」ともよばれます。CAPMは個別の株式が株式市場全体と比較してどの程度値動きしているかを基準に、リスクの無い投資先に比べて要求されるリターンを求めるものです。
背景にはリスクが高いものに投資する際には高いリターンを要求するべきというハイリスク・ハイリターンがあります。このような、CAPMによる株主本コストは以下のように求められます。
株主資本コスト = リスクフリーレート + β × マーケットリスクプレミアム
一般的に国債の利率や銀行預金の利率といった、リスクのほとんどない安全な投資先の値が用いられます。
株式市場全体に投資した場合に求められるリターンがマーケットプレミアムになります。マーケットプレミアムに用いられる数字は、日経平均やTOPIXなどの株価指数から数値化されたものが用いられ、日本では一般的に5%~5.5%に設定されます。
株式市場全体の動きに対する、個別銘柄の感応度を示します。
具体的な例で見てみましょう。
TOPIXに比べて2%値上がりしている株式の株主資本をCAPMにて計算します。
【リスクフリーレート】には利回り1%の国債
【マーケットプレミアム】は5%
【株主資本】は、1%+1.2×5%=7% となります。
つまり7%の収益率がその銘柄の株式に期待されることになります。このようにCAPMではβに入る値、つまりその銘柄のリスク・リターンに応じて株主資本を評価することができる点で優れた理論といえるのです。
実務上用いられるCAPMには、以下のような数式となっている場合があります。
株主資本コスト = リスクフリーレート + β × マーケットプレミアム + サイズプレミアム
株式投資の理論で言われる小型株効果を反映するものです。つまり、小規模な会社に投資する方がリターンが高いという法則があるため、株主は小規模な会社に投資する際にはその分期待値が高まるので、株主資本コストが上昇するという考え方です。
サイズプレミアムに入る数字については、日本の会社では7%といわれているようですが、会社によって幅があり、一義的に決められる数字ではありません。投資家は、様々な情報をもとにサイズプレミアムを決定する必要があります。
リスクフリーレートには国債が用いられるのが一般的ですが、どこの国の国債を用いるのかによって結論が異なってきます。リスクフリーレートは比較対象としての数値であることからすると、投資の対象となる会社の主たる事業を有する国の国債を設定するのが一般的なようです。
以上のようにCAPMは設定する値によって大きく変動する可能性があるため、適切な数値を導けるように、妥当な値を設定する必要があるといえます。