会社や事業の経営においては、様々な税金や支払手数料が課されます。税金や各種手続きの手数料は必ず負担しなければなりませんが、実はその全てを経費として計上できるわけではありません。本記事では、税金などを経費として計上できる場合に使う勘定科目「租税公課」と消費税の取扱いについて詳しく解説します。
租税公課とは、事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税、そして消費税などの税金といった「租税」と、印鑑証明書は住民票などの発行手数料、商工会議所、商工会、協同組合、同業者組合、商店会などの会費、組合費又は賦課金などの「公課」の二つを合わせた勘定科目です。
損益計算書において、租税公課は販売費及び一般管理費(販管費)の部に計上され、会計上は、経費計上が認められています。しかし、税務上の取扱については、損金算入できないものがあります。
ややこしい点なのですが、「租税公課」は会計上と税務上の観点からみると取り扱いが異なるものがあるのです。ポイントは所得にかかる税金と罰金や延滞金などは、税務上では損金扱いされません。対象としては、法人税や贈与税、国税にかかる延滞金や都道府県民税などがあげられます。
それでは、法人・個人が納付する消費税はどうなのでしょうか。消費税及び地方消費税については「租税公課」の勘定科目に計上し、損金算入することができます。
しかし、もともと、消費税を納税する義務があるのは、以下の2つのいずれかに該当する場合です。
つまり、売上が1000万円未満、あるいは「消費税課税事業者選択届出書」未提出の場合は「免税事業者」となり、消費税の納付自体がありませんので、消費税をどうするかは関係ないことになります。
免税事業者であれば、消費税を収めなくてよいので得!と思われるかもしれませんが、事業に必要なものを仕入れる場合には消費税を払っていますし、売上時には消費税が発生しています。もし、支払った消費税の方が多い場合は、課税事業者となって納税したほうが、差額の還付が受けられるので、ケースバイケースなのです。
なお、いったん課税事業者として届出を行った場合は、2年間は納税の義務がありますので、1年目は設備投資で支払った消費税が多くなって還付が受けられても、2年目は売上アップで消費税納税といった場合になるかもしれません。
いずれにしても、消費税の租税公課として認められるのは、事業に必要なものを購入した場合の経費としての部分と、売上によって受け取った消費税の差額が原則ということになります。
さて、消費税課税事業者が納める消費税を計上する方法には、「税込経理」と「税抜経理」の二種類があります。
採用する経理方式ごとに、消費税を租税公課として扱うか否かが変わります。
税込経理とは、売上や経費を計上する際に税込価格を用いる方法です。
例えば商品価格が1,000円、消費税率が8%で販売した場合には、1,080円を計上します。また、消費税率が10%の場合は1,100円を計上します。
税込経理では納付すべき消費税額は「租税公課」の勘定科目をつけて損金算入します。
もし受領済みの消費税との差額があって還付金が戻ってくる場合は、還付金は雑収入として益金算入するのです。
税込経理は売上にかかる消費税を売上に含めて収益として計上するので、会計ソフトの入力が簡単というのがメリット。しかし、最終的に締めてみないと金額が確定できず、納付額の切り分けを都度することが難しいというデメリットもあります。
税抜経理とは、売上を計上する際に税抜価格を用いる方法です。税抜経理では仮受消費税等(売上時)、仮払消費税等(仕入時等)の勘定科目を用いて、売上や仕入と消費税額を区分して計算します。という消費税用の勘定科目を用いて計算します。消費税は企業や事業主が預かっている税金という考え方に基づいて仕訳を行います。
例えば商品価格が1,000円、消費税率8%で販売した場合には、1,080円(消費税率が10%の場合は1,100円)を借方に、売上高は1000円と仮払消費税等に80円(消費税率が10%の商品の場合は100円を)を計上します。
この場合、消費税にはすでに別の勘定科目を使っているので、「租税公課」としては計上しません。
税抜経理は消費税を分けるという日々の経理入力はやや面倒というデメリットがありますが、その都度売上高を一目で把握できるメリットがあります。
いかかでしたでしょうか。
売上1000万円以上の事業者は課税事業者として消費税の納付義務があります。消費税の経理については「税込経理」と「税抜経理」があり、税込経理の場合、税込価格で計上し、消費税を「租税公課」として決算時に損金計上します。税抜き経理の場合は消費税の仕訳に仮受消費税等(売上時)、仮払消費税等(仕入時等)の勘定科目を使うため「租税公課」の勘定科目は使いません。
消費税は生活をしていく上でも必ず関わりがあるものですが、事業という目線に立ってみると、意外と理解されていない点があるかと思います。メリットとデメリット、使う科目に違いがありますので、注意しましょう。